ロシアは、ウクライナに「無条件降伏」を迫るために無差別攻撃を行なっている。これにより恐怖を植えつけ、ウクライナ側の戦意を喪失させ、降伏を迫るねらいである。シリア内戦で駆使した手法と類似しており、深刻な人道危機を引き起こす恐れが強まってきた。
ウクライナは、無差別攻撃を受けながらも戦意は高い。西側諸国が、支援を強めているから「戦い抜く」という決意を固めている。米国は、ポーランド保有のロシア製軍用機をウクライナへ提供する代わりに。Fー16戦闘機をポーランドへ供与する、「三角バーター」を検討している。
『ブルームバーグ』(3月6日付)は、「米国とポーランド、ウクライナへの軍用機提供を検討-ホワイトハウス」と題する記事を掲載した。
米国は、ロシアの侵略を受けているウクライナ向けに他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国が、軍用機を提供できるかどうかを巡り、ポーランドと協力して取り組んでいる。ホワイトハウス報道官が明らかにした。
(1)「こうした考えは、NATOに加盟している幾つかの東欧諸国が拒否していたが、ウクライナのゼレンスキー大統領が5日に行った米上下両院の300人近い議員とのビデオ電話で取り上げた。電話協議後、米議員の何人かが軍用機の提供を支持すると述べた。ウクライナ軍の操縦士が訓練を受けているロシア製の軍用機が提供される可能性がある」
ウクライナは、数少ない軍用機はロシアとの「決戦」に備えて温存している。僅かに、トルコ製の無人機で攻撃する程度だ。軍用機の提供を受ければ、戦況を立て直してロシアの無差別攻撃の曝される危険性も減る。喉から手が出るほど、軍用機が欲しいところだ。
(2)「ホワイトハウス報道官によれば、ポーランド軍が保有機の中からウクライナに戦闘機を引き渡す可能性があり、バイデン政権はその代替機の手配を検討している。報道官は、ポーランドが決定すると指摘し、同国から軍用機をどのようにしてウクライナに移送するかなどの課題があるとも説明した。事情に詳しい関係者の1人は、ウクライナに運ばれる軍用機の代わりとして、F16戦闘機がポーランドやスロバキアなどの国に送られる可能性があることを明らかにした」
ドイツが、ウクライナに提供したミサイルは「旧ソ連製」である。これだと、ロシアも目くじら立てられないという計算が働いている。これと同様に、ロシア製軍用機がウクライナへ提供されれば、ロシアは苦笑いするほかあるまい。ポーランドが、所有するロシア製軍用機をウクライナへ提供すれば、その穴を米国のF―16で補ってくれるという案である。
F―16は、4500機以上製造され、世界20ヵ国以上の空軍が採用している。米国空軍向けの生産は終了しているが、海外では新規に採用する国があるため、輸出向けとして改良型の生産が続いている。こういうベストセラー機が、ポーランド空軍に渡れば、悪い話ではない。他の国々でロシア製軍用機を保有していれば、この際こぞってウクライナへ移譲したいであろう。
(3)「民主党のシューマー上院院内総務は、「東欧諸国にはウクライナにロシア製の軍用機を提供」してほしいとゼレンスキー大統領が強く訴えたとする声明を発表。「こうした軍用機は極めて必要だ」と主張し、バイデン政権に働き掛けると表明した」
旧ソ連領に組入れられていた東欧諸国には、ロシア製軍用機が保有されているはず。それらが、F-16とバーターされれば、これほど有利な取引もない。
(4)「ウクライナのクレバ外相は5日、ポーランド国境沿いでブリンケン米国務長官と会談した際、「われわれに最も必要なのは戦闘機と攻撃機、防空システムであることは周知の事実だ」と記者団に述べた。米議会側とのビデオ電話で、ゼレンスキー大統領は追加武器支援の約束を取り付けたが、ウクライナ上空にNATOの飛行禁止区域設定を求める訴えには難色が示された。NATOと米政府は、飛行禁止区域を設定すればロシアとの戦争に突入するリスクがあるとしている」
米議会は、追加武器支援では積極的である。だが、飛行禁止区域設定には二の足を踏んでいる。ウクライナ上空を、NATOの飛行禁止区域に設定すると、プーチン氏が「宣戦布告」であると力んでいるからだ。米国とNATOは、戦線拡大のリスクを抱えるだけに慎重である。
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