米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』(10月4日付)によると、米スタンフォード大国際安全保障協力センター(CISC)の研究陣は最近、北朝鮮が毎年20個以上の核兵器を生産する能力があると推測した。2017年から昨年まで北朝鮮平山(ピョンサン)ウラン鉱山施設の衛星写真を人工知能(AI)で分析した結果だ。
報告書で、北朝鮮の年間ウラン鉱生産量は約3万トンだが、ウラン粗製錬施設を年間300日稼働する場合、生産量を36万トンまで増やせるという見方を示した。これを根拠に研究陣は北朝鮮のイエローケーキ(ウラン精鉱・ウラン鉱石から不純物を取り除いた中間生産物)処理能力について、年間最大340キロの高濃縮ウランを生産できる水準だと分析した。
これは毎年核兵器20個以上を作ることができる量だとWSJは伝えた。ただ、研究陣は「北朝鮮は現在、ウラン生産最大力量の10分の1から20分の1程度だけを活用している」とし、その理由を把握することが重要だと指摘した。以上は、『中央日報』(11月5日付)が報じた。
北朝鮮は、年間20個の核爆弾を生産できる能力を持っている。現実には、その10分の1から20分の1程度の生産に止めているという。WSJは、なぜ生産能力一杯に操業度を上げないのか。理由を突き止めるべきとしている。それは、次の事実にありそうだ。食糧難に見舞われているのだ。
『中央日報』(12月16日付)は、「国連『北朝鮮住民の4割が栄養不足』アフガンより深刻」と題する記事を掲載した。
北朝鮮の栄養不足人口の比率がアジア太平洋地域で最も高いことが分かったと16日、『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)が国際機構報告書を引用して報じた。
(1)「報道によると、国連傘下の食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(ユニセフ)は15日(現地時間)に公開した共同報告書「2021年アジア太平洋地域の食料安全保障と栄養」で、2018年から2020年まで北朝鮮の栄養不足人口の比率は42.2%で、アジア太平洋地域38カ国のうち最も高いと明らかにした。
北朝鮮の栄養失調人口比率は40%強で、アジア太平洋地域38ヶ国の中で最悪という。アフガン以下の状態である。そのアフガンは、北朝鮮よりも「開国」されているので食糧不足の状況が伝わっている。北朝鮮は、閉鎖状況で内部事情は不明だが、アフガン以下の食糧事情とは深刻である。これでは、生産能力一杯の核爆弾をつくる余力はない。
(2)「報告書は、「北朝鮮住民のうち1090万人が栄養不足に苦しんでいる」とし「これは2000年と2002年の間の820万人と比較すると、270万人も増えた」と明らかにした。北朝鮮に次いで栄養不足人口の比率が高い国はアフガニスタン(25.5%)、パプアニューギニア(24.6%)、東ティモール(22.6%)など。
核爆弾をつくる力はあっても、食糧生産をしない。こういう北朝鮮を、「人道」という名で支援すべきなのか。大衆には罪はないし、悩ましい判断である。
(3)「北朝鮮の栄養不足人口の比率は、食糧不足で餓死者が多数発生した「苦難の行軍(1990年後半)」以降、国際社会の支援と南北関係改善などの影響で2000年代に入って30%台に減ったが、2009年から2011年の間に42.6%に上昇して以降42%台が続いていると、報告書は説明した」
食糧不足人口比率は、一貫して42%台が続いているという。国民に対しては、「気の毒」という言葉しかない。
(4)「南北児童の「体型分断(身体発育格差)」も続いていることが明らかになった。報告書によると、北朝鮮内の5歳未満の児童のうち18.2%が発育不振だ。昨年の18.9%よりやや低いが、韓国(2%)など国際基準に達していない状況だ。相次ぐ自然災害で北朝鮮内の穀物生産量が減少したうえ、新型コロナ遮断のための中朝国境封鎖で乳児の栄養食など備蓄物資の搬入までが急減し、児童への栄養供給に影響を及ぼしたためと解釈される」
北朝鮮は、5歳未満の児童のうち18.2%が発育不振という。韓国は2%だ。大きな違いである。
(5)「これに先立ち、ユニセフは5月に発表した報告書「2021児童栄養失調推定値」で、「栄養不足による発育不振は成長と発達に致命的な結果を招く」とし「身長だけでなく頭脳の発達にも影響を及ぼすとみられる」と指摘していた。ただ、北朝鮮の5歳未満児童の消耗性疾患発病率は2.5%で、世界平均の6.7%より低かった。児童の肥満比率も1.9%と、アジア太平洋地域38カ国のうち4番目に低かった」
5歳未満の児童のうち20%弱が栄養失調だが、消耗性疾患発病率は2.5%で世界平均より低いという。この謎は何か。山菜でも食べているのであろう。「核爆弾と栄養失調」。これが、北朝鮮の現実である。
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