a0960_008567_m
   

中国は、世界を騒がせた不動産開発企業の経営不振に対処すべく、中国人民銀行(中央銀行)が先頭に立って「解体作業」を始める。経営不振企業の資産を、国有企業へ切り売りをするというもの。信用不安の連鎖を絶つ目的である。

 

この荒業によって、問題の禍根を取り除こうという狙いだが、不動産バブルの終焉を鮮明にしている。「土地本位制」によって、中国財政の約5割を捻出してきただけに、中国経済に与える影響は甚大だ。すでに、公務員給与の3割前後のカットが通告されており、不動産バブル崩壊のもたらす影響が出始めている。

 


『ロイター』(12月30日付)は、「中国不動産業界、再編が債務削減に寄与―人民銀高官」と題する記事を掲載した

 

(1)「中国人民銀行(中央銀行)金融市場局の鄒瀾局長は30日、国内不動産市場でのM&A(合併・買収)は企業債務の圧縮に寄与するとの認識を示した。鄒局長は記者団に「不動産会社間のプロジェクトのM&Aは、不動産企業のリスク解消方法として最も効果的で市場原理に沿った手段だ」と述べた。中国不動産業界は今年、当局の規制強化を受けて流動性問題が顕在化し、特に債務の多い企業でデフォルトが起きている」

 

人民銀行高官は、経営不振の不動産開発企業をM&Aによって吸収合併させると発表した。「不動産企業のリスク解消方法として最も効果的で市場原理に沿った手段だ」と自画自賛しているが、これによって経営不振企業の過剰債務が消える訳でない。吸収合併した側が新たに背負い込む形になる。一時的な糊塗策に過ぎないであろう。

 


『日本経済新聞 電子版』(12月30日付)は、「振の中国不動産、人民銀が事業売却支援 恒大など念頭」と題する記事を掲載した。

 

中国人民銀行(中央銀行)などは、経営危機に直面した不動産開発会社の事業売却を支援する。国有企業など財務体質が安定した企業が、資金繰り難の会社の優良な資産や建設中の物件を買い取るように促す。政府の規制強化で大手の中国恒大集団などは資金不足に陥り、社債の利払いに苦慮している。資産の切り離しで現金化を加速させ、債務リスクを軽減させる。

 

(2)「12月30日に記者会見した人民銀金融市場局の鄒瀾局長が明らかにした。金融監督当局の銀行保険監督管理委員会とともに取り組む。売却の対象は資金繰り難の企業が建設中の物件のほか、子会社の株式や資産だ。中国メディアによると、優良物件とセットにした不良資産の購入は支援対象にしない。買い手は財務体質が安定している企業に限る。民間企業も買収に名乗りを挙げられるが、当局は信用力が高く低利の資金調達が容易な国有企業を有力な買い手とみているもようだ。買い手が買収資金を調達しやすいよう、人民銀などは銀行に融資や債券の引き受けに積極的に応じるよう要求した。銀行が直接、買収取引に参画することはできない」

 


売却対象は、「資金繰り難の企業が建設中の物件のほか、子会社の株式や資産」とされている。建設中の物件の売却は、買い主へ確実に建物を引き渡す目的である。それと子会社の株式や資産が売却対象である。「無傷」な部分を売り渡せば、経営不振の本体は「丸裸」にされ、最終的に倒産という形をとるのであろう。返済できない債務は、債権者の泣き寝入りとなるのか。

 

(3)「営難に陥った不動産開発企業が資産の現金化を進めれば、債務の利払いや返済に充てられる。過剰に膨らんだバランスシートの圧縮につながる。人民銀は、財務体質が安定した企業が建設中の案件を引き継いで完成まで責任を持つことで、住宅を買った人への物件の引き渡しもスムーズに進められるとみる

 

住宅を買った人たちが無事、建物の引き渡しが済めば、経営不振企業は「消える運命」のように見える。

 


(4)「中国の習近平(シー・ジンピン)指導部はマンションバブルが金融リスクを膨らませていると警戒し、投機の抑制を重視している。ただ規制強化で不動産開発企業の資金繰りが逼迫したほか、住宅需要の縮小が景気の足を引っ張った。中国共産党が2022年の経済運営方針を決めた12月の中央経済工作会議は「新たな成長モデルを模索し、不動産業の好循環と健全な発展を促す」と強調した。業界内の事業再編を促し、不動産市場の安定につなげたい考えだ」

 

一度、傷ついた不動産企業のイメージ回復は困難であろう。これまでは、民間企業であったから積極的な経営を展開したが、国有企業ではそういう冒険をするはずがない。中国の不動産ブームは終焉したと見るべきだ。