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中国は、豪州に対して酷い仕打ちをした。自ら発注した石炭輸入を、豪州との政治的対立を理由に陸揚げさせず、中国の港外に放置させたのである。昨年4月以降のことだ。ところが、昨年10月からこっそりと陸揚げ作業を始めさせたという。ただ、中国からは新たな発注がないので、中国の港に停泊する石炭船の陸揚げが済めば、石炭取引も終了となりそうだ。

 

中国が、豪州産石炭を輸入した最後は2020年11月だった。豪政府が21年3月、新型コロナウイルスの発生源に関する独立調査を求めて以降、中国当局は豪州産石炭などの輸入を禁止した。中国の港では21年10月現在、豪州産コークス約500万トンと一般炭300万トンが理由もなく通関手続きで待たされた。これが、中国の経済制裁である。

 

『大紀元』(1月28日付)は、「中国税関、一部の豪州産石炭に輸入許可 高官『経済脅迫は効かない』」と題する記事を掲載した。

 

中国当局による非公式の豪州産石炭に対する禁輸措置は依然として解除されていないが、昨年第4四半期(10~12月期)において、中国の港で1年以上足止めされていた豪州産石炭約1200万トンの輸入が許可されたことが明らかになった。豪全国紙『オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー』(AFR)が27日、同国の石炭輸出業界関係者の話を引用して報じた。関係者によると、中国から新たな石炭の注文は入っていない。「中国当局の禁輸措置が完全に解除されたわけではないことを意味する」と関係者は示した

 

(1)「昨年第4四半期において、中国当局が輸入を承認した豪州産石炭の量は毎月増加傾向にあった。市場調査会社Fengkuang Coal Logisticsは、中国税関当局のデータを引用し、昨年第4四半期に製鉄用コークス620万トンと発電用の一般炭550万トンの通関手続きが行われたとした。月別で見ると、10月は77.8万トン、11月に267万トン、12月には272万トンとなっている。昨年、中国の豪州産コークスの輸入量は、総輸入量の11.3%を占めた」

 

豪州炭は、品質も良いことから各国から「引っ張りだこ」である。中国は、豪州炭の輸入禁止をしたことから、国際的な石炭価格の上昇に見舞われ、とんだ「貧乏くじ」を引く結果になった。中国は、感情に任せて行なった暴挙によって、自国の首を締めたのだ。豪州側にして見れば、手を叩いて笑ったはずだ。

 


(2)「昨年、豪州政府が新型コロナの発生源をめぐって国際機関による独立調査の必要性を訴えた後、最大貿易相手国である中国は、報復措置として、豪州産の石炭やワイン、ロブスター、牛肉、乳製品などを輸入制限の対象に指定した。豪政府機関、オーストラリア貿易投資促進庁(Austrade)は、同国の農業や鉱業における貿易多様化戦略が功を奏し、中国当局の経済報復に対抗できたとの認識を示した。石炭価格の高騰や他国からの強い需要により、豪州産石炭の輸出量はこれまでの2倍以上に増えたという」

 

中国は、石炭だけを輸入禁止にしたのではない。ワインなどにも制裁を科した。だが、中国に代わる輸出市場が開拓されて、豪州は無傷であった。中国に対して高笑いしたい心境だろう。豪州は、こうした中国の敵意を封じ込めるために昨年9月、「AUKUS」(米英豪)の軍事同盟を結び、新型攻撃型原潜8隻を建艦することになった。中国は、痛い「取りこぼし」となった。AUKUSによって今後、中国封じ込め作戦が展開されるのだ。

 


(3)「ダン・ティーハン豪貿易相は27日、AFRに対し、「より多くの国が豪州に追随して中国に立ち向かおうとしている」と話し、「多くの証拠から(中国側の)経済的脅迫は全く効かないと示された」と指摘した。貿易相は、中国当局の石炭輸入禁止令は中国国内のエネルギー不足を招き、中国人の生活や企業の生産活動などに悪影響を与えたと非難した」

 

中国は、豪州へ傲慢な態度を取って手痛いしっぺ返しをされることになった。自らの意思で輸入先を失うことは、代替輸入先を確保するまでに時間もかかり混乱するもの。中国が、この例に該当するのだ。

 

一般的に、輸出市場を失うのと、輸入先から輸入禁止処分を受けるのでは、どちらが痛手か。輸出は、もともと競争力があるから海外へ進出できるという優位性を持っている。ところが、輸入先を失う(相手国の輸出禁止を含め)ケースは、輸入国にとっては一時的に大きな痛手を受ける。すぐに輸入代替先が見つからないためだ。ましてや、国産化は困難である。

 

前記のような一般論に立てば、中国は豪州に比べてもともと「劣位の関係」にあったのだ。それを、「買い手」という錯覚で優位に立っていると誤解したのだ。中国は、この錯覚を豪州から突かれ、ものの見事に優位関係が逆転した。ゲームを見ているような可笑しさだ。中国は感情論に突き動かされて、合理的な判断ができなかったのである。