世界の工場と言われてきた中国に異変が起こっている。海外の製造業が、続々と工場を閉鎖しているからだ。海外製造業が、中国で直接雇用する労働力だけで4500万人と言われている。間接雇用を含めれば2億人にも達する。それだけに失業問題が深刻化している。
『朝鮮日報』(2月1日付)は、「止まらない製造業の脱中国」と題するコラムを掲載した。筆者は、崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長である。
新年が始まるとすぐ、中国国内の外資系企業による撤退ラッシュが始まりました。世界トップのカメラメーカーであるキヤノンが1月12日、広東省珠海市のカメラ工場の撤退を発表しました。
(1)「キヤノン珠海工場はデジタルカメラ、ビデオカメラ、レンズ、イメージセンサーなどを生産しており、キヤノンの3大海外生産基地の一つです。珠海市内に20万平方メートルの敷地を持つ大規模工場です。一時は1万人を超える従業員が年間13億ドル(約1480億円)の売上高を上げていましたが、現在は従業員数が1000人に満たないそうです」
(2)「最大の理由は、やはりカメラ市場の不振だったでしょう。この工場はスマートフォンの普及で市場が大幅に縮小したコンパクトデジタルカメラを主に生産していたという。キヤノン製品が新疆ウイグル自治区やチベット自治区の少数民族の監視や弾圧に利用されたという指摘が出て、米日政府による撤退圧力もあったといいます」
キヤノンは、自社の3大海外生産基地の一つである珠海カメラ工場を1月12日、閉鎖すると発表した。キヤノン製品が、新疆ウイグル自治区やチベット自治区の少数民族の監視や弾圧に利用されたという指摘が出て、日米政府による撤退圧力があったとも言われている。
(3)「2018年から貿易戦争の始まりで米中の体制競争が本格化し、中国国内の外資系企業は米国発の関税爆弾に直面することになりました。19年には武漢を発端とする新型コロナで中国国内の生産拠点の稼働が中断し、部品調達などに支障が生じました。生産拠点を中国に集中させてきた主要国が生産基盤の一部をインド、東南アジア、メキシコなどにシフトする世界的なサプライチェーン調整が始まりました」
2018年の米中貿易戦争、19年には武漢を感染地とする新型コロナウイルスの蔓延化など、中国を取り巻く状況は厳しくなっている。こうして、生産基地としての中国の役割が再検討され、ASEAN(東南アジア諸国連合)などへの工場移転が始まった。
(4)「脱中国の元祖は、香港の企業経営者たちでした。習近平国家主席が政権を握って以降、中国共産党がこれまでの改革開放路線から離れ、左傾すると最初に判断したのです。香港で最も富豪である李嘉誠・長江和記実業(CKハチソンホールディングス)元会長は2013年から17年まで韓国ウォン換算で17兆ウォン(約1兆6200億円)を超える中国・香港地域の資産を全て処分し、欧州に投資しました。他の香港の財閥も李嘉誠に追随しました。18年に米中貿易戦争が勃発して以降は、韓国、米国、日本、台湾の企業が相次いで東南アジアなどに生産基盤を移しました」
香港で最大富豪とされる李嘉誠氏は、第二次世界大戦後に「香港フラワー」の輸出で巨万の富を築いた人物である。中国本土でも共産党幹部との親交を手がかりに手広く事業を展開した。その李氏が2013年から、突然の方向転換で中国・香港の全事業を売却(終了は2019年)して欧州へ投資したのだ。この離れ技は、見事というほかない。習近平氏の強権体質をいち早く嗅ぎ取ったのだろう。それにしても、地政学的感覚は世界一と言える。
(5)「サムスン電子は19年から20年にかけ、恵州のスマートフォン工場、蘇州の液晶パネル工場とパソコン工場などを閉鎖。昨年にはサムスン重工業が寧波工場を閉鎖しました。ソニー、東芝なども中国工場を閉鎖し、タイなどに生産設備を移しました。米国もスポートウエアのアンダーアーマー、電動工具メーカーのスタンレー・ブラック&デッカーなどが米本土、ベトナム、インドネシアなどに生産拠点をシフトしました。台湾企業による脱中国の動きも加速しています。昨年、台湾企業の対中国直接投資は15%近く減少したといいます。中国にある工場を撤収し、米国、インド、ベトナムなどに生産基盤を移しています」
サムスン、東芝などのIT関連企業が中国工場を閉鎖している。米国のスポーツウエア企業もASEANへ移転した、台湾企業も追随している。人件費アップが大きな理由だ。
(6)「その中でも100万人を超える人を雇用してきた世界最大の電子機器受託生産メーカー、フォックスコン(鴻海科技集団)の離脱は中国にとって痛い出来事です。フォックスコンはそれぞれ数十億ドルを投資し、米国、インド、ベトナム、メキシコに生産拠点を建設しているか建設を計画中です。フォックスコンは20年時点で中国の輸出額の4.1%を占めていた企業であり、雇用だけでなく、中国の輸出にも大きな打撃が予想されます」
台湾企業の鴻海(ホンハイ)は、中国で100万人も雇用してきた。それが、米国、インド、ベトナム、メキシコへ生産拠点を移している。中国にとっては、輸出減・雇用減で最大の痛手であろう。
(7)「中国は、依然として世界最大の製造業国家であり、広大な内需市場を持っています。外資系企業が短期間に中国市場の市場とサプライチェーンを放棄することはないはずです。しかし、脱中国の流れは今後加速する見通しです。毛沢東時代に戻りつつある国でビジネスをするのは不安だからです。李克強首相は20年6月、国務院常務会議で2億人の雇用が懸かった対外貿易分野の企業がコロナによる経営難に陥らないように支援することを指示しました。党内の改革派が、脱中国問題に苦労していることを物語る事例と言えるでしょう。中国国内の外資系企業は、直接雇用規模だけで4500万人に達するとされ、下請け企業まで含めれば、その数はさらに巨大なものになります」
中国では、雇用問題が悩みである。都市労働者だけで5%を上回る失業率(実際は、これよりも高い)である。GDP成長率が、6%以上でなければ失業問題を解決できない状況にあるのだ。


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