ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、欧州連合(EU)に対し、ウクライナの加盟を「即時」承認するよう要請した。ゼレンスキー氏は、「新たな特別手順により、EUにウクライナを即時加盟させるよう要請する」と述べた。
一方、EUのフォンデアライエン委員長は2月28日、「ウクライナとはすでに様々な分野で協力関係にある。ウクライナは、将来的にEUへ入ってほしいと思っている」と述べた。ウクライナは2014年以降、親EU政権が続いており、EU加盟を憲法にも明記しているほどだ。
ウクライナ大統領府によれば3月1日、申請文書はすでにEU本部のあるベルギーのブリュッセルに向かっていると明らかにした。このように、ウクライナのEU加盟問題が、「プーチン戦争」による危機打開の手段として浮かびあがっている。
『ロイター』(3月1日付)は、「EU首脳『ウクライナ加盟を討議の公算』紛争解決の切り札か」と題する記事を掲載した。
欧州連合(EU)高官は2月28日、3月の非公式EU首脳会議でウクライナのEU加盟を巡る討議が行われる可能性があると述べた。
(1)「同高官は匿名を条件に、こうした討議はロシアとの紛争の解決に向け重要である可能性があると指摘。ただプロセスはまだ開始されていないとし、先走ることがあってはならないと述べた。この日は、ミシェルEU大統領、欧州委員会のフォンデアライエン委員長、マクロン仏大統領、ショルツ独首相が夕方にパリで会合を開く。同高官は、ウクライナのEU加盟を巡る問題は当然、この会合で取り上げられるとし、3月10~11日の欧州理事会の非公式会合で討議される可能性があるとの見方を示した」
EUは、民主主義を守るという視点からロシア侵攻と戦っているウクライナ国民を見殺しにできない。「仲間」として迎え入れることである。すでに、EUのフォンデアライエン委員長も歓迎姿勢を見せている。
(2)「スロベニアのヤンシャ首相は、ウクライナのEU加盟を「完全に支持する」と表明。チェコのフィアラ首相は、ウクライナがEUに歓迎されていると明確なメッセージを示す必要があると述べた。ドイツのベーアボック外相は、EU加盟は数カ月で行えることではないとしながらも、ウクライナは欧州の一部で、EUは歓迎すると表明。加盟はウクライナをロシアから切り離すEUの意図を示すものではなく、多くのウクライナ国民の意図を反映するものとの考えを示した」
ドイツは、すでに「歴史的転換」を表明した。従来のロシアへの融和的姿勢を改め、防衛意識を高めるというもの。EUが、対ロ政策でなかなか一本化できなかった背景は、ドイツの融和策があった。その障害がなくなった以上、ウクライナをEUへ迎え入れるべきだろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月1日付)は、「『冷戦2.0』突入、ロシア侵攻で世界激変」と題する記事を掲載した。
歴史はゆっくりと動きつつ、ある時点で加速する。ウクライナの戦争は、数日のうちに欧州の安全保障の地勢図を塗り替え、冷戦後の秩序を一変させ、ロシアを再び西側から切り離した。
(3)「ロシアによる侵攻を受け、西側諸国とその同盟国は、空前の対ロ経済制裁を相次ぎ打ち出した。米国と欧州は予想外の結束ぶりを見せつけている。欧州連合(EU)は、ロシアがもたらす真の脅威に何年も及び腰だったが、ここ数十年に見られなかったほど迅速かつ果断に行動している。従来はロシアに対してハト派的だったドイツは、政策を急転換し、ウクライナ防衛のために軍事費の大幅増額と殺傷能力の高い兵器の導入を表明した」
プーチン戦争は、改めてロシアの好戦性に目覚めさせられた。これまで抱いてきたロシアへの「懐疑」が、「確信」に変わったのである。外交だけで戦争を防げない現実を、いやというほど思い知らされた。
(4)「2月24日の(ウクライナ)攻撃は、NATOの新たな同盟諸国がそもそもなぜNATOへの接近を望んだのかを、如実に示している。今後の展開は、ウクライナの動向に大きく左右される。軍事専門家によると、プーチン氏は侵攻に対する西側の反応を過小評価していたかもしれないのと同様に、ロシア軍がウクライナを迅速に制圧する能力も、過大評価していた可能性がある」
プーチン氏の描いていたウクライナ攻略図は、大きな手違いが起こっている。西側諸国が、軍事面と強力無比な経済制裁でウクライナを支援していることだ。西側は、眠った獅子ではなかった。
(5)「専門家は、ロシアの量的・質的な軍の優位性について、当初想定していなかった状況の深刻化に見舞われる可能性はあるが、なお勝利を収める公算が大きいとみている。だが、西側の防衛軍備と何千人もの市民ボランティアに助けられたウクライナ軍の反応は、ロシア軍を複数の前線で後退させた。前進が止まったことで、ロシア軍を妨げている物流やその他の問題も明らかになった。2014年にクリミアを併合して以降のプーチン氏の行動は、それまであまり目立たなかったウクライナの国家意識を喚起している」
2014年以降、プーチン氏の見せた傍若無人の振る舞いが、ウクライナに強い国家意識を育んだ。同時に、西側諸国もここで立ち上がらなければ、独裁者の蹂躙を許すという危機感がロシア軍の進撃を遅らせている。「歴史はゆっくりと動きつつ、ある時点で加速する」という現実が、ウクライナで起こっているとみるべきだろう。
このことは、中国についても言えることだ。南シナ海を占拠する行動を手始めに、領土拡大を狙っている。世界が、じっとその振る舞いを観察中である。ある時点で、その暴挙を食止める動きが表面化するはず。そのことを忘れてはならない。


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