日本では、正月明けから急速なコロナ感染者の増加に見舞われている。発端は、在日米軍基地の兵士がオミクロン株を国内へ拡散させたことだ。沖縄・山口などが、拡散の起点になったことでそれを覗わせている。
だが、1月9日現在の重症者数は105人。実効再生産数(一人の感染者が何人の感染者を増やしたかを示す)は、同日現在5.31で1月9日の暫定ピーク5.75を下回っている。改善傾向を見せ始めており、悪化の一方という状況ではない。
日本は思わぬ伏兵にしてやられた形である。韓国は、これまでのパターンから言えば、「日本冷笑」の報道洪水があっても不思議でないが、今回は日本評価もありクールである。日本の防疫対策を韓国に比べて、日本へ軍配を上げているのだ。
『中央日報』(1月13日付)は、「終わらないコロナ戦争、日本の緩和戦略 韓国の退治戦略」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・ヒョンサン中央日報コラムニストである
日本のコロナ禍はジェットコースターだ。昨年8月に1万8000人まで増えた1日の感染者数は11月に入り150人水準まで急減すると最近では6000~8000人水準に再び増えた。すると韓国メディアで「J防疫が揺らぐ」のような記事が登場した。しかし速断するには早い。感染者数は急増したが、死亡者はまだ1日1~2人水準であるほど安定傾向を継続している。
(1)「昨年末に出版された『K防疫はない』の共著者である関西外国語大学のチャン・ブスン教授によると、韓国と日本の防疫戦略は明確に違った。チャン教授は「K防疫は退治戦略、J防疫は緩和戦略」と説明する。韓国はコロナ禍初期に先制的に大量のPCR検査で感染者を「探索」する戦略を使った。これに対し日本は大量検査ではない「最適検査」、すなわち有症状者や重症患者に検査を集中する戦略を展開した。限定された医療資源を重症患者の管理と治療に集中することにより医療体系の崩壊を防ごうという意図だった。社会的移動を減らすこととワクチン確保のような長期対応戦略も並行した。チャン教授は「実際に主要産業民主国家が選択した防疫戦略は退治戦略よりは緩和戦略に収束している」と話した」
K防疫とJ防疫を比較すると、主要国はJ防疫型としている。日本の防疫対策は、正しかったのである。
(2)「K防疫の持続性に対する疑問はオミクロン株の流行を控えて深まっている。韓国政府もオミクロン株に備えPCR検査基準を高めるなど防疫戦略を立て直している。オミクロン株の現在の防疫方式にともなう社会的費用はますます限界にぶつかっている。医療体系だけでなく経済・財政でも持続可能なのか疑問だ。何より基本権と公益の衝突が頻繁になり、民主主義の本質を振り返らせる。政府が拡大を押し進めている防疫パス(接種証明・陰性確認制)が代表的事例だ。防疫パスには結局「より大きい公益」に向けては「小さな基本権」は制約できるという論理が敷かれた」
韓国政府は、防疫パスを持っている者を優遇してコロナ感染を防止する案を立てているが、その反面で個人の基本的人権が侵されるという懸念も強い。K防疫は、全体主義色なやり方の証拠という批判を呼んでいるのだ。同時に、下線のようにK防疫では社会的費用が増大し続けており、もはや耐えられない状況になっていると指摘されている。その点で、J防疫は「緩和戦略」(ウィズコロナ)で成功している。
(3)「韓国政府の防疫の手はますます荒くなっている。金富謙(キム・ブギョム)首相は昨年10月初めに防疫パス導入と関連し「未接種者に対する差別・疎外が発生しないことも重要だ」と明らかにした。だが実際に裁判所によりブレーキがかかると、「生命権より重要な基本権がどこにあるのか」として裁判所を圧迫した。その背景には幻想に終わってしまった「集団免疫論」がある。疾病管理庁中央防疫対策本部は昨年10月、「接種完了率が85%になれば集団免疫は概ね80%に達し、こうなれば理論的にデルタ株さえマスクなしで、集合禁止なしで、営業禁止・制限なしで勝ち抜くことができる」と話した。しかしこの説明があって半月後に始まった「ウィズコロナ」の実験は失敗に終わった」
韓国の防疫対策の失敗は、感染者が十分な減少過程へ達しない前に、日本が「ウィズコロナ」へ踏み切ったので,対抗上で「ウィズコロナ」を実施した点にあった。このタイミングの間違いが、現在までずっと尾を引いている。早すぎる「ウィズコロナ」で失敗したので、今度は「防疫パス」議論へ繋がったもの。ボタンの掛け違いである。
(4)「医療界の一部では、政府がさらに果敢に持続可能な防疫モデルを探さなければならないと主張する。中央大学薬学科のソル・デウ教授は「オミクロン株感染を容認する『ウィズコロナ』の方向に進むものの、60代以上の高齢層と基礎疾患者中心の危険管理に力を注がなければならない」と話した。一時は自慢するのに忙しかったK防疫モデルがいまでは壁にぶつかっていることを認めなければならない。個人の忍耐と自営業者の犠牲をいつまでも強要することはできない。全体主義色が濃厚な防疫方式に国民は少しずつ疲れていっている。過去の成功のくびきを投げ捨てる勇気から必要だ」
K防疫モデルは一律強化である。そうではなく、「60代以上の高齢層と基礎疾患者中心の危険管理に力を注げ」ば、オミクロン株対策は可能という指摘が出ている。韓国政府は、こういう防疫専門家の意見を聞かずに「独走」している。日本では、防疫専門家の意見を最大限尊重しているが、韓国は政治判断を優先しているのだ。ここが、間違いの原点である。
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