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世界のコロナ感染が下火になるとともに、観光客が動き初めてきた。人気観光地のハワイは、すでにかなりのにぎわいという。

 

米国は、この3月からワクチン接種証明や陰性証明があれば隔離なしで入国できるようになった結果だ。日本からの航空便も、5月の連休は日によって満席。56月全体の日本人旅行者数は、コロナ前に比べまだ1割程度だが、年末には急増しそうだと報じられている。

 

日本も景気回復の一助として、インバウンドの誘致に力を入れなければならないが、グッドタイミングで「吉報」が舞い込んだ。世界経済フォーラム(WEF)が24日発表した2021年の旅行・観光競争力ランキングで、日本は初めて首位となった。ホテルなど観光客向けインフラや観光資源の豊富さが他国より競争力を高めたと評価されたもの。

 


評価のポイントは、道路や鉄道の整備状況などでも前回より評価を上げたこと。価格競争力、環境の持続可能性などでは、改善の余地があるとされた。だが、日本の総合評価は前回19年調査では4位。評価方法が変わっており、同じ基準で計算すると前回は実質2位だった。それが22年は堂々の1位である。日本式「オモテナシ精神」が設備と共に世界へ浸透したのであろう。

 

ここで、日本は今後のインバウンドをどのように誘致するかが課題となっている。これまでは、中国に大きく依存してきた。だが今後、米中対立の余波から、北京がいつ「日本旅行禁止令」を出すかわからない不安定な状態に置かれる。すでに、韓国や豪州が、同じ憂き目に遭わされているからだ。となれば、インバウンドでも「同じ価値観」の米欧濠などに焦点を合わせた方がベスト、というアドバイスが聞かれる。

 


『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「インバウンド再開に罠、『中国依存』が呼ぶリスク」と題する記事を掲載した。

 

日本の観光地もインバウンド再開への期待は高い。もたもたしていると、常連客をほかの国に取られてしまう。円安を生かす意味でも早期の再開は望ましい。しかしかつての盛況を無防備に期待していると、落とし穴が待つ。先ず、3つほどの注意点を挙げたい。

 

(1)「第1は、欧州ではコロナ後の観光再開に向け、「サステナブル(持続可能)観光」「スマート観光」を掲げて準備をしている。IT(情報技術)を駆使し、スマートフォンの移動情報や監視ビデオの映像などを一元管理し、予測や誘導に役立てるシステムを構築した都市もある。日本もインバウンドの本格再開前に混雑情報などのリアルタイム提供、人気スポットを結ぶ外国人主体の交通手段の確保、エリア単位の人数規制策、混雑に応じたダイナミックプライシング(変動価格制)などを整えておかないと住民から反感を招く可能性がある」

 

過去の事例では、日本でもインバウンドが殺到して住民生活に支障の出たこともあった。そういう問題を起さない準備が必要である。

 


(2)「第2は「円安」への過度な期待によるマーケティング上の弊害だ。円安という「値引き販売」はコロナ前もインバウンド増加の一因となった。現在はさらに円安が進み、日本旅行は外国人にとって一段と割安になった。集客にはプラスだ。これから育てるべきなのは、円が高かろうが安かろうが日本で過ごしたいというバリューコンシャス(価値に敏感)なファンであり、価値ある体験を求めるバリュートラベラーだ。円安で増える客に焦点を合わせてサービスや商品をそろえると、忙しさだけが増して利益が伴わず、やがて別の安売り勢力に負ける罠が待つ」

 

対外的広報では、円安を強調し過ぎて日本旅行の「バーゲンセール」という印象を強めてはならない。日本旅行に価値を見出す「良質なインバウンド」獲得が必要である。日本の観光競争力が21年に、世界1位になった実績を素直に受入れてくれる、そういうインバウンドを大事にしなければならない。

 


(3)「第3は、長期的でナーバスな問題だ。コロナ前である2019年の訪日外国人、計3188万人はどこから来てくれたのか。国・地域別の首位は中国で30%を占める。以下韓国(18%)、台湾(15%)、香港(7%)と続く。韓国を除く3つの広域中華圏の合計は52%と半分を超えた。以前から東アジアへのインバウンド依存度の高さは指摘されていた。外交、災害、政変などで総数が急減するリスクがあるからだ。世界が、自由主義陣営と権威主義陣営に分かれる「新冷戦」が始まったといわれる今、このリスクは「もしも」の域を超え始めている」

 

中国を初めとする権威主義国家は、政治上の理由で自国民の海外旅行先に介入する危険性が高い。その筆頭は中国であるが、過去の日本におけるインバウンドは中国依存であった。それだけに、安易な中国依存のインバウンド集客は危険である。

 


(4)「権威主義陣営では個人消費が国家の方針に左右される。中国は韓国旅行をぐっと締め付けた前例がある。17年、在韓米軍が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備し、中国は旅行業界に訪韓旅行の販売を禁じる「禁韓令」を出した。中国は、別件でオーストラリアに対しても同様の観光客絞り込み策を採った「実績」がある。排除するのではないが、中華圏からのインバウンドが急減しても、うろたえないような強い体質の観光地をつくらなければならない。カギは2つある。国内需要と「欧米豪」だ」

 

日本における今後のインバウンド集客が、欧米濠という日本と同じ価値観を持つ国からであれば、政治的理由で止められるリスクはない。もう一つ、国内客の集客努力が欠かせない。

 


(5)「インバウンドが再開しても、国内市場は大事に育て続けるべきだ。世界最大の観光国フランスも、「基礎票」は国内でのバカンスや欧州連合(EU)など「身内」からの観光客が支えている。もう一つは旅行業界が「欧米豪」と総称する欧州、北米、オーストラリアなど自由主義圏の先進国からの観光だ。19年の訪日外国人の1人当たり消費額は平均15万円だった。主要国・地域ではオーストラリアと英国の24万円台を筆頭にフランス、ドイツ、スペインは20万円を超え、多くは増加傾向にある。遠方から来るため滞在期間が長く、日用品の買い物より文化や自然など深い体験を求めるからだ」

 

観光国フランスは、「国内客」と「欧米濠」の二本柱で支えられているという。日本も参考になる事例だ。いかに国内客を集めるか。また、欧米濠の長期滞在客を呼込むか、それが焦点になりそうだ。