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リトアニアは、台湾の大使館設置を承認したことで、中国が猛反発している。具体的に、リトアニアへ経済制裁を加えるべく、中国へ進出している多国籍企業に対して、リトアニア製品を扱わぬように要求。これに違反すれば、中国国内での営業を差止めるという強硬策である。EU(欧州連合)は、すでにリトアニア問題を念頭に「第三国制裁案」を準備している。リトアニア問題が、中国とEUの対立へ発展する気配となってきた。

 

『ロイター』(12月9日付)は、「中国、多国籍企業にリトアニア製品のボイコット要求 台湾巡り」と題する記事を掲載した。

 

リトアニアの政府高官と業界団体がロイターに明らかにしたところによると、中国は多国籍企業に対し、リトアニアとの関係を絶たなければ中国市場から締め出すと警告している。「台湾」の名を冠した事実上の大使館である代表機関がリトアニアに設置されたことを受けて、中国政府は先月、リトアニアとの外交関係を格下げした。

 


(1)「リトアニアと中国の直接貿易はそれほど多くないが、リトアニアには家具、レーザー、食品、衣料などを多国籍企業向けに製造する企業が多く、そうした多国籍企業は中国に製品を販売している。リトアニアのアドメナス外務副大臣はロイターに「(中国は)多国籍企業に対し、リトアニア製の部品などを使用すれば、中国市場での商品の販売・調達を認めないとのメッセージを送っている」と指摘。「一部の企業はリトアニアのサプライヤーとの契約をキャンセルした」と述べた。具体的な社名は明らかにしなかった」

 

リトアニアが直接、中国へ輸出しているのはリトアニア輸出全体の1%に過ぎない。これでは、中国が圧力を掛けても威力はない。そこで中国は、多国籍企業に対してリトアニア製の部品を使用した製品の販売・調達を認めないと新たな圧力をかけ始めた。

 


(2)「リトアニア産業連盟の代表も、国内サプライヤーから商品を調達している一部の多国籍企業が中国の標的になっていると指摘。「これまでは脅しにすぎなかったが、今はそれが現実のものになっている」とし、標的となっている多国籍企業は欧州企業で、多くのリトアニア企業と取引があると述べた。政府高官によると、リトアニアは国内企業を中国の報復措置から守るため、基金を設立することを検討している。ランズベルギス外相は、欧州委員会に「欧州連合(EU)レベルで強力な対応が必要だ」と支援を要請。欧州委は加盟国に対するあらゆる種類の政治的圧力と強制的な措置に対抗する用意があると表明している」

 

リトアニア製の部品を購入しているのは、多くがEU企業である。すでに、リトアニア企業からの調達をキャンセルする企業も出始めた状況である。EUは、この問題をEUとして処理する意向を表明した。リトアニアをめぐって、EUと中国が対決する構図だ。

 


『日本経済新聞 電子版』(12月9日付)は、「EU、第三国の経済圧力に制裁案 中国など念頭」と題する記事を掲載した。

 

(3)「欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、EUと加盟国に経済的な手段を使って圧力をかける第三国に対して、貿易関連の制裁を科せる制度案を公表した。原則として加盟国に諮らず、EUが独自に判断できるのが特徴。一方的な行動が目立つ国際社会で迅速に対応できる能力を備える狙いがある。今回の制度案策定の念頭には、台湾との関係を深めるリトアニアに圧力を強める中国の存在がある」

 

法案によると、欧州委が速やかに対応できる。相手国との交渉で問題が解決されなかった場合、委員会は加盟国の承認を得て12種類の対抗措置を講じることができる。その中には関税の賦課や化学品輸入の禁止、科学分野での協力停止のほか、「銀行、保険、EU資本市場、その他の金融サービス活動へのアクセスの制限」が含まれる。対抗策は企業または個人に対して講じられる。以上は、『ロイター』(12月9日付)からの引用である。

 

この対抗措置によると、中国の受ける損害はかなり大きいものがある。中国は、「リトアニア制裁」の何十倍もの損失を受けることは必至だ。

 

(4)「EUは、第三国が経済的な手段を使ってEUや加盟国に政策変更を強要しようとすることを「経済的な強制」と定義。具体的には加盟国などからの連絡を受けた上で、EUが個別に判断する。差別的な追加関税やビジネスに必要な認可の拒否、特定国への国境での検査強化などが予告されたり、実際に起きたりした場合は制裁の対象になり得る。EUの具体的な報復措置としては、商品やサービスへの追加関税のほか、EUから対象国への資金支援の停止、EU内での関連手続きでの認可取り消しなどが想定されている

 

中国は、リトアニアを「小国」扱いしているが、EU加盟国であることを忘れた「リトアニア制裁」である。加盟国の力は、こういう時に発揮される。

 

(5)「通商政策はEUが持つ権限。全会一致の原則がある外交政策に比べ、迅速に意思決定できる利点がある。フランスやドイツなどEUの大国は制度の方向性についておおむね支持しているものの、欧州委に大きな権限を与えることに慎重な加盟国は少なくない。欧州議会と加盟国からの承認を得る必要があり、成立には時間がかかる可能性がある」

 

通商政策は、欧州委が持つ権限である。迅速に行動できるメリットがある。それだけに、加盟国が今回の「第三国制裁案」の成立にすぐ賛成するかどうか不透明である。ただ、欧州委が乗り気であることはリトアニアにとって心強いであろう。

 

(6)「中国によるリトアニアへの圧力について、EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表とドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は、声明でリトアニアの貨物が中国の税関で止められているとの情報があるとして「EUはあらゆる政治的圧力や強制的な措置に立ち向かう用意がある」と訴えた」

 

欧州委が、リトアニアの味方であることは、中国に対して大きな圧力になろう。中国にとって、「小国」リトアニア制裁が自らの「逆制裁」になりかねない、笑うに笑えない話になりそうだ。