サンシュコ
   

国民生活だけでなく、企業活動まで大幅に制約してオリンピック開催する。中国の本末転倒な姿勢をみると、「この国は狂っているのでないか」と思うほど、価値倒錯状態に陥っている。IOC(国際オリンピック委員会)は、こういう状態を見てなんとも感じないとすれば、これも同罪と言うほかない。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月16日付)は、「中国、ゼロコロナが企業に打撃 首都感染拡大阻止に全力」と題する記事を掲載した。 

 

中国政府のゼロコロナ政策が生産や消費活動への打撃となっている。春節(旧正月)や北京冬季五輪開幕が2月初旬に迫るなか、15日には首都北京で初めて新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染者が確認された。市当局は16日、入域する全員を対象としたPCR検査の強化策を決めた。企業や市民生活への影響は必至だ。

 


(1)「北京市トップの蔡奇・同市共産党委員会書記が15日、「五輪成功の目標に向け、北京に戻る市民の検査では一人も漏らしてはならない」と緊急会議でコロナ対策の徹底を命じた。蔡氏は習近平(シー・ジンピン)国家主席の側近で、五輪の大会組織委員会の主席も兼ねる。感染力の強いオミクロン型への危機感がにじむ」中国メディアによると、市当局は16日、22日から3月末まで北京入域後72時間以内のPCR検査を全員に義務付けることを決めた。昨年11月からは入域前48時間以内のPCR検査を義務付けており、対策を強化した」

 

全体主義国家が、オリンピックを開催した前例がある。1936年のベルリンオリンピックでは、市内の浮浪者を追い払い、良いところだけを米国カメラマンに撮影させた。このカメラマンは、ドイツの暗い部分を隠し撮りして後に公開した。今回の北京冬季五輪では、「ゼロコロナ」の名の下に、国威発揚を狙う点で、ヒトラーと習近平に違いはない。

 


(2)「オミクロン型は8日に天津市で確認された。以降、遼寧省大連市、上海市などに加え、16日にはIT(情報技術)企業の集まる広東省深圳市でも見つかった。習指導部が最重要視する北京冬季五輪は2月4日に開幕する。「首都防衛」のため隣接する天津市では北京との往来を制限し、1400万人の全市民を対象にPCR検査を順次実施し、15日から3回目に着手した。「PCR検査を何度もする必要があるため、出社できる社員が確保できない」。トヨタ自動車は10日から天津市にある自動車の組み立て工場の操業を休止。計画では稼働日だった15日も休業に追い込まれた。中国メディアなどによると、独フォルクスワーゲン(VW)の天津工場も10日から操業を休止した」

 

市民のPCR検査で、工場も操業休止に追い込まれている。ここまで行なって、北京冬季五輪を開催して、「習近平勝利」を祝いたいのだろう。ヒトラーも同じ心境であったのだ。

 

(3)「天津はトヨタやVW向けの部品メーカーが集まる自動車のサプライチェーン(供給網)の要となる地域。多くの部品工場も操業休止に追い込まれており、天津市以外に立地する取引先では「天津からの部品が届かないと月末には生産ラインが止まってしまうだろう」と悲鳴が上がる。物流関係者によると、天津港では港湾で働く人員がPCR検査のために不足しており、通関や積み下ろしなどの作業の能力が低下。輸入を中心に業務が滞っており、一部には山東省の青島港などへの振替えを検討する動きも出ているという」

 

PCR検査で生産が止まるとは、異常というほかない。これで、GDPは確実に低下する。今年のGDPは4.3%という悲観論も珍しくない状況だ。中国経済は6%成長でなければ、雇用問題に火がつくという厳しい環境下にある。それにも関わらず、北京冬季五輪で国威発揚を狙って工場の操業をストップさせる。習近平氏とその取り巻は常軌を逸しているのだ。

 

(4)「天津の事実上の封鎖は首都の企業にも影響を与えている。天津での工場操業と北京への物流が滞っていることから、北京市内のイトーヨーカドーなどでは「一部の商品の調達に支障が出ている」(関係者)という。ハイテク部品などの工場が集積する陝西省西安市、浙江省寧波市などでもコロナの感染者が確認され、企業の製造や出荷に影響が出ている。オミクロン型が確認された広東省の珠海、中山市では大規模検査や市外への移動制限が実施された」

 

中国は、「ゼロコロナ」という非科学的防疫対策しか知らない国である。それが、世界のサプライセンターを担っていること自体が不幸の原因である。ことここに至っては、どうにもならないのだ。価値観の違いが、これほど世界に迷惑を掛けると思うと愕然とする。

 

(5)「中国では2月1日に春節(旧正月)を迎える。例年ならば、大都市から帰省して大勢で食事を楽しむなどの消費や旅行需要の喚起につながる。新型コロナの感染拡大を受けて、多くの政府機関や国有企業では従業員の帰省を制限する動きが出ており、景気の押し上げ効果は乏しい。中国の2021年の消費者物価指数(CPI)上昇率は0.%と、09年以来12年ぶりの低水準だった。コロナ対策の厳しい行動制限で消費の回復が鈍いことが主因とみられる」

 

下線部は、注目すべきである。2021年の消費者物価指数上昇率が、0.%と09年以来12年ぶりの低水準であったことだ。パンデミックで、各国とも消費者物価指数は上昇している。米国の昨年12月の上昇率は7.0%で約40年ぶりである。消費者物価指数が、中国は下がり、米国は上がる。この差は、「ゼロコロナ」(中国)と「ウィズコロナ」(米国)の違いである。中国の国内経済は、徹底的にコロナで殺される。