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ロシア軍が、ウクライナ国境周辺で10万人余の軍隊に演習させていることから、米国もウクライナへの増援部隊を派遣すると発表した。にわかに、ウクライナをめぐって軍事的緊迫感が強まっている。米国は、今秋の中間選挙を控えて弱腰を見せられず、強気の姿勢を取らざるを得なくなっている。当初に見せたロシアへの融和的姿勢を一変させた。

 

新たな問題が持ち上がっている。中国が、台湾侵攻作戦に踏み切るのでないかという危惧である。こうなると、米軍は二正面作戦を強いられることから、日本も相当の決意が求められることだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(1月26日付)は、「ウクライナ情勢、日本は台湾波及を警戒 対中抑止と連動」と題する記事を掲載した。

 

政府内でウクライナ情勢への日本や米欧諸国の向き合い方が台湾情勢を左右するとの見方が強まってきた。米欧がロシアの軍事侵攻を止められなければ、中国による台湾侵攻の抑止にも影響が出るとの見立てだ。日本にとってウクライナは「対岸の火事」と言い切れない。

 

(1)「ウクライナ情勢を巡って米欧とロシアの緊張が高まる状況で、中国は東アジアで日米に強気の構えを示す。中国軍は23日、台湾の防空識別圏に39機もの軍用機を一度に進入させた。30機以上の規模は2021年10月以来だった。中国はウクライナ問題への米国や日本の出方を見極める。米国が軍事介入を含めた断固とした対応をとれるのか注視する。日本がロシアの現状変更の動きに強い姿勢を取り続けられるのかもみている。日米が弱腰なら中国は台湾についても日米が強い態度を取れないとみる可能性がある」

 


中国軍機が、台湾の防空識別圏へ39機も侵入させた。これは、日米首脳オンライン会談への嫌がらせと見られるが、同時にウクライナ情勢の緊迫化に合せた準備行動とも受取られるようになった。ただ、中国が、ロシアと歩調合わせて台湾侵攻に踏み切るかといえば、いくつかの疑問符がつく。

 

習近平氏が、今秋の党大会での国家主席3選を控えた重要な時期に軍事冒険へ出るか、である。失敗すれば、習氏の3選は消えるどころか、無謀な開戦をしたという「国家反逆罪」が待ち構えている。また、経済的に危機状況に向かう中で、開戦すれば住宅は投げ売りされて、国内経済は大混乱に陥る。西側諸国の経済制裁によって対中輸出が止まる。国内経済混乱へさらなる重圧を加えるに違いない。

 

(2)「東アジア全域をみても安全保障環境は厳しさを増す。北朝鮮は22年に入ってミサイルを相次ぎ発射した。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席した19日の朝鮮労働党の会議で、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開に向けた準備を始めると示唆した。米国の関心がウクライナに向く間に着々とミサイル能力を向上させ、朝鮮半島の緊張を再び高めようと動く。ウクライナ情勢の副作用とみることもできる」

 

最悪事態を想定すれば、北朝鮮も不穏な動きを始める事態になると、完全に「第三次世界大戦」になりかねない。悪い事態を想定すれば、限りない局面が想像できるきな臭さを感じる。こうなると、防衛体制を固めることが最善の道であるが、経済制裁も事前に明らかにする必要があろう。

 

(3)「台湾は、沖縄県の与那国島から110キロほどしか離れていない。中台の軍事衝突が起きれば、日本への影響は甚大だ。日本は米欧各国と協調して中国を抑止する戦略をとる。同盟国の米国に加え英国など欧州各国のインド太平洋地域への関与を促してきた。ウクライナ情勢への対処は一方的な現状変更を試みる相手に日米欧が結束して行動できるかを試す機会だ。足並みが乱れれば台湾問題への対処への不安要素になる」

 

中国が、ロシアのウクライナ侵攻に合せ台湾侵攻に踏み切れば、日本にとって「火の粉」を浴びる危険性が大いに出てくる。さらに、尖閣諸島への同時侵攻を企てられると、米軍はウクライナ防衛を含めて「三面作戦」という最悪事態に陥る。こういう危機を防ぐためにも、日本は、米軍との緊密な連携が不可欠である。

 

この最悪事態が起こったとき、韓国軍はどういう対応するだろうか。多分、「洞が峠」を決め込んで動かないであろう。これは、外交的に見た韓国の地位を決定的に引下げるに違いない。

 


(4)「日本はロシアが14年にクリミア併合を宣言した当時、米欧の制裁路線と一線を画した。米欧が資産凍結や渡航禁止を始めた時点では日本は制裁を発動せず、時間差で徐々に足並みをそろえた。エネルギー分野の技術供与の規制は見送った。当時の安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領との関係を重視した。クリミア併合の年に開催されたソチ五輪に出席して首脳会談を開いた。18年に盛り上がりをみせた北方領土交渉は今のところ結実していない」

 

ロシアと日本の関係が、無傷であるはずがない。一騒動が済んだ後、ロシア経済の悪化が起こっても、日本は米国の手前、支援の手を差し伸べる訳にはいかない。ロシア経済も大混乱は間違いない。

 

(5)「(クリミア併合後)7年がたち中国が軍事力を蓄え、米国と覇権を争うようになった。日米欧の対ロの結束はそのまま対中の抑止力と連動する。岸信夫防衛相はウクライナ情勢に関し「欧米諸国としっかり連携を取りたい」と強調する。日米はウクライナ情勢が緊迫の度合いを増すなかで抑止の隙をみせないよう連携を強める。海上自衛隊は17~22日、沖縄南方海域で空母2隻や駆逐艦3隻を含む米軍の艦艇10隻と共同訓練した。米軍は21年秋にも2隻の空母を投入し、海自や英空母などを交えて大規模な訓練を実施した。山村浩海上幕僚長は「昨年から比較的大きな船と訓練する機会が多かった。日米同盟の抑止力、対処力の強化につながった」と強調する」

 

日本は、戦後最大の正念場を迎える。ロシアのウクライナ侵攻や中国の台湾侵攻が起これば、いかなる経済制裁を行うかを明確にしておくべきである。それが、抑止効果になるからだ。

 


(6)「日米は抑止力の強化とともに中ロが結びつきを強めないか注意を払う。中ロ両軍の艦艇10隻は21年10月、日本列島を一周するように津軽海峡と大隅海峡をそろって通過した。翌11月には両軍の爆撃機が日本海から東シナ海、太平洋上空を共同飛行した。仮に中ロがウクライナと台湾で同時に攻勢をかける事態になれば、米軍は二正面の対処を余儀なくされる。防衛省幹部は「あらゆる事態を想定している」と警戒する

 

下線のように、防衛省幹部は「あらゆる事態を想定している」とするが、日本の軍事力で中ロの動きをけん制するには、限界もあるだろう。経済制裁で、中ロの心臓部を止める強烈な行動計画を明らかにすることが、最善の防衛策になるに違いない。