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米国が3月23日(現地時間)、ロシアのプーチン大統領へ先手を打った。核攻撃や化学兵器・生物兵器の使用を封じるべく、ロシア軍の非人道的攻撃を国際法による「戦争犯罪」であると宣言したのだ。

 

戦争犯罪とは、戦争における国際法に反する行為である。第二次世界大戦以前より認められてきた法規で、戦時法規の違反者が敵国にとらえられた場合に処罰された。第二次世界大戦後には、平和に対する罪と人道に対する罪が戦争犯罪に加えられた。

 

米国が、ロシア軍の行為を戦争犯罪であると宣言した以上、国際法によって訴えられることになった。ロシア軍としては、大きな汚名を着せられたもので、ますます大義のない「集団殺人行為」として告発される。

 


米『CNN』(3月24日付)は、「米、ロシア軍の行為は『戦争犯罪』 公式に宣言」と題する記事を掲載した。

 

米政府は23日、ロシア軍がウクライナで戦争犯罪を犯したと公式に宣言した。ブリンケン国務長官が声明で発表した。ブリンケン氏は「我々の評価は公表された、また情報機関のソースからの入手可能な情報の精査に基づいている」と述べた。これまでブリンケン氏やバイデン大統領、シャーマン国務副長官は個人的意見として戦争犯罪が発生したとの見解を示していた。

 

(1)「米政府はこの数週間、ウクライナの市民に対する攻撃を戦争犯罪と公式に表明しておらず、今回の正式な非難は大きな一歩となる。ただ、戦争犯罪に加担した疑いのある者やプーチン大統領個人に責任を負わせられるかは不明。バイデン氏は先週、プーチン氏は「戦争犯罪人だと考える」と発言していた」

 

バイデン米大統領は、プーチン氏を「戦争犯罪人」と呼んできた。今回のウクライナ侵略を指揮したのはプーチン氏である以上、最終責任を負うべきである。東京裁判では、東条英機(元首相)らが最終責任を問われた。このケースから言えば、プーチン氏も同じである。

 

(2)「ブリンケン氏は23日、「最終的には、この犯罪に管轄権のある裁判所が個別の事件で刑事犯罪を決定する責務を担う。米政府は戦争犯罪の報告の追跡を続け、必要に応じて同盟国やパートナー、国際機関や組織に情報を共有する」と述べた。ブリンケン氏は集合住宅や学校、病院の破壊を含む、無差別攻撃や故意に市民を狙った攻撃に関する「信頼できる報告」があると言及した。国務省は特にウクライナ南部マリウポリの産科病院と劇場への攻撃に触れ、劇場には「子どもたち」というロシア語の言葉が空から見える状態で記されていたと指摘した」

 

ロシア軍の無差別攻撃は、「戦争犯罪」そのものである。厳しく罰して,再発を防がなければならない。米国のバンシャーク国際刑事司法担当特使は、米国がどの件について戦争犯罪と評価したのかについて詳細には踏み込めないとしたうえで、米国が「ロシア軍の関与を広範囲に見ている」と述べている。

 


(3)「ブリンケン氏は、プーチン氏が軍の行為に関して責任を負うかとの質問に、「指揮系統を上へとあがることが可能な国際法や国内法の理論がある」と答え、報告の追跡を続け情報共有を行うと語った。また、将来の説明責任のために証拠を収集し保存しておくことが不可欠だとの認識も示した」

 

東京裁判における東条英機らへの死刑判決は、軍の行為に関して最終責任を負わせた例である。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月24日付)は、「プーチン氏参加ならG20お断り=キャメロン元英首相」と題する寄稿を掲載した。筆者は、デービッド・キャメロン氏である。2010~16年に英首相を務めた。

 

「米大統領閣下、バリ島へようこそ。夕食会であなたとご一緒するのは、大量殺人を行った戦争犯罪人のウラジーミル・プーチンです」。今われわれが行動しなければ、今年10月にインドネシア・バリ島で開く主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、こうしたシーンが展開されることになる。

 


(4)「私には、次のような米英政府からの反対の声が聞こえる。「G20はわれわれの所有物ではなく、対話の場は重要だ」。確かにその通りだ。しかし、G20の会議は、権威と尊敬の念を示すものでもある。ロシアのプーチン大統領がウクライナで既に行ったこと、今行っていることを見れば、G20がこうした場になるとは考えられない」

 

中国は、ロシアをG20から排除することに反対している。有力な仲間が排除されれば、「徒党」を組む相棒がいなくなるからだ。

 


(5)「過去1カ月間にわれわれが目にしてきたのは、これまでとは別次元の状況だ。独立した民主主義の主権国家に対し、第2次世界大戦と同様の残虐さで全面侵攻したのだ。そして2014年にわれわれは、プーチン氏の当時の行為を理由に、ロシアを主要8カ国(G8)の枠組みから排除した」

 

ロシアが、ウクライナを「同じ民族が反ロシア行為をするから侵略する」とは許しがたい行為である。主権国家の存在を無視した暴挙であり、戦争犯罪に該当する。ロシアは2014年、クリミア半島侵略でG8から追放されている。

 

(6)「『同じ考えの国々がボイコットしたとしても、G20は中止にならない。われわれの声が届かなくなるだけだ』。だから、今始めるべきなのだ。米国と英国が先制的に発表すれば、大きなインパクトがあるだろう。欧州連合(EU)およびG20に加盟するEU諸国(ドイツ、フランスとイタリア)と協力して発表できればなお良い。プーチン氏が現状のまま居座り、戦争を続けているとしたら、カナダ、日本、韓国やオーストラリアが出席するとは思えない。ここまでの国々で、G20の国内総生産(GDP)の約3分の2、世界のGDPの半分以上を占める。われわれの外交官には、アルゼンチン、ブラジル、インド、メキシコ、サウジアラビアと南アフリカ共和国の説得にあたるよう指示すべきだろう」

 

ロシアによる今回のウクライナ侵略は、クリミア半島侵略以上の犯罪行為を行なっている。G20からの追放が当然である。こういう侵略常習国が、G20へ平然として出席することは許されないであろう。