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中国政府は、長年にわたり行なっている新疆ウイグル族弾圧に関する秘密資料が、世界14のメディアで5月16日、同時公開されて大きな波紋を呼んでいる。

 

米国務省のプライス報道官は5月24日の記者会見で「衝撃を受けた」と述べた上で、「今回の新たな報道は、中国当局による残虐行為の証拠をさらに追加するものだ」と指摘。収容政策に関する習近平国家主席ら指導部の指示について「組織的な取り組みが中国政府の最高レベルの承認なしに実施されるとは考えにくい」と話した。

 


英国のトラス外相は24日の声明で「新たな証拠は、強制労働や宗教の自由への厳しい制限、親子の分離、強制的な出産制限や大規模投獄など、中国政府がウイグル族を並外れた規模で標的にしていることを示している」とし、引き続き中国に説明を求めていくと表明。

 

AP通信などによると、ドイツのベーアボック外相は5月24日に行った中国の王毅国務委員兼外相とのオンライン会談で、報道を引き合いに出し「人権は国際秩序の原理の一部だ。こうした告発に、中国側が対応することが重要だと考えている」として「透明性のある調査」を求めた。以上の報道は,『毎日新聞 電子版』(5月25日付)から引用した。

 

ドイツは、ナチスによるユダヤ人弾圧の生々しい記憶を抱えているだけに、敏感に反応している。これまでドイツは、中国融和路線を貫いてきた。今回の一件では、中国と訣別するほどの強い姿勢を見せている。

 

『大紀元』(5月31日付)は、「独首相、『中国融資は危機の源』と批判 対中依存軽減する考え」と題する記事を掲載した。

 

ドイツのオラフ・ショルツ首相は5月27日、中国が世界中で行っている「不透明な融資」は、新たな債務危機を引き起こす恐れがあると警鐘を鳴らした。

 

(1)「ショルツ首相はシュツットガルトで開催されたカトリック教会の討論会で、「中国の不透明な融資が発展途上国や新興国への脅威となっている。新たな債務危機を引き起こしかねない」と批判した。中国は、巨大経済圏構想「一帯一路」を通して低所得国に巨額の融資を提供し、「債務のワナ」を仕掛けていると批判を受けている。ショルツ氏は、欧州連合(EU)が昨年12月に発表した3000億ユーロ(約41兆1000億円)規模の世界投資構想「グローバル・ゲートウェイ」についても言及した。同構想は、中国の「一帯一路」に対抗する「真のもう一つの選択肢」になるとしている」

 


ドイツは、中国の「一帯一路」融資が発展途上国を「債務の罠」に陥れていると批判、EUが、中国搾取を阻止すべく約41兆円規模の世界投資構想について言及した。

 

(2)「ショルツ氏はさらに、「ドイツは経済的な懸念から中国の人権侵害への批判を避けるべきではない」、「ドイツ経済は多角化を進めて中国への依存を弱めるべき」と指摘した。同氏は、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権迫害についても言及し、「我々はこの問題で沈黙することはない」と強調した。中国はドイツの主要な貿易相手国であるが、「独ショルツ首相の対中態度は同国の対中政策の変化の一部である」とブルームバーグは指摘した」

 

ドイツは、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権弾圧を看過しないと強調した。具体的には、次のパラグラフで指摘されている。

 


(3)「ドイツ経済省は5月27日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の中国での新規投資に対する保証を拒否した。中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に挙げている。ドイツ誌「シュピーゲル」が報じた。同国のロバート・ハーベック経済・気候保護相(緑の党)は24日、新疆の人権侵害に関する新たな報道を受け、「人権問題の優先度を高めていく」と述べた」

 

ドイツ自動車企業は、中国自動車市場で牽引力になり、成長によって大きな果実を得てきた。しかし、中国政府による新疆ウイグル族弾圧を巡る極秘資料が、世界中に公開された現在、ドイツ政府は、VWの新規投資に対する政府保証を拒否することになった。

 


(4)「ハーベック氏は、「経済の多角化を図り、中国への依存を弱める。また、ドイツ企業の中国投資申請の際には、人権侵害や強制労働などを排除すべく綿密な審査を行う」としている。人権を理由に投資保証が拒否されたのは今回が初めて。ドイツは今後、人権をより優先させる。中国の投資プロジェクトはいずれ禁止になるだろう」とハーベック氏は明かした」

 

ドイツ政府の中国への怒りは、相当なものがある。今後、中国の人権弾圧を理由に、ドイツ企業の中国投資プロジェクトを禁止するというのだ。ナチスによる世紀の犯罪を抱えるドイツだけに、中国の人権弾圧に対して敢然と立ち向かう姿勢を見せている。この流れは他の西側諸国へ拡大するであろう。そうなれば、中国経済はパニックへ落込む。