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中朝を隔てる鴨緑江を渡る「吊り橋」は、中国資金で2013年に完成した。北朝鮮は、橋との接続工事をせず橋梁は未使用状態のままだ。北朝鮮が、中国へ警戒感を持っているためと説明されている。北朝鮮では、「日本は100年の敵、中国は1000年の大敵」という言葉があるほど、中国へは警戒感を滲ませていると指摘されているのだ。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(12月12日付)は、「米国より中国を警戒する北朝鮮」と題する記事を掲載した。

 

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と米中関係の悪化を口実に国内の経済統制を強め、かつては抜け道もあった中国との国境を固く閉ざしている。

 


(1)「北朝鮮の最高指導者に就任してから今月末で10周年を迎える金氏は、厳しいロックダウン(都市封鎖)を通じて他国の外交官や人道支援活動家を追放し、社会的な締め付けも強化している。北朝鮮の国際的な孤立は中国政府の援助で支えられている。中国は北朝鮮の核・弾道ミサイルの開発を非難しつつ、あくまで金政権の温存と朝鮮半島の統一阻止を望んでいるのだ」

 

中国は、北朝鮮を米国との緩衝地帯と位置づけており、金政権の温存と朝鮮半島の統一阻止を狙っている。韓国の文政権はこれに気付かず、南方統一を中国に働きかけている。何の効果もないのだ。韓国の「二股外交」も意味がない。中国に弄ばれているだけだ。

 

(2)アナリストによると、北朝鮮の政府当局者は対中依存に大きな不満を抱いており、米国よりもむしろ中国を長期政権への最大の脅威と見なしている。北朝鮮問題に詳しい韓国国民大のアンドレイ・ランコフ教授は、「北朝鮮と中国がイデオロギー的に連帯しているという通説には全く根拠がない」と指摘した。「北朝鮮の防諜(ぼうちょう)担当者なら誰でも、北朝鮮を内部から破壊できる中国こそが、安全保障上最大の脅威だと認めるだろう」と指摘する」

 

中国は、北朝鮮を内部から破壊できる工作力を持っている。米国には、そういう力はない。北朝鮮が、後述のように米国よりも中国を警戒する理由であろう。

 


(3)「ともに共産主義を掲げる両国が反目する背景には、朝鮮戦争(1950~53年)で北朝鮮を支援した中国の役割に対する認識の相違と、その後中国による情報・分裂工作の恐れに端を発している。中国は朝鮮戦争時の恩義を認めようとしない北朝鮮にいまだに腹を立てているとアナリストは説明する。北朝鮮の歴史では、建国の父である金日成(キム・イルソン)主席が中国共産党に所属していたことを明確にしていないうえ、70ページの朝鮮戦争公式記録に中国の関与への言及はわずか3カ所しかない」

 

北朝鮮は、朝鮮戦争公式記録で中国の支援を3カ所しか言及していない。口では、「中朝は血盟の関係」と大仰に言うものの記録にそれが現れていないのだ。

 

(4)「中国が1992年、韓国と国交を樹立し、その見返りとして米朝の国交正常化を持ち出さなかった。これは北朝鮮にとっては重大な裏切りだった。「中国はさっさと北朝鮮を見捨ててしまった」と韓国の延世大学で中国研究を専門とするジョン・デラリー教授は話した。それ以降、北朝鮮は核兵器の開発や国内問題への介入拒否などを通じて中国に反発してきた」

 

中国は中韓国交回復の際、米朝国交正常化の橋渡しをしなかった。北朝鮮は、これを恨んでいる。中国への不信感となっている。

 


(5)「頓挫した共同事業もある。2012年には中国の西洋集団が南西部で開発した鉄鉱山を北朝鮮政府が接収し、中国人労働者を追放した。中国の遼寧省丹東市と北朝鮮の新義州市の間を流れる鴨緑江に架かるつり橋は、中国側の出資で13年に完工したものの、北朝鮮側の道路には接続されず未使用のまま放置されている。「北朝鮮が中国に経済を開放すれば、政権支配への手掛かりを与えることにもなる」とデラリー氏は指摘する」

 

北朝鮮は、中国へ経済開放すればそれによって、北朝鮮政権への手がかりを与えるとして警戒する。

 

(6)「北朝鮮は基本的な携帯電話網を整備する際、エジプトの企業を委託先に選んだ。「戦争が心配なら米国が気になるが、政権転覆やクーデターを懸念するなら中国の方がよほど心配だ」。金正恩氏は13年、中国政府と密接な関係にあったとされる叔父で実力者の張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑した。17年には、中国政府の庇護を受けていた異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏をスパイ映画のごとく暗殺した」

 

北朝鮮は、米国との戦争を警戒する。だが、日常的には政権転覆やクーデターを懸念し、中国をより警戒している。叔父の張成沢氏や兄の金正男氏を殺害したのも、中国の影響力を恐れている結果とされている。

 


(7)「
中国が北朝鮮を擁護するのは、数万の韓国駐留米軍と直接にらみ合わずに済む緩衝地帯としての役割を期待しているからだ。それ以外に金政権を支え続える理由はないとアナリストは断言する。中国のこの認識は金氏がトランプ前米大統領と劇場型外交を繰り広げた時期に一段と強まった。北朝鮮が米国に歩み寄り、中国の保護を切り捨てかねないとの懸念が高まったからだ。スティムソン・センターのスン氏は、「米中対立は金政権の存続にとって追い風だ。中国が金氏を見捨てる可能性はこれまでも低かったが、今では全くなくなった」との見方を示した。「しかし中国は必要最低限のことしかやらない。北朝鮮を飢えさせないが、腹いっぱいにもさせないという姿勢だ」としている」

 

米中対立は、北朝鮮・金政権の存続にプラスである。だが、中国は最低限のことしか援助しないであろう。

 

(8)「中朝間の陸路貿易が再開する兆しは出てきた。衛星写真で見ると、北朝鮮は国境を越えて来る鉄道貨物の消毒設備を新たに設置した。さらに、丹東市はこのほど、新義州市を結ぶつり橋の通関施設の改修工事に関わる入札を実施し、落札した企業を発表した。ランコフ氏は「中国が朝鮮半島政策で優先するのは安定、分断、非核化の3点だが、安定と分断は常に最優先事項だ」と述べた」

 

中国は、朝鮮半島政策で「安定・分断」策を優先して行なうと見られる。こうした中国の妨害工作もあって、南北統一など実現性は期待薄であろう。韓国は、この現実を認識すれば、中朝政策の練り直しが必要になるはずだ。