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中国は、南シナ海の9割を自国領海であると一方的に宣言して関係国と軋轢を深めている。現在は、インドネシアとマレーシアが、EEZ(排他的経済水域)内での石油掘削を始めたことに抗議している。泥棒が、持ち主に向かって文句を言っている構図であり、中国の「品格」を著しく損ねる行為である。

 

『ニューズウィーク 日本語版』(12月19日付)は、「インドネシア・マレーシアの海洋開発に中国が圧力」と題する記事を掲載した。筆者は、大塚智彦氏である。

 

インドネシアは、自国の排他的経済水域(EEZ)で実施している海底石油・天然ガス資源の掘削作業に対して、中国が中止を求めている。マレーシアのEEZ内では、中国が一方的に海洋資源調査を実施するなど、新たな緊張を生み出している。いずれも中国が海洋権益の及ぶ範囲として主張している『九段線』に関わるものだ。中国側が、同海域であえて権益争いを激化する動きを見せるなど挑戦的である。

 


(1)「南シナ海は、米国とその同盟国である日英豪インドなどが「航行の自由、飛行の自由が保障された自由で開かれたインド太平洋」を唱える海域と重複している。中国が、インドネシアやマレーシアと関係緊張化することは、米国との関係悪化も絡み、南シナ海はここへきて一層「波高し」となっている中国政府は、在ジャカルタの中国大使館を通じてインドネシア外務省に文書を送り、南シナ海の南端であるインドネシア領ナツナ諸島北方海域でのインドネシアによる石油・天然ガス資源堀削を中止するよう求めた。ロイター通信が12月1日に伝えた」

 

中国は、近隣国のインドネシアやマレーシアと事を構えている。本来、中国に領有権がないにもかかわらず、「イチャモン」を付けているのだ。暴力団の因縁と同じ構図である。これでは、中国はASEAN(東南アジア諸国連合)から信頼されるはずがない。

 


(2)「同海域は、インドネシアのEEZに対し、中国が一方的に「自国の海洋権益が及ぶ『九段線』と重複する海域がある」として、かねてからインドネシアに2国間協議での平和的解決を求めている。これに対しインドネシア側は「同海域で中国との間に協議するような問題は存在しない。従って2国間協議の必要はない」(ルトノ・マルスディ外相)として一切の妥協の余地をみせない強い姿勢をとってきた。こうしたインドネシアの強い姿勢に不満を高めた中国側が、今回掘削の中止を外交ルートで求めたことになる。背景には、インドネシアへの不満と焦りが中国側にあるとみられている」

 

インドネシアは、中国からこういう嫌がらせを受けながら、高速鉄道の建設を任せるなど、不可解な事もやっている。日本的な感覚では、理解できない振る舞いに見える。

 

(3)「『九段線』に関してはフィリピンの提訴を受けてオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年に「国際法などいかなる法的な根拠はない」と認定しているが、中国側はこれを認めない頑なな姿勢を崩していない。また中国は南シナ海を巡ってマレーシア、ベトナム、フィリピンなどとも領有権争いを抱えている。いずれも各国のEEZに対して中国が『九段線』を理由に「中国の領海ないし海洋権益が及ぶ海域」として対立しているのだ」

 

中国の南シナ海領有宣言は、2016年にオランダ・ハーグの仲裁裁判所が法的な根拠がないと認定している。それにも関わらず、自国領海と横車を押しているのだ。「ガツン」と中国へ鉄拳を加えなければならないが、そうなると戦争になる。各国はそれを回避すべく我慢しているのだ。中国は、これだけでも大きな失点なのだ。いずれ、大きなブーメランに見舞われて当然だろう。

 

(4)「こうした状況で中国は11月にフィリピンのEEZ内にあるフィリピン海軍の座礁船を撤去するよう要求。11月16日には座礁船に駐留するフィリピン兵士に食料などを輸送する民間船舶に対して中国海警局の船舶が進路妨害と放水を行い、民間船舶が損傷を受けるという事件も起きている」

 

この件では、米軍が米比相互防衛条約に基づいて反撃すると警告した。

 

(5)「マレーシアのボルネオ島北西部のEEZ内で、中国の調査船が海底資源を調査しマレーシアの抗議にも関わらず11月以降も継続している。同海域には、以前から中国の航空機が接近して、マレーシア空軍が警戒強化するなどの事態が起きている」

 

マレーシアでは、自国EEZ内で中国調査船が入り込んで海底資源調査を行なうという無法ぶりを見せつけている。

 


(6)「こうした中国側の姿勢の背景には、2022年10月インドネシア・バリ島でのG20サミット開催と関連あるのは間違いないといわれている。東南アジア初のサミット開催で、議長国を務めるインドネシアは米中首脳をはじめとする先進国首脳が顔を揃えるサミットを主導する立場を担うことになる。同サミットで中国の南シナ海における一方的な海洋権益主張、拡大に対する警戒感を共有する各国に対して、インドネシアがどう協議をリードするのかが中国にとっては重要問題となっている」

 

インドネシアは来年10月、G20サミットの議長国になる。中国は、今から議長国役のインドネシアへ圧力を掛けて、中国に有利な議長声明を出させるように狙っているのであろう。ともかく、「セコイ」やり方で呆れる。