テイカカズラ
   

ロシアは、5月9日が対独戦勝記念日である。今年は、ウクライナ戦争の勝利宣言をするのでないかと予想されてきた。だが、ウクライナ侵攻以来2ヶ月を経ても、戦況は当初予想とお異なって、首都キーウの占領が夢に終わっている。東部の作戦も停滞気味であり、とても「勝利宣言」できる状況でない。

 

そこで、プーチン大統領は「勝利宣言」に代わって、ウクライナへ「宣戦布告」するという予想が登場してきた。英国国防相の発言である。これによって、ロシア国内のムードを引締めるというのだ。だが、「宣戦布告」だけでなく、徴兵制度を敷くのでないかと見られている。ロシア軍の士気が低く、徴兵制で有無を言わせずにウクライナ前線へ送り込もうというのである。

 


だが、これは危険な側面を持っている。徴兵制になると、都市部出身者も兵役につくので戦死の場合、従来の地方出身兵士の戦死と異なり、反戦運動と結びつく可能性が強まることだ。これまでは、地方出身兵士の戦死であって、土地柄もあり反戦運動にならなかった。それが、徴兵制で一挙に事態が変化する危険性が高まるであろう。

 

『共同通信』(4月30日付)は、「ロシア、5月9日に宣戦布告か 英国防相が見解示す」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ウォレス英国防相は4月30日までに、ロシアのプーチン大統領が第2次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝の記念日に当たる5月9日に、ウクライナと戦争状態にあると位置付け、宣戦布告して総動員をかける可能性があるとの見方を示した。英ラジオ局『LBC』の番組で語った。ロシアは、これまで侵攻を「特別軍事作戦」とし、戦争とは表現していない」

 


「特別軍事作戦」とは、一般的に次のような意味に使われる。

戦争以外の軍事作戦は、戦争ではない状況における軍事作戦を指すもの。これには、全面戦争に至らない程度の武力行使も含まれる。具体的に、戦争以外の軍事作戦は侵略の抑止、国益の保護、条約義務の遂行、人道的支援及びそれに伴う警備活動、文民支援、平和的解決などが当てはまる。

 

ロシア政府は、「ロシア派市民の保護」とか、「ナチズムへ対抗する」などと、大義を付けてきた。それゆえ、「特別軍事作戦」と称し「戦争」という言葉を禁じてきた。

一般的に、「特別軍事作戦」は次の6点を意味している。

1)目標は明確かつ達成可能であること。

2)あらゆる能力・資源は共通の目標の下に統一的に運用されること。

3)敵対勢力に政治的、軍事的、情報的な優位を阻止すること。

4)適量の兵力を適切に使用すること。

5)作戦の長期化に準備すること。

6)軍事行動の正当性を維持すること。

 


ロシア軍が、2月24日以来取ってきた軍事行動は、戦争そのものである。そこで、「宣戦布告」によって、ロシア国内向けにも「戦争」と位置づけ、徴兵制を敷くことになるのでないか、と予測されるにいたった。

 

(2)「ロシア政府は、ウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と敵視。ウォレス氏は、プーチン氏が「『世界のナチスと戦争状態にある。国民を大量動員する必要がある』と宣言するかもしれない」と述べた」

 

プーチン氏は、ゼレンスキー政権を「ネオナチ」と位置づけている。現実は、正統な選挙で選ばれた大統領だ。ゼレンスキー氏の祖父は、ユダヤ人収容所の数少ない「生残り」である。ナチに弾圧・拷問された犠牲者の孫であるゼレンスキー氏が、「ネオナチ」とは驚くべきねつ造である。ウクライナへ戦争を仕掛ける口実であることは明白だ。

 

ロシアは、徴兵制を敷いて「大軍」をウクライナへ送り込み、戦争の主導権を握る戦略と見られる。だが、これまで軍事教練を全く受けたこともない人々が、短期の教育で戦場に立てるだろうか。ましてや、根本的に脆弱構造であるロシア製戦車に搭乗して戦場に立つのは、自殺行為にも等しいことである。徴兵制は、危険な戦術そのものだ。

 

徴兵制と並んで注目されるのは、「予備役」の招集である。予備役は、かつて軍務経験を持ち現在は、一般社会で生活している人々である。全く軍務経験のない人(徴兵制)に比べれば、格段に有利な立場である。それでも装備を整え、部隊を編成するのに少なくとも数カ月はかかるのだ。

 

プーチン氏は、大軍を率いて夏までにウクライナを「解放」するという戦術である。5月9日の「対独戦勝記念日」に、それを発表すると予想されている。この予想が外れて、現実のものにならないことを祈るのみである。