中国は、ロシアとウクライナに深い関係を持っている。特にロシアへは、「限りない友情」という共同声明を発表するほど入れ込んでしまった。こういう、「軽率」な対ロ外交が災いして、ウクライナ侵攻に対してロシア寄り姿勢を取らざるを得なくさせている。
ウクライナは、こういう中国に対して二度目の仲裁要請を行なった。結果は、中国の禅問答のような意味不明な言葉で逃げられた。
『日本経済新聞 電子版』(4月5日付)は、「中国外相『仲裁は明言せず』ウクライナ外相と電話協議」と題する記事を掲載した。
中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は4日、ウクライナのクレバ外相と電話協議した。中国外務省によると、王氏はロシアとの停戦協議を促したうえで「客観的で公正な立場からわが国のやり方で建設的役割を果たしたい」と述べるにとどめた。仲裁には言及しなかった。
(1)「両氏の電話協議はロシアのウクライナ侵攻後、2回目。前回はクレバ氏が中国に仲裁を求めたが、このときも王氏は明確な返事をしなかった。今回の協議でクレバ氏は「中国の国際的影響力を重視している」と発言した。「中国と意思疎通を保ち、中国が停戦のために重要な役割を果たすよう望む」と求めた。王氏は「中国は対岸の火事として見る心境にはなく、火に油を注ぐこともしない」と話した。米欧では中国がロシアに軍事物資を提供したり、制裁逃れにつながる経済支援をしたりするとの疑念がぬぐえない。こうした観測を打ち消す狙いがあるとみられる」
下線部分では、中国がロシアへ軍事物資を送らないことを示唆している。これによって、米国からの経済制裁を受けぬように警戒している。だが、ロシアとの間で「限りない友情」を誓った手前、反ロシア的な外交も行えないというジレンマに陥っている。
(2)「中国は、単独でロシアとウクライナの仲裁に乗り出すことに慎重だ。今年の秋には共産党幹部の人事を決める5年に1度の党大会を控えている。失敗すれば習近平指導部のメンツに傷がつきかねず、火種を抱えたくないとの思惑がある」
中国は、ウクライナ侵攻の結果が見えたところで、他国と一緒に仲介へ向けて動き出すと予想されている。中国国内向けに、あたかも習氏の力で和平が成立したというポーズを取りたいのであろう、と推測されている。
このような、中国の「洞が峠」的な姿勢は、西側諸国にどのように映るか興味深い。中国が、ロシアと交わした「限りない友情」について、考え直しているのでないかという見解を紹介したい。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月7日付)は、「ロシアとの『限界ない友情』、中国が再考」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と共通の大義を掲げるに至るまでの数カ月間、ある国に焦点を合わせていた。それはウクライナではなかった。習氏がプーチン氏との協調を目指す主な目的は、対米国で統一戦線を張ることにあった。中国当局者や同国政府の外交政策顧問、声明や公の発言の分析によると、その結果が、両国の友情には「限界はない」とした2月4日の中ロ共同声明だった。
(1)「ロシアが隣国に侵攻したことで、中国は外交政策の調整を余儀なくされている。ただそのやり方は、米国を中心とする西側諸国との関係を損ない、自らを責任ある世界のリーダーとして印象付ける長年の取り組みが水の泡となる危険をはらんでいる。中国に多大な犠牲を強いる可能性のある動きの波及効果が今、中国政府内に浸透し始めていると当局者や顧問は話す。特にウクライナへの攻撃によって、ロシアが世界でおおむね孤立しつつある今、他国との関係を犠牲にしてロシアに接近することの影響を警戒していると話す当局者もいる」
中国は、世界でロシアが孤立している状況で、あえて接近することで被るリスクを警戒し始めている。中国がロシアへ接近すれば、中国も「悪者」にされるからだ。
(2)「米国から欧州連合(EU)まで多くの地域の政治家が既に、中国とロシアを新たな「枢軸」としてひとくくりにしている。この言葉は、西側の同盟が中国から離れ、(西側が)互いに緊密な関係を築くさらなる理由を与えるものだ。国際関係を専門とする米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家であるジュード・ブランシェット氏は、「ウクライナ侵攻前夜にロシアとの提携を強化したことは、習の外交政策上の大失策だった」とし、「その代償は中国にとって非常に大きいものであり、習の限界を露呈している」と述べた」
下線のように、ウクライナ問題は中国にとって大きな外交的な失点になっている。2月4日という時点で、中ロ共同声明を発表したのは、中国がウクライナ侵攻に「お墨付き」を与えたような印象を与えているからだ。現に、米国一流紙でそういう報道が現れている。これは、見間違っている。中国には、そのような意図はなかった。
(3)「中国が次にどう出るかは、習氏はプーチン氏との協力関係を維持し続ける可能性も高い。中国は、米国との関係が改善される見込みはほとんどないとみており、完全な同盟国ではないにせよ、最も重要な戦略的協力国としてロシアをそばに置いておく必要があるためだ。しかし、それは中国に一段と困難な外交的立場を取り続けさせることになる」
中国が、対抗する相手は米国である。ロシアを、仲間にしたいだけである。そのロシアが、イラクで侵略戦争を始めて中国まで疑われている。これが、偽らざる現状である。
(4)「習氏の目的の一つは、中ロのパートナーシップのためのイデオロギー的な基盤を築くことにあったと当局者や顧問は話す。当局者や顧問によると、2月4日の共同声明で両国の友情に「限界はない」という文言――西側では危惧を持って受け止められた――を含めることを提案したのは中国だった。その意図するところは、戦争になった場合に中国はロシアの味方に付くと宣言することよりも、増大していると見なす米国の脅威に立ち向かう両国の決意を米国に知らしめることにあったと当局者は話す」
中ロ共同声明における「限りない友情」は、習氏の提案であるという。その意味するところは、対米外交において共同歩調を取る「誓いの言葉」だ。ロシアは、これを悪用してウクライナ戦争を始めたのである。まさに「呉越同舟」であったのだ。


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