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習近平氏の「唯我独尊」ぶりは、中国国内でも持て余しているだろうが、欧米企業にとっては抜き差しならぬ「嫌悪感」となってきた。余りにもかけ離れた価値観に拘泥しているからだ。外資企業は、中国国内での投資拡大に慎重であるだけでなく、撤退すら検討し始めている。

 

中国国内では、大真面目になって「ゼロコロナ政策」に従っている。その理由は、防疫設備が不完全であり、「ウイズコロナ」になれば、100万人単位の死亡者が出るというのである。それだけ、国内の医療防疫体制整備を怠り、軍事費へ厖大な資金をつぎ込んできたことを物語っている。「ゼロコロナ」は、中国の抱える問題点の集中的表現である。世界覇権を狙えるような実力は、もともと端からないのだ。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(5月21日付)は、「企業の中国進出、曲がり角 西側と軍事対立の観測も」と題する記事を掲載した。

 

外国企業による中国への直接投資は今、崖っぷちから転落しそうだ。在中国の欧州連合(EU)商工会議所のイエルク・ブトケ会頭は様々な事態が予測不能になってしまったことで、欧州企業各社は中国への投資に「待った」をかけていると言う。

 

(1)「在中国の欧州連合商工会議所が、今月発表した会員企業約1800社を対象とした意識調査の結果によると、「中国で執行中または計画中の投資の中止を検討していると回答した会員企業は過去最高の23%に上った。さらに77%が将来の投資先としての中国の魅力度は低下したと回答した」。ブトケ氏はこの点を説明したうえで「会員企業の多くは、中国への投資はしばらく様子をみてから判断する状況にあるということだ」と話す」

 


在中国の欧州連合商工会議所の調査によれば、調査対象の23%は「執行中または計画中の投資の中止を検討中」。77%は、「将来の投資先としての中国の魅力度は低下した」と回答した。つまり、全企業が中国市場を見限り始めている。これは、重大な事実である。

 

(2)「中国に対する悲観論は米企業の間にも広がっている。在中国米商工会議所のマイケル・ハート会頭はこう警告する。外国人の幹部が自社の中国事業を視察するために入国しようとする際に生じる負担、つまり予期せぬ国際線の欠航や、ビザを得るための複雑なプロセス、入国後の長期の隔離期間が原因で、「今後2~4年」は中国への投資が「大幅に低下」する恐れがある、と」

 

在中国米商工会議所も、「今後2~4年は中国への投資が大幅に低下する恐れ」と指摘している。これも、中国には痛手である。

 

(3)「上海を含む中国各地で何週間も自宅に閉じ込められている多くの海外企業の駐在員とその家族は、その間に味わってきた絶望と苦悩から、できるだけ早く中国から出国したいと考えているという。在中国ドイツ商工会議所が今月発表した調査では、中国に赴任中の社員の3割近くが中国を離れる予定だと回答した。こうしたことが積み重なれば、世界経済の在り方が今後、根本的に変わる可能性がある。売り上げの拡大を狙う多国籍企業はこれまで何十年も中国を海外の生産拠点として、あるいは世界最大の新興市場として最も重視してきた」

 

在中国ドイツ商工会議所が今月発表した調査では、「中国赴任中の社員3割近くが、帰国予定だと回答」している。これまで多国籍企業は、中国市場を世界最大として重視してきた。現在、その期待はすでに消え失せている。

 


(4)
国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計では2020年に、外国企業による新規直接投資先として中国が米国を抜きトップになった。だが、ここへ来て中国への投資は拡大するどころか、減少に転じそうだ。海外直接投資に関するデータを提供するフィナンシャル・タイムズ(FT)のfDiマーケットによると、外国企業が現地法人を設立して工場や販路を一から作る「グリーンフィールド投資」の四半期ごとの総額(計画を含む)は今年13月期、03年に統計を取り始めて以来、過去最低を記録した」

 

外国企業が、中国で現地法人を設立して工場や販路を一から作る「グリーンフィールド投資」の四半期ごとの総額(計画を含む)は、今年13月期に03年に統計を取り始めて以来、最低を記録した。これが、一時的な現象か。あるいは今後の停滞の初期か。注目される。

 


(5)「米調査会社ロジウム・グループのデータも同様の傾向を示している。EU企業による中国への海外からの直接投資(FDI)額は、長期にわたり計画されてきたある1件の企業買収によって押し上げられているものの、新規のグリーンフィールド投資総額はここ数年で最低の水準に落ち込んでいる。ロジウムのアナリスト、マーク・ウィツキ氏は「花は盛りを過ぎた」とした上で、中国政府が発表する公式のFDIデータには、多国籍企業の中国での収益も投資とみなすなど実態がかさ上げされていると指摘する

 

下線のような、FDI(対内直接投資)データでは、「嵩上げした」と見られる記事が現れている。「1~4月には、中国全土の実行ベース外資導入額が前年同期比20.5%増の4786億1000万元に達した。中国の外資導入構造は最適化が続き、中国市場は海外資本に対して力強く大きな魅力を持っている」(『人民網』5月27日付)

 

現実には、大幅な資本流出が起こっており、今年の純流出は3000億ドルとの予測も発表されているのだ。上記のような、1~4月にFDIで20.5%増は、眉唾モノである。

 


(6)「米中貿易戦争の摩擦を理由に、生産拠点を中国からベトナムやマレーシアなど東南アジアの国や地域、中南米、東欧に移す多国籍企業も急増している。加えてロシアを非難しない中国を前に、各社の間では中国もいずれ西側諸国と軍事的に対立しかねないという懸念が生じている。中国に進出している企業は、「EUと中国の関係が悪化した場合のリスクをどう軽減するかを真剣に考えざるを得ない状況」に追い込まれていると指摘する」

 

中国の地政学的リスクを計算する企業が増えている。米中対立それ自体が、中国リスクを高める結果になっている。中国が、台湾侵攻を声高に言い出せば、そのリスクが一段と高まるに違いない。