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米国バイデン大統領は、ウクライナ戦争長期化を見据えて、長期的な軍事・人道支援へ向けて330億ドル(約4兆3200億円)の追加予算を議会へ要請した。バイデン大統領は、「自由のための戦い」と称している。このほか、新興財閥(オリガルヒ)の凍結資産をウクライナ復興資金に当てる法制化を求めた。

 

ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナの個人や企業の財産を含めた経済損失全体は、ウクライナのGDPの3倍以上にあたる約5650億ドルにも達するという試算が発表されている。この復興資金の調達が、新たな課題として浮上している。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月29日付)は、「バイデン氏、ウクライナ向け予算330億ドルを議会に要請」と題する記事を掲載した。

 

バイデン米大統領は4月28日、議会に対しウクライナへの武器供与や経済・人道支援に充てる330億ドル(約4兆3200億円)の追加予算の承認を求めた。ウクライナとロシアの戦闘は3ヵ月目に突入しており、より長期的な支援を視野に入れる。今回の予算は9月末までの支援を手当てするもので、与野党から幅広い支持を得ている。

 

(1)「バイデン氏はホワイトハウスで演説し、「ウクライナの人々が自国を守るのを支援するか、それともロシアがウクライナで残虐行為と侵略を続けるのを傍観するかだ」とした上で、これは「自由のための戦いだ」と述べた。議会は今年に入り、ウクライナ向け軍事・人道・経済支援として136億ドルの予算枠を承認している。バイデン氏は、資金がほぼ底を突いたとして、ウクライナへの防衛支援を続けるための追加予算を議会に求めた。議員らは、ウクライナへの新たな支援策を早期に承認する考えを示している。下院議員らは来週ワシントンを離れるため、法案成立に向けた手続きが進むのは早くても2週間後になりそうだ」

 


2022会計年度では、すでに136億ドルの予算枠を承認している。今回の330億ドルを加えれば、466億ドルになる。米議会は,超党派でウクライナ支援に賛成しているので可決成立は間違いない。

 

(2)「政府高官によると、今回の予算案には、軍事・安全保障分野に204億ドル、危機対応や国民の生活支援として85億ドル、食糧や農業など人道支援に30億ドルを盛り込んだ。バイデン氏は軍事支援について、「ウクライナの兵士が戦場で使用して大きな成果を上げている大砲や装甲車、対装甲システム、防空能力をさらに供与できる」と述べた。このほか、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)から没収した資金をウクライナ向け支援に回せるよう議会に法制化を求めた」

 

今回の予算は軍事支援だけでなく、生活支援や人道支援で115億ドルが含まれている。軍事支援では、大砲、装甲車、対装甲システム、防空システムなどが含まれている。ロシア軍は、ウクライナ東部の攻撃で苦戦している模様だ。ウクライナ東部のロシア軍が支配している地域で、対独戦勝記念パレード(5月9日)を開催予定だったが、取消されたと報道されている。思わしい「戦果」をあげられないことが理由のようだ。西側諸国の軍事支援がロシア軍の進出を阻んでいる。

 


新たな話題は、ウクライナの復興支援に注目が集まっている。西側諸国が、それだけ戦況有利と見ているのであろう。

 

『日本経済新聞』(4月29日付)は、「米欧、ロシア資産活用案 ウクライナ復興支援」と題する記事を掲載した。

 

ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援や同国の復興にかかる莫大な費用を、ロシアに負担させる動きが米欧で広がってきた。米議会では超党派が制裁で凍結したロシア人の資産を没収し、支援にあてる法案が審議される。欧州議会ではロシアの外貨準備の活用が浮上する。いずれも国際法などに基づく検討が必要で、実現には曲折がありそうだ。

 

(3)「イエレン米財務長官は21日の記者会見で、「ウクライナ再建に必要な資金の一部をロシアに負担させることは、米国が追及すべきことだと思う」として、友好国と協調しロシア資産の活用を検討すると述べた。カナダのジョリー外相も27日、政府が制裁で凍結した個人や団体の資産を没収し、支援に充てる措置を検討していると表明した。米下院では3月上旬、民主党のマリノフスキー議員と共和党のウィルソン議員が共同でロシア資産を没収して支援にあてる法案を提出した」

 

ウクライナ復興資金を、ロシアに負担させることは当然である。加害者責任である。米議会では、オリガルヒの凍結資産を復興資金に当てたいとしている。

 


(4)「没収対象は、米国の制裁で凍結されたロシアのオリガルヒ(新興財閥)らの資産だ。200万ドル以上に相当する資産の没収を米政府に奨励するという内容だ。使い道はウクライナの復興・人道支援、同国への兵器供与などに限定する。下院は27日に同法案を可決したが、このまま成立するかどうかは不透明だ。言論の自由を監視する米市民団体などが、「資産を没収される側に反論の機会を与えなければ、憲法上の手続きを欠く」と主張する。仮に新法が成立しても、米裁判所が無効と判断する可能性があるというわけだ。

 

オリガルヒの凍結資産は、1件200万ドル以上が対象としている。ただ、拙速に決めると法的な問題が生じるので、オリガルヒに反論の機会を与えるべきとの意見が出されている。

 


(5)「欧州議会の議員の間では、ロシアの外貨準備を活用する案が取りざたされる。ロシア側は米欧の中央銀行などに預けている約3000億ドルの外貨準備が凍結されたと主張している。国際法違反の被害回復に関する2005年の国連決議は「被害を与えた当事者が(賠償などの)義務を果たせない場合に、被害者支援のための他のプログラムを確立するよう努める」と指摘する。バイデン米政権はイスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンでの人道支援のために、凍結されているアフガン中銀の資産70億ドルをあてる方針だ」

 

欧州議会では、凍結しているロシアの外貨準備約3000億ドルを復興資金に充てるべきという案が出ている。2005年の国連決議では、被害を与えた国の賠償責任を認めている。これに従って、ロシアの外貨準備を没収しようとするものだ。