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韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、就任10日余で大きな外交的決断を迫られた。米国の主導するIPEF(インド太平洋経済枠組)への参加が、中国の反発を招くからだ。また、米韓首脳会談で米韓軍の合同演習の再開を決めたので、北朝鮮の反発を招くことも確実である。

 

こうした中朝からの逆風を覚悟して、米同盟国という同一価値観に基づいて西側諸国の一員という認識を深めたように見える。だが、韓国進歩派(民族主義)は中朝融和派であるので、韓国政治はせめぎ合いが激しくなろう。

 

『朝鮮日報』(5月24日付)は、「尹大統領『IPEF参加は国益に合致』」と題する記事を掲載した。

 

尹錫悦大統領は23日、インド・太平洋経済枠組み(IPEF)の発足首脳会合で「自由民主主義と市場経済体制を基盤に短期間で成長と発展を成し遂げ、IPEFが包括するあらゆる分野でこれらの経験を分かち合いながら協力したい」と述べた。就任から13日で米国主導のインド・太平洋経済枠組みに参加したのだ。文在寅(ムン・ジェイン)前政権で韓国は米国と中国の間で「戦略的あいまい戦略」を取り続けたが、今回は「米国主導のアジア・太平洋秩序に加わる意向を明確にした」と評されている。

 

(1)「尹大統領はこの日、IPEF参加13カ国のうち5番目に5分間オンラインで演説し「今世界はパンデミック(感染爆発)、サプライチェーン再編、気候変動、食料・エネルギー危機など多様で複合的な危機に直面している」としてIPEF発足の必要性に賛同する考えを示した。「一つの国が独自に解決できる問題ではない」ということだ。尹大統領は「インド・太平洋地域の共同繁栄時代を開くため共に力を合わせよう」と呼び掛けた。尹大統領は大統領就任式の演説と国会での施政方針演説で「自由」「人権」「連帯」を訴えたが、今回経済分野でも自由民主主義勢力と行動を共にする考えを明確にしたのだ」

 


IPEFにはASEANから親中のミャンマー、カンボジア、ラオスを除く7カ国が参加している。これは予想外に多いことで、中国の圧力をはね返して参加したと見られる。IPEF参加国は、
貿易供給網インフラ・脱炭素税・反汚職――4分野のうち、自国の立場で選択できる仕組みだ。多分、②技術と③インフラの2分野に参加して、IPEFのメリットを目指しているであろう。韓国は、IPEFの4分野すべてに参加して、米韓同盟の絆の強さを証明しなければならない立場だ。

 

(2)「尹大統領が就任から10日でIPEF参加を正式に決めた背景には「国際経済秩序の急速な変化」という判断があるためだ。米国と中国の覇権争い、そしてそれに続くウクライナ戦争によるサプライチェーンの混乱など、国際経済秩序は急速に変わりつつある。この状況で米国主導のサプライチェーン・ブロックに参加することが国益の次元で必要と判断したのだ。一部では中国の反発を懸念する声もあるが、尹大統領はこの日、記者団の取材に「当然参加すべきであり、そのルール作りのプロセスから外れてしまうと国益にも大きなマイナスになる」との考えを示した」

 

尹大統領は、積極的に記者団の取材に答えている。これは、前任者の文大統領との大きな違いである。文氏は在任中、数える程度しか記者会見しなかった。尹氏は、自分の考えを述べることで、国民もIPEFの意義を早く理解できるだろう。

 


(3)「インド・太平洋地域の13カ国が発足メンバーとして参加する一方で、中国を意識して加入をためらうと早期の主導権確保競争で立ち遅れてしまいかねないからだ。尹大統領はこの日放映されたCNNテレビとのインタビューで「中国がこの問題であまりにも神経質な行動を取るのは合理的ではない」「IPEF参加は大韓民国の国益に合致する」と述べた」

 

韓国は、TPP(環太平洋経済連携協定)で中国への思惑が先行して「原加盟国」にならなかった。その失敗から、IPEFでは「原参加国」として行動する決意をしている。

 

(4)「尹大統領はこの日、世界で最初に5G(第5世代移動通信)を商用化した韓国の通信技術、さらに原子力、水素、再生可能エネルギーなどの技術分野にも言及し「韓国はデジタル経済への転換と炭素低減インフラの構築に貢献したい」との考えを示した。尹大統領はさらに「世界的サプライチェーンの危機に効果的に対応するには、国際的な協力態勢が非常に重要だ」「半導体・バッテリー・未来の自動車など先端産業の核心力量を持つ韓国は地域の国々と互恵的なサプライチェーンを構築できるだろう」と意欲を示した」

 

韓国は、半導体、通信技術、原子力、水素、再生可能エネルギーなどの技術分野で貢献する意思である。このことは、中国との関係が希薄になる。中国は、半導体部門が脆弱名だけに、痛手であろう。

 


尹大統領は北朝鮮問題について23日、米『CNN』テレビ・インタビューで次のように語った。「北朝鮮をなだめる時代は終わった」とし、「南北対話のボールは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の側にある」と指摘した。次のような指摘もあった。

 

「北朝鮮の挑発の脅威を一時的に避けるための政策を展開するのは、われわれのやることではない」とした。文政権が、任期中ずっと推進した対北融和策は、「5年間の失敗と判明した」と結論づけ、いわゆる「対話のための対話」を繰り返す気はないことをはっきりさせた。以上は、『朝鮮日報』(5月24日付)からの引用である。

 

文政権は、中朝に対し一貫し「御用聞き」のような振る舞いであった。これが、中朝を増長させたことは疑いない。韓国へ強い態度で出れば、すぐに妥協すると甘く見られてきたのだ。こういう「おべっか外交」から脱皮する。これが、今後の韓国外交方針になるようだ。