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日本の地方自治体では事業執行において、政府からの予算手当がしっかりと行なわれ、全国一律の行政サービスが行なわれている。中国では、多くが地方政府の責任(資金手当)で行なわれるという大きな差がある。日本が社会主義で、中国が非社会主義というイメージだ。

 

こうなると、中国の中央政府は何をやっているのか。防衛費の拡充である。不動産バブルで吸い上げた土地売却利益を惜しげもなく投入したことはまちがいない。そのギャップが、地方政府の貧困財政を招いている。国民生活と無縁なことに狂奔していたのだ。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月26日付)は、「中国『共同富裕』の重圧、借金漬け地方政府に」と題する記事を掲載した。

 

中国の地方政府は長年、債務に圧迫されてきた。中国の習近平国家主席が推進する「共同富裕」によって、地方政府は今や一段と大きな重圧にさらされる一方、頼りとする歳入源の一部を失いつつある。富の格差是正を目指す習氏の政策は、主に教育・医療・住宅の「三座大山(三つの大きな山)」にかかる費用高騰に対応するものだ。

 

(1)「中国政府はここ1年、民間教育および不動産セクターの引き締めへ相次ぎ規制措置を導入してきた。同時に、公共教育・医療・住宅の提供拡大を公約に掲げる一方、迫り来る人口動態の問題に対処するため、育児と高齢者介護サービスの供給強化も約束している。高債務を抱える地方政府は、これらのサービスにかかる費用の大部分を負担することが予想される。このため、経済学者はそうした政策推進の実現性を疑問視している」

 


習氏は、共同富裕で「公共教育・医療・住宅」の提供拡大を公約した。だが、その資金手当のメドは立っていないのだ。万事、地方政府が上手くやれという「言いっ放し」である。中央政府は気楽である。

 

(2)「中国経済を研究するダニエル・ローゼン氏は「財政的な理念のつじつまが合わない」と言う。「政府の支払い能力に基づけば、政府が約束するもの全てを手に入れることはできない」。中国政府はまだ、提供サービスの多くについて具体的な内容を提示していない。エコノミストらは、その費用は膨大なものになると予想する。例えば、中国全土で教育機会を均等にするための幅広い取り組みの一環として、民間教育企業に対する新規制が設けられ、その穴を埋めるために学校の教師が所定時間以上に働くよう求められている」

 

公共教育では、塾を廃止したので学校の教師がその穴埋めをさせられる。勤労時間の延長である。

 


(3)「問題は、共同富裕の費用の多くを財政難にあえぐ地方政府が負担していることだ。最新の公式発表によると、省・市・県レベルの政府が、中国の教育・医療・住宅プロジェクトへの財政支出のそれぞれ80%、70%、60%超を賄い、残りが中央政府から出されている。中国南西部のベトナムとの国境にある紅河県では、医師や教師の給与が数百万ドルも未払いになっている。2021年4月に地元議員らが提出した報告書で明らかになった。中央政府と省政府は450万人の県民を支援するため、さらなるサービスを提供すると約束したが、地元政府は非公式な融資経路に頼り、重い債務負担に拍車が掛かったという。「お上が方針を決め、下層がツケを払う現象がまん延している」と報告書は指摘した」

 

省・市・県レベルの政府が、教育・医療・住宅の財政支出では、省(80%)、市(70%)、県(60%超)を賄うという。だが、ベトナムとの国境にある紅河県など貧乏地方政府では、医師や教師の給与が未払いになっているという。日本では考えられない事態だ。しかも、中央政府は破綻した地方政府の再建を援助しないという。こういう地域に住む住人は気の毒である。

 

(4)「共同富裕キャンペーンのはるか以前から、中国の地方政府の財政は不安視されていた。地方政府の当局者は従来、力強い経済成長を実現することで報酬を得てきた。そのため、国内総生産(GDP)目標を達成できるよう、多額の借り入れに依存してインフラプロジェクトに資金を充てるようになった。中国財政局のデータによると、地方政府は2020年末時点で合計4兆ドル(約45兆5590億円)以上の債務を抱えている。これは前年の同時期を20%上回る。エコノミストのみならず中国政府自身も、こうした債務は国家の金融安定性を脅かすとみている。その合計額はひどく過小評価されているとの見方が大勢だ。資金調達手段に多額が隠されたり、別の形でカムフラージュされたりしているとみられている」

 

地方政府は、2020年末で46兆円以上の債務を抱えている。これは、前年の2割以上の増加になる。この債務は、「融資平台」(地方政府の金融部門)関連を含んでいない計算だ。

 


(5)「財政部の徐洪才副部長は12月、中央政府は地方の債務を減らす努力を続けると言明。返済不能に陥った地方政府を救済することはないと改めて強調した。中国指導部はその一方で、過熱する不動産セクターの制御策を並行して実施。地方政府が好むもう一つの資金源である土地売却の道が断たれている。財政部のデータを元にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が試算したところでは、2020年には土地売却が地方政府の自己収入の4割以上を占める歳入源だった。入手可能な直近データである11月には、地方政府の土地売却収入は前年同月比で9.9%減少していた。ゴールドマン・サックスのエコノミストは、今年は土地売却収入が15%減少する可能性があり、この資金ギャップを埋めるには782億ドル(約8兆8400億円)以上の地方債発行が必要になると予想している

 

今年は、土地売却収入が15%以上減少する懸念があるので、約8兆8400億円以上の地方債」発行が必要と見られている。かくして、地方政府の債務が雪だるま式に増えて行くのだ。