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韓国で現在、繰り広げられている大統領選は、政治「お笑い番組」である。候補者が土下座をしたり、不法取材による候補者夫人の「生の声」を放送したりと大混戦である。そこまで泥仕合を行なってもなりたい。それが、韓国大統領ポストである。「おいしい」職業なのだ。大統領独裁が保証されているのである。

 

文大統領は、口を開けば「三権分立論」を唱えている。三権分立論政治の元祖は、米国大統領制にある。司法・立法・行政が完全に独立しており、「チェック・アンド・バランス」が制度的に保障されている。ところが、韓国の三権分立論は米国に似ているが、中身は「大統領独裁」が可能というまやかし制度である。

 


韓国では、「大統領独裁」が実現できる。大統領本人にとって、これほど居心地のいい制度はないのだ。文氏も大統領制の改革を口にしたが、それは一度だけのポーズであった。天国にいるような「快適」なポストゆえに、文氏が本心から変えようと思うはずもなく立ち消えになった。

 

『中央日報』(1月27日付)は、「『誰になっても非好感』、大統領権限の縮小を」と題するコラムを掲載した。筆者は、オ・ビョンサン/コラムニストである。

 

(韓国政治の)問題は「帝王的大統領制」である。大統領が王朝時代の王君のように絶対権力を行使する現行憲法上権力構造が非正常的だ。大統領制の元祖であり教科書は米国である。米国と比較すると韓国大統領制は民主主義の基本原則を超越した権力だ。

(1)「(米国では)強力なリーダーシップを持ちながらも王政のような暴政になってはいけないというジレンマだ。これを解決した妙手は「牽制(けんせい)と均衡」原則であり、これを実現した権力システムが「3権分立」だ。大統領(行政府)・議会(立法府)・大法院(司法府)が権力を共有して互いに牽制し合うという精神が制度に正確に反映されている。例えば議会は、大統領を牽制するために行政府の人事・予算・立法をすべて左右する権限を有している

 

バイデン政権は、目玉政策である「教育・医療・気候変動への対策」が成立の瀬戸際にある。約2兆ドル(約228兆円)の歳出法案だ。一人の民主党上院議員の反対で、バイデン政権「ビルド・バック・ベター(より良い再建)3B法案」が宙に浮きそうである。この例が示すように、与党議員の反対で目玉政策の実現が危ぶまれるほど、「三権分立」が見事に成立している

 

(2)「三権分立論を裏付ける具体論を見ておきたい。第一は人事。長官はもちろん高位公職者に対する任命同意権を有している。公聴会で脱落すれば任命されない。第二、予算。議会が政府予算を事前審議・事後監査する。行政府は主な事業と政策を事前に議会に説明して承認を受けてこそ予算を受けることができる。第三、立法。行政府は法案提出権がなく、議会はすべて法で決めることができる。立法のために行政府は立法府にロビーしなければならない」

 

米国民主主義は、専制主義と異なり時間を掛けて納得しあう政治を目指していることが分る。敢えて、説明するまでもないであろう。

 


(3)「韓国は全く異なる。米国議会が大統領を牽制するために保有している主要権限を韓国大統領は本人がすべて持っている。第一、人事。首相の場合には任命の同意が必要だが、長官は国会が聴聞会で拒否しても大統領が任命を強行すればそれで終わりだ。文在寅(ムン・ジェイン)政府で野党の同意なく任命された長官級は30人を超える。第二、予算。国会の審議を受けるが事実上要式行為にすぎない。国会に実質的な予算決算審議能力がないためだ。予算を十分に監査するためには大統領直属の監査院が国会に移ってこなければならない。第三、立法。行政府に法律提出権があって、必要なら与党議員の名前を借りて提出する「請負立法」も多い。ひとたび提出されれば与党が無条件に通過させる場合が多く、事実上、行政府が立法を主導しているのも同然だ」

 

文大統領は、人事でも強引であった。野党の同意なく任命された長官級(大臣クラス)は30人を超えた。「人権派弁護士」を売にしてきたが、人権無視の「デタラメ政治」を行なった。下線のように、米国議会が大統領を牽制するために保有している主要権限は、韓国大統領本人がすべて持っているという驚くべき仕組みになっている。これなら、「三日大統領をやれば辞められない」筈である。文氏は、外遊も思いのまま実現した。夫人が無類の海外旅行好きであると報じられている。「国費」でその夢も実現した。



(4)「韓国で議論されている改憲の方向性は大きく3つある。1つ目は内閣制。大統領制の問題を根本的に解決できる代案だが容易ではない。内閣制になるにはまだ政権を担当する政党の水準が相変らず低いためだ。
2つ目は分権型大統領制。大統領制を維持しつつ、首相に実質的な権限を大幅に譲り渡すやり方だ。例えば大統領は外治、首相は内政を引き受ける方式だ。この場合、首相は国会で選挙してこそ力を発揮する。事実上、多数党の代表が首相になるが、内閣制的な性格が強い。こちらも政党政治の水準が問題になる。最後に、最も現実的な代案は大統領制を維持して権限を分散する部分修正案だ。例えば人事権制限のために長官まで「国会任命同意」を義務化する。実質的な予算監査のために監査院を国会に移す。政府の法律提出権をなくすなどだ」

 

改憲の方向性は3つある。

1)内閣制(実現困難)

2)分権型大統領制(大統領は外交・防衛の権限。議院内閣制で首相は議会が選ぶ)

3)大統領制の下で権限分散の部分修正(大臣は国会任命制・政府の法案提出権をなくす)

 

朴前大統領は、2)を提案していた。この案は、大統領の権限を大幅に制限する。

 


(5)「改憲が難しい最も現実的な理由は、大統領が率先しなければいけないためだ。朴炳錫国会議長は新年会見で「国会議員の93%が改憲には同意しながらも議論しようというと尻込みする。政権初期は改憲がブラックホールになり、政策路線が薄まるからといってせず、政権末期は大統領選挙に影響を与えるからといってやらない。そのようにして35年間、ずっと先送りしてきた」とし「この大統領選挙が終わったら本格的な改憲議論をしよう」と訴えた。帝王的大統領の権力を縮小する改憲の主導権が大統領本人にあるという点は致命的な欠陥だ

 

文大統領は、退任に当って「レガシー・ゼロ」である。憲法改正案について準備する程度のことを行なうべきだろう。帝王的大統領ポストを最大限に楽しんだのから、「自戒」を込めて書き残しておくべきだ。