習近平氏の威厳に関わるロックダウンは、上海市から北京の一部を巻き込む勢いで拡大している。上海市トップの李強氏は、習氏の腹心と言われており、次期首相候補の一人とされてきた。だが、国際金融都市の上海が1ヶ月もロックダウンされる事態に陥って、市民からすっかり信用を落としている。党内の評価低下にも結びつきかねず、習氏は頭を痛めているだろうと話題になっている。
米『CNN』(4月29日付)は、「上海に続き北京も一部ロックダウン、中国全土で1億6500万人に影響」と題する記事を掲載した。
中国経済を支える2大都市、北京と上海が新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)に入っている。上海の住民は疲弊し、北京では封鎖拡大への恐怖に火がついている。
(1)「上海では1日あたり1万人を超す新規の症例が報告される日が続く。全市的なロックダウンは数週間に及び、人口2500万人のほぼ全員が、自宅や居住地区から出られない状況にある。一方、北京は集団検査を開始して、学校を閉鎖し、感染の拡大を抑えるために一部の集合住宅を対象とするロックダウンを開始した。中国は厳格なゼロコロナ戦略に固執し続けているが、感染力の高いオミクロン変異株が猛威を振るう中、その戦略を維持することへの疑問が突き付けられている」
上海市内の感染者ピークは、最近の東京のピークよりも低かった。本来ならば、あれだけ騒いでロックダウンする必要性はなかったのだ。だが、東京に比べれば看護士の不足や治療器具の少なさは明瞭。これを隠蔽すべく、ロックダウンという人海戦術に出たのだ。防疫体制の未熟さが招いた「人災」である。
(2)「全土では、少なくとも27都市で部分的なロックダウンや全市的なロックダウンが実施され、CNNの計算によれば、最大で1億6500万人が影響を受けている。北京市の朝陽区を対象とするロックダウンでは、集合住宅13棟の住人が自宅から出られなくなり、別の33棟の住人は居住区からの外出を禁止された。28日には北京市内の人口密集地の多くで学校が閉鎖され、大手病院が相次ぎ閉鎖を発表。映画館など娯楽施設に対する閉鎖命令も増えている」
全土で、すでに最大1億6500万人が、ロックダウンの影響を受けている。北京市の高級街の朝陽区も封鎖されている。北京は、この朝陽区だけで収まるはずもなく、隣接区への感染拡大は不可避であろう。
(3)「中国国内では杭州(人口1220万人)、蘇州(同1270万人)、ハルビン(同950万人)など20都市以上で部分的なロックダウンや全市的なロックダウンが実施されている。対象は北東部の黒竜江省から南部の広西スワン族自治区、西部の青海省まで14省区に及ぶ。上海はロックダウンの影響で機能不全状態に陥り、混乱が拡大。住民は食料が足りないと訴え、医療機関も受診しにくくなり、その場しのぎの隔離施設は劣悪な環境にある。当局は感染した子どもを親から引き離すなどの強硬な対策を講じている」
ロックダウンは、14省区に及ぶ。オミクロン株は感染力が強いので、ロックダウンの度合いはますます強く、長期化せざるを得なくさせている。「ゼロコロナ」の弊害が、強くなっている理由である。
(4)「3月には、上海市内の病院に勤務する非番の看護師が、消毒のために閉鎖された勤務先の病院への緊急入院を拒まれて死亡した。今月初めには、陽性と判定された飼い主のペットのコーギー犬を保健職員が撲殺。先週は、職員が未明に92歳の女性の自宅に押し入って隔離施設に強制的に入所させたと伝えられた。そうした情報は中国のSNSで拡散され、憤りの声が広がる異例の事態となっている。同じような報告は他都市でも相次ぐ」
ゼロコロナ自体が、原始的な防疫である。それゆえ、想像もできないような問題を引き起している。あたかも、原始社会のような騒ぎである。習近平氏が、推奨している方法ゆえに、誰も異を唱えられないという異常社会だ。
(5)「北京はまだ、高リスクと指定された地域以外で住民の移動が制限される事態にはなっていない。しかし住民の多くはロックダウンが広がることを恐れてパニック買いに走り、スーパーマーケットには長蛇の行列ができた」
北京市もいずれ、上海市の二の舞いを演じるであろう。
(6)「ロックダウンや移動制限の影響は、特に上海や深センといった経済中心地に打撃を与えている。3月の失業率は21カ月ぶりの高さに上昇。自動車メーカーのフォルクスワーゲンやテスラ、アップルのiPhone(アイフォーン)を製造するペガトロンなどは操業停止に追い込まれた。中国の通貨、人民元は今週、2020年11月以来の水準にまで急落した。中国指導部が神経をとがらせる兆しは見えている。習近平(シーチンピン)国家主席は26日、成長を促進するためインフラ投資に総力を挙げるよう指示した。具体的な経済計画を自ら打ち出すことがほとんどない習主席にとっては異例の発言だった」
ロックダウンが経済に及ぼす影響は甚大である。すべての経済活動をストップするのだから当然であろう。4~6月期のGDPが大きく落込むのは不可避である。ゼロ成長を予測する向きも出ている。
コメント
インフラ投資といっても、また、不動産と鉄道に投資するぐらいしか投資先がないが、不良債権化して悪循環。
製造工場への投資も、技術がなく、設備も輸入できないので、ガラクタしか製造できない工場になってしまう。八方塞がりとは、まさにこのこと。
あとは軍備ぐらいか。これもロシアのコピーでガラクタであることは、ウクライナで実証済み。
結局、ソ連と同じ結末か。集中と分裂を繰り返してきた歴史から考えると、次は分裂。幾つの国家に分裂するか。漢族国家は、長城内に限定されるのか。楽しみ。
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