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中国の首都・北京市当局は15日、市内北西部の海淀区で新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染者が同市では初めて1人確認されたと発表した。北京冬季五輪の開催まで20日余り、中国当局がもっとも恐れていた事態が起こった。北京市で新型コロナの市中感染者が確認されたのは昨年12月19日以来である。

 

オミクロン株と確認された感染者は、2週間北京市から出ていないとされている。このことから、北京市内で感染が広がっている可能性が高いと指摘されている。当局は感染者の居住するマンションや職場のあるビルなどを封鎖し、住民や接触の可能性がある人員に対してPCR検査を実施している。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月15日付)は、「中国、北京でオミクロン型を初確認 上海や広東省でも」と題する記事を掲載した。

 

(1)「国家衛生健康委員会は15日の記者会見で、13~14日に上海市と広東省珠海市、同省中山市で確認された病例がオミクロン型だったと発表した。多くの感染者は行動歴が広範囲にわたっており、感染が拡大する恐れがあるという。オミクロン型は北京市に隣接する天津市と遼寧省大連市でも確認されていた。同委員会の担当者は、「ゼロコロナ政策はオミクロン型にもなお有効だ」と述べた」

 

下線部は、間違った判断という指摘がされている。オミクロン株の感染が極めて早いことから、感染が確認された段階では手遅れである。後追いに過ぎないという。北京市でオミクロン株と確認された感染者は、2週間北京市から出ていない。北京市外へ出ないでオミクロン株に感染したのは、すでに北京市内に蔓延していることを示している。オミクロン株には、ゼロコロナ対策は有効でないのだ。

 

天津市は12日、地方議会に相当する人民代表大会の開催を延期すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大が理由だ。天津市も、事実上の「封鎖状態」になっている。それでも、隣接市の北京でオミクロン株感染者が確認されたわけで、天津市の「都市封鎖」もオミクロン株には無力であることを示している。経済的な損害だけを出した措置である。

 


習近平氏が、強引な都市封鎖を行いなっている理由は、北京冬季五輪開催である。果たして、北京五輪は、観客を入れられるのか。1人でも感染者が出れば強制隔離している習近平氏である。この「原則」から言えば無観客にならざるを得まい。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月13日付)は、「IOC、北京五輪コロナ対策『満足』 開催に自信」と題する記事を掲載した。

 

国際オリンピック委員会(IOC)のデュクレ五輪運営部長は12日、2月に予定する北京冬季五輪の新型コロナウイルス対策について「満足している。対策は実行されている」などと語り、開催はできるとの考えを強調した。観客を認めるかは言及を避けた。

 

(2)「現地入りしているデュクレ氏は報道機関向けオンライン説明会で「我々大会関係者と外部の接触は遮断されており、我々は守られている」と語った。東京五輪でも採用した「バブル方式」と呼ばれる対策だ。大会関係者はマスクを着用し、定期的に感染の検査を受けるという。観客の有無は「北京五輪組織委に尋ねてほしい。情報を持っていない」とかわした。中国側は国内居住者だけの来場を認めることを検討しているが、最終結論を発表していない。無観客の開催はコロナ対策に失敗したとの印象を与えかねず、中国政府は国威失墜につながると懸念している

 

習氏が「ゼロコロナ」対策を強行したのは、北京冬季五輪で観客を入れてコロナ対策の成功をアピールしたかったからに他ならない。この夢が崩れる。「国威発揚」に拘ったのだが、そのために失ったものは大きい。中国経済は、メチャクチャになっているのだ。