テイカカズラ
   

ロシアによる無差別攻撃で、ウクライナ国民は避難せざるを得なくなっている。すでに、出国した人々を含めれば、1000万人が生活の基盤を奪われている。日本へは70人の人々が在日の親族を頼り入国した。

 

ウクライナ侵攻では、ロシア正教会がプーチン氏の侵略行為を正当化しており、多くの波紋を呼んでいる。ウクライナには4000万人のロシア正教徒がいるとされる。ウクライナ国民にとって、この侵略戦争が正教会によって「聖戦」とされるならば、いったいどこへ精神的な救いを求めれば良いのか。二重の苦しみに押しつぶされている。

 

『日本経済新聞』(3月20日付)は、「ウクライナ避難民 1000万人迫る」と題する記事を掲載した。

 

ロシアが侵攻したウクライナで人道危機が深まっている。国連機関は18日、ウクライナ国内で避難生活をしている住民が推計650万人にのぼると発表した。国外への避難民とあわせると1000万人に迫る。総人口の5人に1人以上にあたり、さらに1200万人以上が攻撃で退避を阻まれているという。

 

(1)「英BBCは18日、南東部マリウポリを包囲していたロシア軍が中心部に入り、市街戦になっていると報じた。ロシアにはアゾフ海に面したマリウポリを掌握し、海上輸送路を絶つ狙いがある。ウクライナ軍参謀本部は18日にアゾフ海への接続を「一時的に奪われた」と明らかにした。首都キエフ市は同日までに民間人60人を含む222人が死亡したと発表した。英国防省はロシアが戦略転換を迫られ「消耗戦」に移ったと分析する」

 


ウクライナ南東部のマリウポリが、ロシア軍の侵攻で市街戦になっている。ロシア軍が消耗戦へ突入したと分析される。こうした状況では、双方で人命の損失が激増するだけに早期停戦が求められる。

 

(2)「ウクライナのゼレンスキー大統領は19日のビデオ声明で「対話はロシアが過ちによる被害を減らす唯一の手段だ」と述べ、即時の和平協議を促した。BBCはトルコ高官の話として、ロシアのプーチン大統領がゼレンスキー氏との会談に意欲を示したと伝えた。停戦条件を巡る双方の主張は隔たり、攻撃による被害は拡大している。ゼレンスキー氏は「ロシア軍による当初の占領計画は失敗した」と述べた。いま対話を始めなければロシアの損失が膨らみ、数世代にわたり悪影響が及ぶと訴えた。同氏は侵攻前からプーチン氏に直接協議を求めていたが、ロシアは応じてこなかった」

 

ウクライナ大統領は、ロシア大統領に対して直接協議を求めている。市街戦による被害が甚大であることから、早期の直接協議が必要になっているのだ。

 


(3)「ロシアは駆け引きを続けている。BBCによると、プーチン氏は17日のトルコ大統領との電話協議で、侵攻を止める条件にウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟断念や中立化の確約、ロシアに脅威を与えない形での「非武装化」などを挙げた。直接会談での決着に前向きな構えも示したという。交渉の長期化も懸念される。ウクライナ政府高官は18日、和平協議は数週間以上かかる可能性があるとの見解を示した。米ブルームバーグ通信が報じた。ロシアの対話姿勢が時間稼ぎにすぎないとの見方もある」

 

侵略者のロシアが、「無条件降伏」を求めるとは、なんとも不条理な話である。こうした事態の裏には、ロシア正教会がプーチン氏に「正義の御旗」を与えているという事情がある。無辜の民を地獄へ落とす戦争を容認する、ロシア政教とは「何者か」。

 


『ロイター』(3月20日付)は、「ウクライナ侵攻による正教会の混乱、孤立するロシア総主教」と題する記事を掲載した。

 

ロシア正教会のキリル総主教が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えたことで、世界中の正教会は分裂の危機に陥り、専門家から見ても前代未聞の反乱が正教会内部で生じている。

 

(4)「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるキリル総主教(75)は、今回の戦争について、同性愛の受容を中心に退廃的であると同師が見なす西側諸国への対抗手段であると考えている。キリル総主教とプーチン大統領を結びつけるのは、「ルースキー・ミール」(ロシア的世界)というビジョンだ。専門家の説明によれば、「ルースキー・ミール」とは、旧ソ連領の一部だった地域を対象とする領土拡張と精神的な連帯を結びつける構想だという」

 


ロシア正教会は1054年、キリスト教が東方教会と西方教会に大分裂して以来の歴史を持つ。そのロシア正教会の総主教が、プーチン氏の盟友とされるのだ。総主教は、ウクライナ侵略を聖戦として認めるという、卒倒しそうな「教義」である。イエス様は、嘆き悲しんでいるに違いない。

 

(5)「プーチン氏にとってはロシアの政治的な復権だが、キリル総主教から見れば、いわば十字軍なのである。だが総主教の言動は、ロシア国内にとどまらず、モスクワ総主教座に連なる諸外国の正教会においても反発を引き起こしている。ロシアでは、「平和を支持するロシアの司祭」というグループに属する300人近い正教徒が、ウクライナで行われている「非常に残忍な命令」を糾弾する書簡に署名した。この書簡には、ロシア政府とウクライナ政府の板挟みになっている数百万もの人々に触れ、「ウクライナの人々は、銃口を突きつけられることなく、西からも東からも圧力を受けることなく、自らの意思による選択を行うべきだ」と書かれている」

 


ウクライナ正教会は、
モスクワ総主教の庇護下にある。だが、財政的には完全に独立し、大幅な裁量を持つ自治を行ってきた。在外ロシア正教会は2007年、モスクワ総主教の庇護下で自治正教会に準ずる扱いを受けることになった。ただし2018年、ウクライナ正教会が、ロシア正教会からの独立をめぐって交渉が決裂したままだ。こうした、正教会をめぐる紛争が、プーチン氏によって利用され侵略を容認されるという事態を招いている。天上のイエス様から見れば、地上の教会の争いが政治に利用されている現実に、さぞや嘆き悲しんでいるであろう。「天罰」はどちらに下るのか。