a0960_008417_m
   


バイデン米大統領とドイツのショルツ首相は7日、ロシアがウクライナに再侵攻した場合、ロシアに大規模な経済制裁を科す方針を確認した。バイデン氏は、会談後の共同記者会見で、侵攻すれば独ロを結ぶ新たなガスパイプライン計画「ノルドストリーム2」は稼働しないと明言した。

 

ドイツは、ロシアからの天然ガス欲しさにこれまで対ロ制裁で逃げ回ってきた。EUの大国が、率先してロシアの暴力に立ち向かうのでなく、自国利益擁護に奔走し、同盟国を失望させたのだ。今回の一件は、ドイツの身勝手さを強く印象づけている。

 


『日本経済新聞 電子版』(2月8日付)は、「米独、対ロ制裁で一致『侵攻なら、ガス管稼働せず』」と題する記事を掲載した。

 

バイデン氏は、会見でロシアが再侵攻すれば「ノルドストリーム2はなくなる。我々はそれに終止符を打つ。できると約束する」と述べた。ショルツ氏も「我々は団結している。制裁に関しては一致して行動すると明確にしている」と語り、足並みをそろえた。これまでドイツは同計画が民間事業だとして介入を拒んできた経緯がある。

 

(1)「ノルドストリーム2はウクライナを経由せずに欧州に天然ガスを供給する構想で、ロシア依存が深まるとして米国はかねて稼働中止を求めてきた。ドイツがロシアにエネルギーを頼り、パイプライン計画で協力する構図は対ロ制裁で連携する足かせになっているとの見方が多い。米独両政府が2021年7月に発表したノルドストリーム2に関する共同声明で、ロシアがガス停止を武器にウクライナへの軍事圧力をかければドイツが制裁を含む措置を講じると記した。メルケル前政権が結んだ共同声明だが、米政府高官は「ショルツ政権でも拘束力を持った合意だ」とクギを刺す」

 


ノルドストリームは
バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつないだ天然ガスのパイプラインである。2011年11月に稼働を開始したノルドストリーム2は、ロシア国営企業とドイツ、フランスなどの企業が出資する新たなパイプラインである。施設は2021年9月時点で完成したが、稼働に関してはドイツの承認待ちの状態となっている。今回の米独首脳会談では、このノルドストリーム2を稼働させない、としている。

 

ロシアには、天然ガス販売計画が狂う。ドイツにとっても、天然ガス需要期だけに供給不足になる点で負担は大きい。だが、同盟国側の強い圧力で米国の要請を受入れることになった。

 


(2)「ドイツを含め欧州は天然ガス輸入の4割をロシア産に頼る。ロシアが米欧による制裁への対抗措置として欧州向けのガス供給を絞り込む事態も想定される。ショルツ氏は「経済を近代化し、ガスが使われているところを水素に切り替えていく」と話した。エネルギーのロシア依存を低減するためエネルギーの構造転換をめざす意向を示した。バイデン氏は「ロシアはガスや石油を売らなければならない。彼らの唯一の輸出手段が途絶えれば大きな打撃になる」と主張した」

 

米国は、欧州がロシア産の天然ガスに依存しているだけに急遽、調達先の変更をさせるべく、各国へ協力を呼びかけている。日本へも天然ガスの欧州への融通を求められている。在庫が少なく苦悩しているが、応分の負担は不可避であろう。

 

ロシアは、こういう過程で信頼を失えば二度と再び天然ガス需要は戻るまい。領土拡張という20世紀の悪夢に唆されて、自分の首を締めるのだ

 


(3)「米欧はロシアの再侵攻を抑止するため、大規模な金融・経済制裁を科すと繰り返し警告してきた。バイデン氏は「ドイツは世界で最も重要な同盟国の1つであり、両国のパートナーシップに何の疑いもない」と指摘。侵攻すれば「ロシアは大きな代償を払うことになる」と改めて強調した」

 

ドイツは、ロシアへの大規模な金融・経済制裁で協力する羽目になった。これまでは、抜け穴を求めて右往左往して、顰蹙(ひんしゅく)を買ってきたのである。そのドイツが、NATO(北大西洋条約機構)の米兵3万人以上が駐留して恩恵を受けている手前、米国へ「ノー」と言えなかったのだ。こういう結論が出るのは当然である以上、往生際が極めて悪かった。外交感覚がゼロである。何か、韓国に似た部分がある。往年のドイツが見せた威厳はゼロである。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)は、「
ドイツは頼りになるのか、対ロで米同盟国に疑念」と題する記事を掲載した。

 

緊迫するウクライナ情勢を巡り、ロシアに近いドイツを本当に信頼することができるのかとの疑念が米国や同盟国の間でにわかに強まっている。ドイツは伝統的に平和主義の姿勢を貫いているほか、ロシア産ガスに過剰に依存しており、政治・経済面でもロシア政府とのつながりを深めてきた。そのいずれも過去数十年に形成されてきたもので、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の当局者がドイツに懐疑的な視線を向ける要因となっている。

 

(4)「ショルツ首相は米政府からの度重なる勧告にもかかわらず、ロシアがウクライナに侵攻した場合に、問題となっているロシア・ドイツ間のガスパイプラインを凍結するとは公の場で確約していない。しかも、西側諸国が対ロシア追加制裁の発動に踏み切る場合には、ロシア産ガスの購入を継続できるよう、ドイツは例外扱いすら求めていると外交筋は明かす」

 

ドイツ首相は、ウクライナ問題で経済負担を負わぬように逃げ回っていた。万一の場合でも、ロシア産ガスの購入継続を求めていた。NATO同盟国としての責任感がゼロの振る舞いである。この一事を以て、ドイツの「国格」が崩れ去った。

 


(5)「ロシアは、ウクライナ国境沿いに軍部隊を集結させており、ドイツは危機の前線に近い大国として、通常なら他の欧州諸国から指示を求められる立場だ。だが今回のウクライナ問題で、ドイツはできる限り目立たない存在にとどまっていたいとの意向を強く滲ませている。アナレーナ・ベアボック独外相は、ウクライナ危機におけるドイツの役割は金融・外交支援を提供することであり、他のNATO加盟国が軍事支援を行うべきだと発言。NATOの結束を巡り、同盟国から懸念の声が上がった」

 

バルト三国は、ドイツから提供受けた武器をウクライナへ移動させ、防衛力強化に協力したいとドイツの許可を求めた。だが、ドイツは返事を渋っている。ロシアの制裁を恐れたからだ。バルト三国という「小国」が、あえて武器を移してでも対抗したいと「奮起」しているのに、ドイツは経済計算に忙しく逃げ回る。これでは、ドイツを信じる国などあるはずがない。見損なったドイツである。