ムシトリナデシコ
   

年初来、中国から資本流出が大きな流れになってきた。今年の資本純流出は。3000億ドルに達するとの予測も出ており、中国への評価は変わりつつある。最大の理由は、習近平氏の政策が「反企業」的であることだ。毛沢東の再来を思わせるような、反時代的な経済認識に、多くの米英系企業が疑問を深めている。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月26日付)は、「冷める中国への愛、外資系企業に心情の変化」と題する記事を掲載した。

 

外資系企業は中国に見切りをつけつつあるのだろうか。不満を抱いているのは確かなようだ。在中国の欧州連合(EU)商工会議所が行った4月の調査によると、現行または計画中の対中投資を他の市場に変更することを検討しているとの回答が23%に上った。これはここ10年で最も高い水準だ。

 


(1)「アップルは、委託先企業に製造を他の拠点に移管するよう要請している。アップルのサプライヤーは中国民間部門で雇用の最大の受け皿だ。在中国米商工会議所が今春行った調査によると、新型コロナウイルス変異株「オミクロン株」が上海市で猛威を振るう以前から、米企業の3分の1余りが、政策環境を理由に、対中投資を削減する意向を示していた。アップルといった外資大手はこれまで中国に巨額の投資を行っており、今でも現地でかなりの利益をたたき出している。そのため、せきを切ったように中国から撤退する可能性は低いだろう」

 

アップルは、中国で約100万人の雇用を生み出している。そのアップルが、製造委託会社へインドやベトナムでの生産移管を検討させている。米企業の約3割は、対中投資の削減意向を持つ。習近平政策に疑問を持ってきたことが理由である。

 


(2)「長らく予想されながら遅々として進まなかった製造業大手による中国からの生産拠点の分散化は、ここにきて一段と協調した取り組みに向けた下地が整いつつあるようだ。その結果、中国景気の減速そのものや人民元のさらなる下落に加え、李克強首相といった成長重視の指導者の存在感が増すかもしれない。長らく蚊帳の外に置かれていた李氏はここにきて、国営メディアで言及される頻度が増えており、再び存在感を増している」
 

 

ここへ来て,急に「中国熱」が冷めたわけでない。これまでの不満が高まり、一気に「移転」へと舵を切らせるまでになってきたのであろう。ロックダウンやウクライナ侵攻を巡る中国のロシア支持など、外資系企業には疑問だらけの事態が起こっている。

 


(3)「製造業に中国離れを促している最大の理由は、過去2カ月をほぼ通じて上海市の大半でロックダウン(都市封鎖)が敷かれるなど、その厳格なゼロコロナ政策だ。さらにロシアのウクライナ侵攻に対する暗黙の支持や、昨年の不動産・テクノロジー業界への締め付けによる国内経済への広範な打撃に加え、より透明かつ穏やかな流れに慣れていた外資系企業の間で、中国当局の政策ミックスが実際に有害な影響をもたらしかねないとの認識が広がりつつあることも要因となっている」

 

中国の企業風土が、欧米のそれと余りにも異なることだ。習近平氏以前の中国であれば、改革派がリードしていたので見通しが持てたのである。ところが、習氏の統治下では予想もつかない政策が突然に打ち出される。これでは、中国に愛想が尽きるのであろう。

 


(4)「2020年~21年に外資による対中投資が急増したことは、中国と西側諸国との関係が急激に冷え込んでいた当時の状況とは矛盾するかに見えた。だが振り返れば、その理由を説明することはさほど難しくない。他のアジア諸国の輸出拠点を含め、世界全体が大きな打撃を受けているのを尻目に、中国は輸出を筆頭に絶好調だった。外資による対中投資を後押しする要因は輸出競争力だけに限らないが、極めて重要であることは確かだ。過去20年にわたり、中国輸出の伸びと外資による対中直接投資のトレンドは全般的にほぼ二人三脚の構図になっていた。外資系製造業による利益の再投資を除く商務省の一連の統計でさえもだ」

 

下線部は重要である。外資の対中投資が伸びるから、中国の輸出が増えてきた。この事実を押さえておくと、外資が見限った後の中国輸出は、逓減を余儀なくされることだ。

 

(5)「ところが、足元では中国輸出の伸びに急ブレーキがかかった。オミクロン株流行を受けた封鎖措置、外需の低迷といった足かせに加え、昨年は工場閉鎖に追い込まれていた低コストの製造業者との競争が激化していることがおそらく主因だ。上海の封鎖措置が解除されれば、輸出が一時的に持ち直すことはあり得る。とはいえ、これらの要因の多くは当面、その影響が長引くだろう」

 

中国は、上海のロックダウンが解除されれば、一時的に輸出が増えても継続性を期待できまい。外資系企業が、対中投資を抑制し始めているからだ。

 

(6)「中国では、早くとも2023年初頭までゼロコロナ政策が大きく転換される見込みは薄いとされ、経済活動を阻害するロックダウンが今後も避けられない見通しだ。東南アジア諸国やインドといった代替の製造拠点はいずれも課題を抱えているが、一方で明確な強みも持ち合わせている。具体的には、拡大している若い労働力に加え、これらの国々の政府はイデオロギー的、あるいは可能性として、軍事的に民主主義の先進国と対立する立場にはないという点だ」

 

中国のゼロコロナ政策は、来年初頭まで続く見通しである。ASEANやインドが、代替生産地として浮上するのは、労働力の豊富さに加え、イデオロギー面・軍事面で先進国と対立しない点が大きな要因になっている。

 

(7)「そして何より重要だと思われるのが、中国が硬直したコロナ対策に固執しつつ、最も成功している民間企業の一部に容赦のない攻撃を加え、その両方による連鎖的な影響が中国の消費者や新卒の雇用市場に深刻な痛みをもたらしている点だ。そのため、将来的な中国市場の成長性やビジネスにとっての政策環境全般の安定性に対して、著しい疑問が生じている

 

習近平氏の毛沢東イズム崇拝は、現代の思潮から著しくかけ離れている。これが、中国市場の将来性に影を落としており、ビジネスの安定性に疑問を生んでいるのだ。中国は、厄介な指導者を持ったことになる。