中国は、リトアニアが台湾と関係を深めていることで圧力を掛けている。具体的には、リトアニアからの輸入だけでなく、同国製の部品が使われた全製品の輸入を差し止めたのだ。その影響は欧州全域に波及している。
リトアニアでは、自動車部品を製造してドイツへ輸出している。ドイツ企業のコンチネンタル社は、それを組立て中国へ輸出するが、中国はリトアニア製部品が含まれているとして、輸入させない強硬措置を取っている。ここへ、フランスが救世主として登場した。フランス外相が、EU(欧州連合)議長国として、中国へ対抗措置を取ると言明したのだ。
『大紀元』(1月13日付)は、「『対抗措置を取る』 仏外相、中国を名指しで批判 リトアニアへの圧力めぐり」と題する記事を掲載した。
ルドリアン仏外相は1月12日、中国当局から圧力を受けているリトアニアを支持する立場を示した。外相は、フランスは欧州連合(EU)の議長国として、中国当局の圧迫に対抗するための法案の制定に取り組んでいくと述べた。
(1)「外相は同日夜、フランス国民議会(下院)の公聴会で、中国当局を名指しして、「一部のEU加盟国、特にリトアニアに対して経済的圧力を加えている」と非難し、対抗するための行動を起こすと表明した。外相によると、EUでは関連法案についての議論がすでに始まっている。今月、EUの議長国となったフランスは、議長国として「(法案の制定などを)引き続き進めていく」という」
中国の圧力は、過去にも例がある。中国は、自国の反体制派の活動家がノーベル平和賞を授与された後に、ノルウェーからのサーモンの輸入を中止した。また、豪州が新型コロナウイルス感染症の発生源の調査を求めた後に、豪州産ワインの輸入を中止した。これらは深刻な影響をもたらしたが、打撃を受けたのは当事国のみだった。今回は、リトアニア製部品を組み込んだ製品の輸入を止めるという露骨な手段に訴えた。
フランスは、こうした中国の姿勢に強く反発している。ドイツ新政府は、発足間もないことから中国との衝突を避けているようだが、フランスは敢然として「受けて立つ」という気構えを見せている。
(2)「外相は、13~14日までの日程で、フランス西部の都市ブレストで開催されるEU加盟27カ国の外相・国防相会合でも、対抗措置を巡って各国の高官らと話し合う予定だと述べた。台湾メディア「自由時報」によると、公聴会でディディエ・クエンティン議員(共和党)は外相に対して、リトアニアへの中国側の圧力を巡って、質疑を行った。
クエンティン議員によれば、中国当局はドイツの自動車部品企業コンチネンタル社に、リトアニア企業の製品の使用を停止するよう圧力をかけた」
下線分が、中国からリトアニアへ圧力がかかってきたドイツ企業である。ドイツ政府が、起ちあがるべきところを逡巡していたのだ。恥ずかしい話である。
(3)「同議員は国民議会の公聴会で、台湾の世界保健機関(WHO)年次総会への参加について、複数回言及したことがある。ルドリアン外相は、議員の質疑に対して、「フランスはEUの議長国を務めている間、(中国の)圧力への対抗措置の制定を進めていく」と再びリトアニアへの支持を強調した」
フランスが、積極的に中国の理不尽な動きに対抗するとなれば、ドイツも静観できなくなるだろう。ドイツ外相は、緑の党出身であり「反中国」姿勢を明確にしている。本領を発揮するうえで、リトアニア問題は格好のテーマであろう。
『大紀元』(1月12日付)は、「台湾、リトアニアへの投資強化 10億ドル規模融資ファンドを創設へ」と題する記事を掲載した。
台湾は、中国当局から経済報復を受けているリトアニアに対して支援する姿勢を打ち出した。経済政策を担う国家発展委員会(NDC)は11日、台湾・リトアニアの共同プロジェクトに対して10億ドル規模の与信制度を創設すると発表した。
(4)「NDCは5日、リトアニアの産業を支援するために2億ドル規模の「中東欧投資基金」を設立すると発表したばかりだ。NDCトップの龔明鑫(クン ミンシン)・主任委員(閣僚に相当)は11日、リトアニアのアウシュリネ・アルモナイテ経済イノベーション相とオンライン会談で、リトアニアとの協力を深化すると約束した。「ともに強力な民主主義的サプライチェーンを構築し、世界の民主主義陣営の結束と強さを高める。同時に、中国共産党の経済的な圧力に対処するリトアニアを引き続き全力で支援する」と述べた」
台湾は、自国の問題でリトアニアを窮地に追い込んでいることから、リトアニアへの経済協力で報いる意向を見せている。
(5)「龔主任委員は、両国の協力が見込まれるリトアニアの産業のために「10億ドル規模の融資ファンド」を創設するとした。半導体開発、バイオテクノロジー、衛星技術、ファイナンス、科学研究の6分野が対象」
台湾は、10億ドル規模の融資ファンドによって、半導体開発、バイオテクノロジー、衛星技術、ファイナンス、科学研究の6分野を支援する。これは、リトアニアにとって願ってもないことが降って湧いた幸運である。特に、半導体が目玉になる。
(6)「両閣僚はその後の記者会見で、台湾とリトアニアは「今後、様々な分野での交流と協力がより緊密に、より頻繁に行われる」と示した。特に、半導体分野での協力が最も著しくなるという。台湾のNDC、経済省などの政府官庁は近く共同で「台湾・欧州半導体産業協力専門チーム」を立ち上げる予定。アルモナイテ氏は台湾側の支援に感謝し、今春に駐台湾代表処を正式に開設すると明らかにした」
台湾が、リトアニアへ半導体工場を建設すれば、EUにとっても朗報である。これをきっかけに、EU全体が台湾歓迎ムードに変わることは疑いない。中国は、台湾という隠し球が出てくることに気付いていなかったのだ。リトアニア・台湾連合チームの勝利であろう。
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