文在寅氏ほど、学生時代からの理想主義に拘っている政治家は珍しい。理想主義を批判しているのではない。その理想が実現できるかどうか、という客観情勢の分析が文氏にないのだ。子どもが、オモチャをねだるような趣きである。
文氏の理想主義とは、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出すことだ。北朝鮮が喜ぶことすれば、それが平和主義に繋がると信じているからだ。
「文在寅政府は、何よりも北朝鮮が望むことをすれば平和がやってくると認識している。現政権が推進する韓半島(朝鮮半島)平和体制構築の大義そのものを否定する者は少ない。だが、これを実現しようとする方法論は北朝鮮の望みを聞き入れてこそ平和がやってくるという根拠のない理想主義に傾いている」
前記の指摘は、朴チョル熙(パク・チョルヒ)ソウル大教授が、『中央日報』(3月17日付コラム)で指摘した点である。文氏ほど、ナイーブな人間はいないだろう。
『中央日報』(12月30日付)は、「韓国『終戦宣言に合意』、米国『対北朝鮮外交に専念』…韓米の温度差」と題する記事を掲載した
鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が12月29日、「韓米間(終戦宣言)文案について事実上合意に至った状態」と述べたが、米国側はこれを認める発言をしないまま「対北朝鮮外交に専念している」という原論的立場のみ示した。北朝鮮側の反応がないうえ、ワシントンの朝野で終戦宣言の波及効果に対する懸念が少なくない点などを意識した可能性があるという指摘だ。
(1)「崔英森(チェ・ヨンサム)外交部報道官は、12月30日の定例記者会見で終戦宣言に関する韓米の温度差が感じられることについてコメントを求める質問に、「韓米両国はこれまで終戦宣言の推進に対する重要性に関する共感の下、終戦宣言の文案について既に事実上合意に至った状態」という点を強調し、「ただし、具体的な終戦宣言推進案については、引き続き協議中にある」と述べた」
朝鮮戦争の終戦宣言は、韓国が一方的に宣伝している問題だ。米国バイデン政権は、韓国の強引な「終戦宣言論」に困り果てている様子である。韓国は、なぜここまで執拗なのか。それは、文大統領が「レガシー」にしたいだけである。
(2)「米国務省は11月11日、鄭長官が国会外交統一委員会全体会議で「韓米間で(終戦宣言関連の)相当の調整が終わった」と述べた時も同様の反応を見せた。プライス報道官は当時も「北朝鮮との対話・外交を通じて韓半島の恒久的な平和を達成することに専念している」という今回と全く同じ立場を紹介した。鄭長官は「相当な調整」「事実上の合意」など徐々に表現の水位を高めて韓米の終戦宣言共助を強調しているが、米国は異見調整および文案合意を認めずに機械的な回答ばかり繰り返していることになる」
米国は、終戦宣言を出すには国内の意見調整が必要だが、与野党ともに反対姿勢である。「終戦宣言」してみても、北朝鮮に利用されるだけという見通しを持っている。日本も同様な姿勢である。文在寅氏だけが、狂ったように騒いでいるのだ。
文氏が、中国へ低姿勢である理由も北朝鮮がらみである。中国へペコペコしていれば、北朝鮮を説得してくれると間違った期待感を持っている。北朝鮮は、中国を信用せずむしろ米国を信用する「歪な」関係にある。
(3)「現在、米議会内でも終戦宣言に対する確実な支持は確保されていない状況だ。したがって、バイデン政権の立場では、来年11月の中間選挙を前に終戦宣言を急激に進展したり、関連の立場を公にすることは政治的負担につながりかねない。高麗(コリョ)大学統一外交学部の南成旭(ナム・ソンウク)教授は、「終戦宣言議論の過程で韓国はこれ以上米国の異見が出てこないため『合意』と評価しているが、米国は韓国の立場をただ聴取しているだけでこのような状況を合意や同意とみなさない、同床異夢に陥っている可能性がある」とし、「バイデン政権は特に米議会内でも終戦宣言に対する意見が交錯する状況で、韓米の協議経過や文案合意の有無などに言及すること自体が政治的リスクになりかねないとみている」と述べた」
米議会は、与野党ともに終戦宣言を支持していない状況だ。来年秋の米中間選挙を控えて、バイデン政権がそうした負担になるような問題で韓国へ同意するだろうか、と疑問視されている。韓国が、バイデン政権の対中政策へ格別の協力をしているものでもない。米国が、二股外交という身勝手な韓国を支援するメリットがない。文氏は、身から出た錆というほかない。
(4)「一部では、鄭長官が「北京五輪(オリンピック)を南北関係改善のきっかけにするのは事実上難しくなった」と是認しつつも、韓米間で終戦宣言の文案に合意したという内容を公開したのは、国内政治的な「成果広報用メッセージ」の意味合いの方が大きく見えるという分析も出ている。鄭長官の発言は国内メディアの記者懇談会で出たものだが、質問は「北朝鮮に終戦宣言に関して具体的提案をする計画があるか」であって、韓米間の協議経過を問うものでもなかったためだ」
鄭外交部長官も、終戦宣言を自らの手柄にしたい衝動に駆られている。日韓関係が、完全にブロックされているので、活路を終戦宣言に求めていると考えられるのだ。
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