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韓国が、秘かに怯えていることがある。家計債務が増え続けていることだ。この段階で、政策金利が引き上げられれば、家計は金利負担が重くなり返済不可能なケースが起こりうると警告音が鳴り響いている。

 

韓国銀行(中央銀行)は、「コロナ後の家計負債増加幅が先進国の3倍に達する。韓国の場合、2000年代初めのカード事態以降16年間一度もデレバレッジ(負債縮小)なく家計負債が累積してきた」と指摘した。これは、世界的にも異例な現象で、住宅価格急落のリスクが高まっていることもあり、不安定な状況にある。韓国銀行は、すでに次回の利上げを予告しているほどだ。

 

韓国がよく引き合いに出すのは、「日本の失われた20年」である。バブル崩壊(1990年)から、約20年間も「低空飛行経済」を余儀なくされた。韓国経済も、家計負債増加の影響から、こうした事態へ落込むのでないかというものである。

 


『中央日報』(12月23日付)は、「韓国にも『失われた20年』くるのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、イ・チョルホ中央日報コラムニストである。

 

韓国経済の構造的問題は悪化している。少子高齢化は回復不可能な構造で定着してしまった。日本で20年かけて起きた高齢化が韓国では10年に圧縮され進行している。「世界で最初に消滅する国」という不名誉とともに昨年の合計特殊出生率が0.84人に落ちた。世界最下位だ。

(1)「日本の変曲点は1990年だった。株式・不動産バブルが崩壊にし始めた。奇しくも同じ年、に日本の生産可能人口(注:生産年齢人口)もピークに達した。その後の生産可能人口減少により労働生産性が下落し、貯蓄と投資が萎縮していった。
韓国は2019年に生産可能人口が初めて減少した。2020年には人口そのものが減少した。死亡者が出生者より多く3万3000人の人口が減ったのだ。戦争や天変地異でない限り人口の自然減少は人口災害と変わらない。社会は活力を失い、経済の躍動性も落ちるほかはない」



生産年齢人口(15~64歳)が総人口に占める比率がピークを打つと、それ以降は潜在成長率が低下していく。日本のピークは1990年、韓国が2014年である。韓国はこの現実を認識すべきであり、すでに「日没する」経済状況になっている。

(2)「これまで韓国版「失われた20年」の可能性を否定してきた専門家は、次のような根拠を出してきた。韓国は、日本に比べて資産価格上昇幅が大きくなく、企業の投機的不動産購入が少なく、家計の実所有目的の不動産投資が多いという反論がまさにそれだ。この4年間で、こうした信頼が根本からひっくり返されている。何より住宅価格上昇幅が1980年代の日本に匹敵する水準になった。ソウルのマンション平均売買価格は2017年5月の6億708万ウォンから今年10月には12億1639万ウォンと2倍以上に高騰した。ここに借金をしてまで投機的に不動産や株式を買う動きが猛威を振るった。金利が上がる場合、日本のように不動産・株式バブルが崩壊しないという保障はない」

 

韓国の住宅価格上昇は近年、半端なものでない。1980年代後半の日本に匹敵する水準になった。これは、不動産バブルと呼んでもおかしくない現象である。この不動産バブルを生み出したのは、家計債務の急増である。それだけに危険な状況になっている。日本の「失われた20年」が、韓国で再現しないという保障がなくなったのである。

 


(3)「ムーディーズは11月、「コロナで家計負債が急激に増えた状況から金利引き上げまで重なれば金融圏の資産健全性を脅かしかねない」と警告した。韓国銀行も「コロナ後の家計負債増加幅は先進国の3倍に達する。韓国の場合、2000年代初めのカード事態以降16年間一度もデレバレッジ(負債縮小)なく家計負債が累積してきた」と指摘した」

 

ムーディーズは、家計債務が急増した後の金利引き上げに警戒している。韓国銀行は、特に韓国における長期の家計債務急増に警戒の目を向けている。韓国は、決して安心できない状況にあるのだ。

 

(4)「日本が失われた20年を耐え忍んだのは基礎体力がしっかりしていたためだ。国内機関が保有する国債の割合が90%と高い上に純債権国の地位が確かだった。そのおかげで日本は途轍もない財政赤字にも資本流出の恐怖に苦しめられなかった。純外貨資産は253兆円に上り、貿易収支で赤字が出ても経常収支全体では豊富な黒字を維持した。一言で通貨危機の心配がなかった」

 

日本の対外純資産は、年間GDPの68%に相当する金額を保有している。むろん、世界一の規模である。最近、日本国内で日本の生産性が落ちると、この対外純資産を食い潰すという「珍説」がメディアに登場した。

 

生産性が落ちると恒常的な貿易赤字になって、経常収支が赤字になるという前提であろう。だが、現在の円安は輸出を増やし、海外からの所得収支を増やすので経常収支は赤字にならないのだ。よって、対外純資産を食い潰すことにはならない。念のために書いておきたい。

 

(5)「経済学用語で、可処分所得から消費を差し引いた割合を純貯蓄率という。日本は1991年に個人の純貯蓄率が15.9%だったが10年後には3.7%に下落した。これは長い不況の間に日本国民が貯蓄を減らして消費に当てたという意味だ。これに対し韓国の純貯蓄率は2.7%にすぎない。貯蓄を減らして消費に充当するのが容易でないという意味だ。景気低迷で所得が減少すればいつ消費減少・家計破産・不況深化の悪循環に陥るかもしれない。一言で日本は冬眠しても耐えられるほど皮下脂肪が蓄積されているのに対し、韓国経済の皮下脂肪は貧弱だという意味だ」

日本は、高度経済成長時に溜め込んだ貯蓄がある。同時に、年金制度が成熟して現役時代の最大4割程度の所得を保障している。こうして、個人の純貯蓄率は韓国のように低レベルにまで落込まないで済んでいる。韓国が、「失われた20年」に落込めば、日本よりも低レベルへ落込むであろう。