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露のウクライナ侵略理由

中ロ朝一体化する危険性

中国は露と関係強化狙う

中ロに利用された文外交

 

今年1月まで、韓国の文大統領は、朝鮮戦争の「終戦宣言」を主張してきた。南北交流促進には、これがぜひとも必要という立場である。北朝鮮が、着々と核やミサイルの開発を続けていることを知りながらの提案だ。これに対して、そのような環境が整っていないので、米国や日本は反対した。ロシアによるウクライナ侵略の厳しい現実を見れば、文氏の外交感覚はいかに現実離れしているかが分る。大学生並の理想論である。

 


2月24日、ロシアのウクライナ侵略が始まり、中国は暗黙の承認を与えて国連安全保障理事会で「戦争反対」の意思表示をしなかった。「棄権」に回ったのだ。さらに、北朝鮮によるミサイル発射実験に対し米国の制裁強化案に対し、中ロが揃って反対に回った。ここに、中ロ朝三ヶ国は世界秩序挑戦で歩調を合わせていることが明らかになった。

 

こうした事態の変化を受けて、韓国の安全保証問題がにわかにクローズアップされている。「終戦宣言」問題どころでなく、朝鮮戦争を始めた「悪役三国」(旧ソ連・中国・北朝鮮)がそろい踏みで再登場してきたのである。

 


文大統領は、北朝鮮の軍事的な暴走を食止めるに、中国やロシアの「ブレーキ」役に期待してきた。だから、文政権は中ロのなかでも中国に対して「平身低頭」する屈辱外交を続けた。具体的には、後で取り上げる「三不政策」である。韓国の自主防衛権を半ば、中国へ移譲するような独立国にあるまじきことを行なったのだ。

 

露のウクライナ侵略理由

ロシアのウクライナ戦争によって、中ロ朝の悪役三国の存在が今なお、韓国の安全保障にとって危険な存在であることを立証した。それは、ロシアによるウクライナ侵略の理屈付けの中に明らかにされている。

 

1)ロシアは、ウクライナやベラルーシーとともにスラブ民族であり統一されて当然である。

2)ウクライナが、NATO(北大西洋条約機構)へ加盟することは、ロシアの安全保障上において重大な懸念要因となる。

3)ウクライナ政権は、ネオナチズムであるから打倒すべきである。

 


ウクライナ政府は、民主的手続きによって選ばれた政権である。その政権に対して、ロシアが勝手な理屈をつけて侵略戦争を仕掛けるとは、21世紀の現在において許される行為ではない。こうした不法行為に対して、中国は「反対」の意志を示さずヌエ的な行為である「棄権」で逃げたのだ。この振る舞いを見ると、北朝鮮が韓国へ攻め込んできても、北朝鮮の行動を抑制する期待はゼロであろう。むしろ、朝鮮戦争時と同様に、後に参戦する危険性さえある。

 

ロシアが、ウクライナへ侵攻した「屁理屈」は、朝鮮戦争時と全く同じであることに気付くべきである。それは、次のような理由である。

 

1)南北朝鮮は朝鮮民族であり、第二次世界大戦の結果、無理矢理に分割統治された。

2)韓国が米国の占領下で右傾化しており、北朝鮮の安全保障に重大な懸念をもたらす。

3)韓国政府は、米帝国主義に隷属しているから打倒されるべきである。

 


前記の要因は、現在の韓国政府の外交方針の基底とも繋がっている。米国を暗黙裏に「帝国主義」と位置づけ、中ロ朝は人民の利益を基本とする「民主勢力」と評価しているのだ。文大統領が、はじめて中国を訪問した際の挨拶は、国辱ものと言われるほど、中国を宗主国として崇める内容であった。韓国進歩派が、リベラル主義でなく民族保守主義である、と見る私の見解には、こういう背景があるのだ。

 

中ロ朝一体化する危険性

中ロ朝に共通しているのは、「反米主義」である。米国を中心とする世界秩序を破壊して、権威主義(全体主義=ファシズム)によって世界秩序を再編成したいという野望が突出している。だが、経済基盤は全くの脆弱である。とても、西側諸国を圧倒するほどの能力がないのだ。それゆえ、焦りが生まれて暴走する危険性が高まる。ウクライナ侵略は、そういう一面を現したと言える。

 


欧州では、ロシアの侵略的危険性を10年以上にわたり警鐘を鳴らしてきた国がある。それは現在、ウクライナ避難民の受入れ口になっているポーランドだ。NATO(北大西洋条約機構)において、ロシアの危険性を訴えてきたが、どこの国もそれをまともに取り上げようとしなかった。ウクライナ侵攻によって初めて、ポーランの主張がいかに正しかったかを、嫌と言うほど知らされた国がドイツである。

 

ポーランドは、長い歴史の中で得たロシアの帝国主義に、何回も苦しめられた経験を持っている。それが、ロシア警戒論の基本にある。

 

ポーランドやバルト三国にとって、ロシアへの警戒感はロシアの侵略と戦ってきた歴史から生まれたものである。ロシア帝国は、1790年代にポーランドの一部を併合した。ポーランドが完全な独立国となったのは、第1次世界大戦後のことである。その直後、ソ連赤軍の侵攻を受けたものの、何とか反撃し、ロシア革命が西に広がるのを阻止した。

(つづく)