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新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」が、発足することになった。日米と韓国、インド、フィリピンなど計13カ国が創設メンバーである。中国に対抗してサプライチェーン(供給網)の再構築や、デジタル貿易のルールづくりなどで連携する。13ヶ国のGDPを合計すると、世界の4割にも達する。

 

IPEFは、TPP(環太平洋経済連携協定)のように関税引き下げというメリットはない。それでも13ヶ国が参加するのは、根底に中国への警戒感があることを示している。協議分野は貿易供給網インフラ・脱炭素税・反汚職――4つで構成する。分野ごとに参加国は変わるという柔軟組織である。

 

関税引き下げメリットがない上に、中国から睨まれるリスクを抱えて、なぜ各国がIPEFへ参加するのか。多分、供給網やインフラ・脱炭素に魅力を感じているのであろう。

 


供給網では、半導体・蓄電池・レアアース・医薬品(ワクチン)などが戦略物資として優先的に手の入れられる機会が増える。また生産に参加できる機会も出てくる。

インフラ・脱炭素では、低利融資が受けられるメリットがある。これらインフラ・脱炭素の二部門は、多額の資金を必要とするので、IPEFの傘に入るメリットは大きい筈だ。

 

『ブルームバーグ』(5月23日付)は、「バイデン米政権 新経済圏構想IPEF立ち上げを表明ー中国に対抗」と題する記事を掲載した。

 

バイデン米政権は23日、13カ国による新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」発足に向けたプロセスの立ち上げを正式に発表した。地域における中国の影響力に対抗する動きとなる。ただ、その真価には引き続き疑問視する声がある。

 


(1)「米国以外にIPEFに参加するのは、日本とオーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。ホワイトハウスは、全参加国の国内総生産(GDP)が合計で世界の約40%を占めるとし、バイデン大統領の就任後初のアジア訪問の特筆すべき成果としている」

 

表だって「反中」を謳ってはいないが、IPEFは潜在的な中国リスクを抱えている国々の集まりであろう。クアッド4ヶ国の(日米豪印)の参加は当然として、韓国・ベトナム・フィリピンも名乗りを上げた。今後、パンデミックが襲う機会は、従来よりも増える見通しである。その点で、米国科学力によるワクチン開発の恩恵期待は、喉から手が出るほどの存在になる。中国と一緒では、「ゼロコロナ」が関の山である。

 


(2)「なお、米上院議員50人余りがバイデン大統領に宛てた書簡で台湾を発足メンバーに加えるよう求めたが、政権は台湾を招待しなかった。レモンド米商務長官は22日に都内で記者団に対し、「米国のビジネスに恩恵があると確信する。中国に代わるパートナー探しが産業界で強まり始める中では特にそうだ」と述べた」

 

IPEF参加国は、グループ内でパートナー集めが可能になる。仲間内になれば、普段からコミュニケーションが取りやすい。ビジネス相談をし易い仲間が増えるメリットは大きい。台湾参加を見送ったのは、余りにも「反中」の政治色が強くなることを避けた筈だ。

 

(3)「トランプ前政権が2017年に米国の環太平洋連携協定(TPP)離脱を表明後、経済分野で最も重要なアジア関与の取り組みとなる。だがTPPとは異なり、IPEFには関税引き下げは含まれず、どの部分が拘束力を持つのかも不明で、経済的利益を数値化するのは困難となっている。13カ国は共同声明で、「この枠組みは各国経済の強靱(きょうじん)さや持続可能性、包摂性、経済成長、公正性、競争力を強化することを目的とする」とし、「このイニシアチブを通じ、地域における協力や安定、繁栄、発展、平和に貢献することを目指す」と表明した」

 

IPEFは米国の呼びかけで集まったが、実際の幹事は日本が取り仕切ることになろう。日本は、早くから東南アジアへ工場進出しているだけに、最も生の情報に精通しているからだ。

 


(4)「IPEFの構想に米議会では民主、共和両党から疑問の声が上がっている。過去の通商交渉の典型的な目標であった互恵関税引き下げ交渉が目標に含まれていないためだ。IPEFの下では通商、サプライチェーン、クリーンエネルギー、税制面など公正な経済の4本柱のうち少なくとも一つで参加国が「高い基準のコミットメント」を求められる。IPEFには米議会の承認が必要となるかとの質問に対し、米通商代表部(USTR)のタイ代表は22日、協議の過程で議会に緊密に連絡し、他の参加国との交渉をどう進めるかでも議会が関与する必要があると述べたが、明確な回答は示さなかった」

 

TPPもアイデアは米国であったが、国内事情で日本が米国の抜けた後をまとめて発足にこぎつけた、IPEFも、日本が子守役にならないと軌道に乗らない恐れもあろう。日本の責任は重くなる。

 


(5)「ブルームバーグの計算によると、IPEF参加国のGDPは合わせて34兆7000億ドル(約4430兆円)と世界全体の約41%を占め、TPP参加国の31兆7000億ドルを上回る。ホワイトハウスはIPEFが300万人余りの米雇用を支えるとみている。IPEF発足メンバーには日本とインドの両経済大国が含まれる。両国はオーストラリアとともに日米豪印の枠組み「クアッド」のメンバーでもある」

 

IPEF13ヶ国のGDP合計額は世界の41%という。この国々が、「反中国」という共通の認識でまとまることは、中国への圧力になろう。インドネシアやフィリピンが加わることは、注目点である。