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ロシア黒海艦隊旗艦「モスクワ」が、ウクライナ軍のミサイル攻撃2発を受けて沈没した。ロシアは、火災事故後の曳航中に嵐に遭い沈没したと隠蔽している。米国は、ウクライナ軍のミサイル攻撃であったと認めた。「モスクワ」沈没の現場写真によれば、天候は嵐でなく快晴であった。

 

中国が、この一報に接して酷く落胆しているという。前記「モスクワ」が、黒海造船所で建艦されたことにある。実は、中国の空母第一号「遼寧」は、ウクライナから「スクラップ」名義で購入して改修した経緯がある。建艦場所は黒海の造船所であり、「モスクワ」と同じ構造でないかと怯えているのだ。アジアで、「ミサイル攻撃に弱い」という評判が立てば、他国を威嚇する上で逆効果になる。笑うに笑えない話なのだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(4月20日付)は、「ロシア旗艦沈没に焦る習近平氏、台湾統一戦略に影響」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙編集委員の中沢克二氏である。

 

ロシア国防省は14日、黒海艦隊の旗艦だった大型巡洋艦モスクワが沈没したと発表した。火災の後、オデッサ沖をえい航中だったという。その艦船は、首都モスクワの名を冠していたのだから心理的なダメージも大きい。注目すべきは、この戦史に残る黒海での大事件が、中国の安全保障関係者にも極めて大きな衝撃を与えた事実である。ロシア側は触れたがらないが、ウクライナ軍の新鋭国産地対艦ミサイル、ネプチューン2発の命中が引き起こしたのは確かなようだ。米国防総省高官も断定している。

 


(1)「『それが事実なら中国が誇る海軍力も『張り子の虎』にすぎない、ということになってしまう――』。中国の関係者の頭をよぎる不安の原因はどこにあるのか。その物語は、バルチック艦隊の旗艦スヴォロフの沈没後、ちょうど100年目だった2005年、中国東北部の遼寧省大連市の造船所で、「残骸にみえる艦船」を中国初の空母(注・遼寧)に変身させる大胆な改修工事が確認されたことから始まる」

 

「モスクワ」が、ミサイル攻撃で沈没した以上、中国の「遼寧」も同様にミサイル攻撃に脆弱という評判が立つ。これは、他国の海軍から見れば「カモ」である。

 


(2)「残骸にみえる艦船とは、1985年に当時、ソ連だったウクライナ南部の都市ミコライウにある著名な黒海造船工場で起工した空母ワリャーグだった。ミコライウは、今回のロシアによるウクライナ侵攻でも両軍が対峙した大都市だ。沈没した旗艦モスクワもミコライウの別の造船所で建造された。歴史は場所を変えながらつながっている。ソ連崩壊で空母ワリャーグの建造は中断した。管轄権を持つウクライナが後に各種機器を外した「スクラップ」として、中国軍人が関わるペーパーカンパニーに売却し、最終的に大連にえい航された。これが、改修されて「遼寧」になった」

 

「モスクワ」と「遼寧」は、ともに黒海の造船所で建艦された意味で、同じ旧ソ連海軍仕様の構造であろう。中国は、「モスクワ」の最期から判断して、急に不安になってきたのだ。

 


(3)「中国初の空母「遼寧」として就役した『ワリャーグ』の装甲が、旧ソ連の基準であるなら、旗艦モスクワのように新鋭ミサイルの攻撃で簡単に沈む恐れがある。空母遼寧は台湾海峡を含む周辺部を航行するなど中国海軍の重要な駒である。だが、仮に国家主席で中央軍事委員会主席の習近平が台湾への武力行使を決断した場合でも、実戦に容易に投入できない脆弱な艦船とみられてしまう」

 

中国は、ロシアを軍事面でも頼りにしている。そのロシアが建艦した空母「ワリャーグ」が「遼寧」である。不安に思えば思うほど、いたたまれない気持ちになるのだろう。

 


(4)「もちろん、その後に就役した改良型の 中国国産空母、山東では防御性能が増強された可能性はある。建造中の3隻目の空母も進水が近いとされる。それでも中国空母が台湾付近や、太平洋へ出ようとすれば対艦ミサイルなどの射程に入る。台湾側の増強も進んでいるのだ。武力による台湾統一を排除しない中国にとって今回、ショックだったのは装備、兵力、資金などあらゆる面でウクライナ軍を圧倒しているはずのロシア軍の意外なもろさである。同じように甘い見立てで武力行使に踏み切ってもロシア大統領、プーチンの轍(てつ)を踏みかねない」

 

「遼寧」は、ミサイル攻撃に弱いという評判が立つことで、攻撃場所を探される筈だ。こうなると、空母の持つ「威圧感」は大幅にダウンする。

 

(5)「海を隔てた台湾を瞬時に攻略するのは、ウクライナよりもさらに難しい。島の中心部に険峻(けんしゅん)な高山が多い台湾は、守りに適した天然の要害でもある。緒戦でもたつけば米軍など援軍が到着。西側各国が連携した厳しい対中制裁や海上封鎖も始まってしまう。エネルギーや食料を海外に頼る巨大な貿易立国、中国が受ける打撃は、ロシアとは比べものにならない」 

 

「モスクワ」の沈没は、中国の台湾侵攻計画を見直すきっかけになろう。台湾侵攻しても失敗すれば、習氏は国内から辞任を迫られる。台湾侵攻作戦は、止めるのが身のためだ。もう一つ、ロシアと同じで猛烈な経済制裁を受ける。これから衰退するロシア経済は、中国の将来を占う「モデル」になろう。