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文大統領は、北朝鮮による国連が禁じた違法なミサイル発射実験に対して、ひたすら沈黙している。抗議すれば、北の猛反撃を受けて感情的に拙くなることを恐れている結果だ。ひたすら堪え忍び、南北対話を「お願いする」立場を貫いている。こういう腑抜けな態度が、北を一段と強気にさせて、ミサイル発射実験をエスカレートさせている。

 

文氏がここまで低姿勢を貫いているのは、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出して、その名を歴史に留めたいという名誉心である。習近平氏の「終身国家主席」願望と同様に、文氏の名誉心も相当強いようだ。この被害は、世界に及ぶことを忘れている。

 

『朝鮮日報』(1月8日付)は、「北の挑発、文在寅大統領就任後に約30回 朴槿恵政権期の6倍」と題する記事を掲載した。

 

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の期間中に最も多くのミサイルを発射したことが分かった。

 

(1)「パク・チョンイ予備役陸軍大将は今月6日、自由民主研究院および自由フォーラム主催のセミナーで、「北朝鮮の公式発表を分析した結果、北朝鮮は文在寅大統領就任4日後の2017年5月14日から最近まで、およそ30回にわたり50発あまりのミサイルを発射した」と発表した。北のミサイル発射は、朴槿恵(パク・クンへ)政権時代には5回(8発)、李明博(イ・ミョンバク)政権時代には12回(19発)だった。文大統領は今年の新年の演説で「韓半島情勢はかつてないほど安定的に管理されている」と発言したが、北の挑発の回数だけを比べると、朴槿恵政権時代の6倍も多いということになる

 


北朝鮮の交渉相手は、米国だけである。韓国を、単なる露払い程度にしか見ていないのだ。文氏は、この事実を認めようとせず、北へ無条件の融和策を取っている。大きな「引出違い」に陥っているのだ。この延長上で、中国へも無原則な融和策に出ている。

 

文政権のこうした外交姿勢は、中朝双方から低評価されるという思わぬ結果を招いている。韓国は、毅然とした外交姿勢を取らないので、中朝から「舐められ放題」という事態である。下線のように北朝鮮は、文政権になってから朴大統領時代と比べ6倍ものミサイル発射実験を行なっている。この数字こそ、北朝鮮がやりたい放題の振る舞いをしている現実を見せつけている。

 

(2)「北朝鮮は2017年9月に水素爆弾の実験(6回目の核実験)に成功し、核弾頭を本格生産した。米国ランド研究所は、現在北朝鮮は67発から116発の核弾頭を保有しており、2027年には151発から242発の核弾頭を持つという見込みを示した。また、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に加えて極超音速ミサイルの技術発展まで成し遂げた。朴・前大統領は、「北朝鮮が、表面的には非核化交渉と南北関係改善に乗り出すふりをしつつ、裏では核・ミサイル開発に全力疾走していたことを示している」と語った」

 

韓国の北朝鮮政策は、朴大統領時代の方がはるかに厳しかった。対応の甘くなった文政権において、北朝鮮のミサイル能力は格段の進歩を遂げている。すべて、文氏の無原則な融和策が招いた結果である。日本への被害も大きくなるのだ。

 


『朝鮮日報』(1月7日付)は、「北朝鮮の極超音速ミサイルを世界が糾弾、韓国は沈黙」と題する記事を掲載した。

 

北朝鮮は6日「国防科学院は15日、極超音速ミサイルの試験発射を行った」「700キロに設定された標的に誤差なく命中させた」と報じた。マッハ5以上で滑空し変速的な軌道を描く極超音速ミサイルは現存のミサイル防衛システムでは迎撃が不可能な「ゲーム・チェンジャー」となる武器だ。昨年9月に続き2回目に行われた今回の発射を通じ、速度と変速的な軌道で飛行する能力が大きく向上したとみられる。

 

(3)「過去に北朝鮮がこれと同じような挑発を行った際に、韓国と米国の外交当局が最も迅速に状況の共有と対策の準備に取り掛かったが、今回は米国と日本の外相による電話会談が先に行われた。米国のブリンケン国務長官と日本の林芳正外務大臣はこの日、北朝鮮が発表を行った2時間後35分間にわたり電話会談を行った。会談について米国務省は「ブリンケン国務長官は北朝鮮の弾道ミサイル発射を糾弾し、日本に対する米国の防衛公約は鉄壁だと強調した」と説明した」

 

日米外相による電話会談は行なわれたが、米韓では行なわれていない。多分、韓国側にその動きがない結果であろう。米韓外相の電話会談では、北朝鮮へ抗議する内容になるはずだから,韓国が避けたに違いない。「終戦宣言」に賭けているのだ。

 


(4)
「欧州連合(EU)報道官は、「北朝鮮による度重なるミサイル発射は対話の再開を目指す国際社会の努力に逆行する」とした上で「北朝鮮には国連安保理決議に従う義務を順守するよう求める」と述べた。北朝鮮ミサイルの射程圏から遠く離れた国々は一斉に北朝鮮を糾弾しているが、北朝鮮のミサイルの脅威に直接直面している韓国だけが口を閉ざしている形だ」

 

EUが、北朝鮮のミサイル発射実験に抗議しているのに対して、韓国が沈黙しているのは不思議な現象だ。沈黙は、容認という意味だ。文氏の安全保障観はどうなっているのか。自分の名誉心だけ満たされれば、それでよしとすることだろう。困った大統領が出てきたものである。