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習近平氏は、絶対的権力基盤を固めていると見られてきた。先には、中国共産党100年において3回目の「歴史決議」を出すなど、毛沢東・鄧小平に次ぐ権力者の地位を手に入れたと見られてきた。だが、中国共産党機関紙『人民日報』(12月9日付)で、鄧小平の経済路線を賛美する論文が掲載されたのだ。この論文では、習近平氏に一度も言及せず、鄧小平についてはなんと9回も名前を挙げた。

 

このことから、党内において経済路線をめぐる争いが起こっているとの憶測を生む事態になった。今年後半からの経済減速が、中国経済の屋台骨を揺るがしていることが原因である。習氏は、「共同富裕論」を掲げて、不動産投機抑制に動いている。これが、地価下落をもたらし地方政府の財源窮迫を招いているのだ。

 


習氏は、不動産バブル抑制で経済減速の生む政治的摩擦を押さえ込める自信があれば、22年のGDPを5%強と低めに設定できる。だが、地方政府から反対が出て、高目のGDP成長率を要求されれば、5.5~6%成長率という高めに設定しなければならないと見る向きも出てきた。こうして22年の成長率目標が、習氏の政治権力の強弱を占う材料になるというのである。

 

『ロイター』(12月22日付)は、「来年の中国成長率目標、習氏の『権力』知る手がかりに」と題するコラムを掲載した。

 

中国は、世界金融危機以降で最も重要な国内総生産(GDP)成長率目標を設定する態勢に入った。かつて経験がないような一連の経済的試練に直面する中国は、成長率目標を今年の「6%以上」から、不良債権問題の重圧が持続的にかかり続けることを意味する水準まで、大きく下方修正する意向を示唆している。習近平国家主席が選択する目標は、中国をより効率的な発展の道筋に持っていくために、同氏がどれだけの力を備えているかを探る手掛かりになるだろう。

 


(1)「先のコロナ禍で受けた痛手が消えていく中で、中国共産党には、実態以上に高まっている経済へのさまざまな期待を押し下げるべきあらゆる理由がそろっている。中央政府は、新変異株の脅威の先まで見据えて、既に不動産セクターの金融リスク抑制に乗り出した。中国の経済活動の25%から3割強を担う不動産セクターが、中国恒大集団などによって動揺する中で、当局はその崩壊を防ぐために全力を注いでいる。2兆5000億ドルに上る販売前物件の工事完成を見届け、消費者信頼感の急低下を避けるというのも対策の1つだ」

 

習氏は、住宅が住むためであり投機対象でない、と分かりきったことを繰返している。ここまでしながら不動産バブル抑止に取り組んでいる。当然、来年のGDP成長率は低下する。

 

(2)「ロックダウン(都市封鎖)の下で、小売売上高や国内観光、サービス部門は低迷が続いたが、そうしたマイナスをある程度帳消しにしたのが、海外からの医療機器と電子商取引関連の需要だった。だが、貿易相手の経済正常化に伴って、この流れがいつまでも続くかどうか不確かだ。また、生産性に関して言えば、中国の経済成長に貢献するどころか足を引っ張ってきた。国有企業優先の政策も、生産性低下に拍車をかけている。今年第3・四半期の成長率が4.9%にとどまった中国経済は、来年減速するとの見方が広がっている。あるいは単なる減速よりもひどい状況になってもおかしくない」

 

今年10~12月期のGDPは、前年同期比4%台を割込むとの見通しが出はじめている。こうなると、22年のGDP成長率は5%強に止まる公算が強まろう。習氏は、不動産バブル抑制のため、低い成長率を甘受すべきとしている。この低成長路線が、党内で受入れられるには、習氏の政治基盤が強いことが前提になろう。そうでなければ、妥協を余儀なくされる。

 

(3)「習氏は、「洪水のような景気刺激策」が当面実施されることはないと、投資家を納得させる努力を続けている。当局が融資や債券のデフォルト(債務不履行)を甘受しながら、大幅な利下げは差し控える姿勢だとうかがえる。これは成長率が4%近くと、政府顧問が提言している来年目標の5.5%程度よりはるかに低くなることを意味する。より保守的な成長率目標が採用されれば、中国経済の構造転換に対する習氏の本気度が示される。その場合の危険は、2015年の反汚職運動時のように、官僚機構が動かなくなることだ。地方政府の資金繰り圧迫にもつながる

 

中国経済の構造転換には、住宅投資・設備投資・公共投資といった総固定投資比率の引下げが条件である。だが、そうなるとGDP成長率は低下する。この狭間にあって、中国経済は耐えられるかどうか。卑近な言葉で言えば、中国は手術(構造転換)する体力(GDP成長率)が問われる。地方政府は、低成長になれば財源不足で動けなくなると、指摘しているのだ。

 


(4)「
一方で、住宅とインフラの投資に再び寛容な顔を見せると、GDPの不均衡は解消せず、債務の対GDP比は一段と限界に迫る上に、当局による厳しい債務圧縮の掛け声は表面だけだと投資家に見くびられるだろう。習氏が金融システムに今後も与信縮小路線を維持させ続けることができるとすれば、同氏の権力の絶大さを物語るこれまでで最も強力なサインになる」

 

地方政府の要求に従い、高目のGDP成長率を目標に掲げれば、不動産バブル抑制という構造改革は後退する。問題を先送りするだけなのだ。習氏は、こういう切実な要請を退けて、中国経済の改革を実現できるのか、である。その政治力が問われている。低めのGDP成長率=権力基盤は不動。高目のGDP成長率=権力基盤が動揺、という方程式が生まれるであろう。

 

中国経済が、ついに手術台へ上がった。この状況で、米国と世界覇権を争うなど、白昼夢である。現実の厳しさに目を覚ますことだ。