2月24日の未明に始まったロシアのウクライナ侵略は、早くも1ヶ月になる。ロシアは、制圧地域を広げられず戦死者だけが増える、予想もしなかった事態に陥っている。今後、プーチン氏はどうするのか。化学兵器を使うのでないかと警戒されるている。
『日本経済新聞 電子版』(3月23日付)は、「ロシア、侵攻1カ月で戦況膠着 制圧地域拡大せず」と題する記事を掲載した。
ロシアがウクライナ侵攻を始めてから24日で1カ月となり、戦況は膠着し始めている。首都キエフを数日で制圧する「短期圧勝シナリオ」は補給体制の不備やウクライナ軍の強い抵抗で崩壊し、制圧地域もほとんど広がっていない。戦闘の継続で、双方とも死傷者が拡大し、戦力の喪失も大きくなっている。人道危機も深刻さを増している。
(1)「米国防総省はロシア軍が10日以降、キエフ近郊ではほとんど前進していないと分析する。ウクライナ軍は22日、キエフ西方の地方都市マカリフを奪回したと発表した。米戦争研究所が22日時点でまとめたロシア軍が支配・侵攻する地域はウクライナ全体の4分の1程度で13日と大きな変化はみられない。ウクライナ軍は、ロシアの黒海艦隊から入手した機密文書をもとに、ロシアは2週間程度で侵攻を完了する計画だったと主張。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、ロシア軍がキエフを2日以内に陥落させる段取りを描いていたと暴露した」
ロシアのウクライナ侵略は、「2週間程度で完了計画」であったという。とんだ誤算をしている。ロシアの年間国防予算は600億ドル(約7兆2600億円)以上。対するウクライナはわずか40億ドル(約4800億円)余りだ。この差からみても、簡単にひねり潰せると見ていたのだ。西側職国が、ウクライナを支援するという計算をしていなかったのだ。
(2)「米国防総省高官は22日、記者団に対して侵攻停滞の理由について燃料や食料の補給が依然としてスムーズに進んでいないと指摘した。スコット・ベリア米国防情報局長は8日、ロシア軍の死亡者を2000~4000人と推計した。20年間のアフガニスタン戦争で命を落とした米兵は2461人とされる。軍事サイト「Oryx」によると、ロシア軍の戦車や装甲車の損失は22日時点で800台超とウクライナ軍の3.5倍にのぼり、対地・対空ミサイルも約140と同6割多い。
ロシア軍は、開戦間もなく首都キエフ近郊のホストメル空港に戦闘ヘリコプターで攻撃を仕掛けた。だが、ウクライナ軍の猛攻撃に遭遇して、空挺師団の指揮官が戦死する羽目になった。このためロシア軍は、空路を確保できず、兵員や装備、物資の補給で危険な陸路に頼らざるを得なくなった。ロシア軍は、制空権を奪えなかったことが最大の誤算である。
(3)「米政権の推定で、ロシアは侵攻までに15万~19万人の兵力を国境付近に集めた。弾丸や燃料、食料など兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続く。世界銀行によると、ロシアの2020年の軍事支出は約617億ドルで戦費負担も軽くはない。元米軍高官のベン・ホッジス氏は米欧の経済制裁が効力を発揮し、今後戦費調達が苦しくなることなどもあり、ロシア軍は激しい攻勢を長くは続けられないと分析する」
ロシア軍は、兵士1人の維持にかかる費用を1日1000ドル(約12万円)と仮定すれば、1日に1.5億~2億ドルの支出が続くと推計している。だが、英国では桁違いの1日250億ドル以上と見ている。1日に1.5億~2億ドルは、歩兵1人当たりの「生活費」の合計という意味であろう。ロシア兵の装備は不完全で、凍傷にかかる者も出て戦線を離脱しているほど。安価な装備で出撃させたのだ。
ロシア兵の士気は「極めて低い」と言う西側当局者がいる。別の政府関係者は、ロシア兵はそもそもベラルーシとロシアの雪の中で何週間も待機させられた挙句に、侵略を命じられたので、「凍えているし、くたびれて、腹を空かせている」のだと話した。以上は英『BBC』(3月23日付)が報じた。
(4)「地上部隊の苦戦を受け、ロシア軍は都市部への多数の砲撃などでウクライナの抵抗力をそぐ方針に転換している。特に南東部の港湾都市マリウポリでは避難所や商業施設などへの無差別砲撃を繰り返し、深刻な人道危機が発生している。国連によると、これまでにウクライナで少なくとも953人の一般市民が死亡した。実際にはこの人数を大幅に上回るとの見方が多い。1000万人超が国内外で避難生活を強いられている」
戦線の膠着は、ロシア軍の無差別攻撃を招くので、人命の損傷危機が高まる。これを早く止めるには、さらなる経済制裁しかないのだ。ロシア経済は、これから「大きな代償」を払わされる番である。
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