ロシアへ経済制裁が始まって3ヶ月経った。ロシア国民の市民生活は、着実にその影響が現れている。エアバッグ不足で、新車ではこれが装備されないままで販売許可が出た。便器も不足している。映画作品の輸入禁止で,映画館は9年前のハリウッド作品を上映するほどの苦境に立たされている。
米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月3日付)は、「制裁下ロシアでエアバッグ不足 便器・映画も」と題する記事を掲載した。
西側諸国の制裁が、ロシアの消費者に打撃を与え始める中、在庫は底をつきつつある。企業や消費者は、価格が7倍に跳ね上がった自動車部品など希少な製品を購入したり、古い映画や品質の劣る代替品で済ませたりしている。
(1)「状況はさらに悪化しそうだ。物資の不足は、ロシアのウクライナ侵攻を受けた西側諸国による制裁の影響を測る現実世界の指標となっている。エコノミストたちは、ロシアが今年、深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想しているが、ロシア政府はこれまでのところ、値上がりした石油・ガスを売却して得た資金で打撃を和らげることができている」
エコノミストは、今年のロシア経済が深刻なリセッションになると見ている。制裁による部品不足で生産が止まることや、消費の手控えによってロシア経済がマイナス10%を超える急落は不可避の事態になっている。
(2)「ロシアの新たな「物不足経済」が姿を現し始めるにつれ、長年にわたり西側諸国からの輸入に大きく依存してきた同国経済が直面する課題が浮き彫りになっている。プーチン大統領は、西側諸国の経済的な電撃戦は失敗していると主張して、戦争の影響を小さく見せようとしている。政府は何年にもわたって芳しい結果が出ていないにもかかわらず、輸入代替政策を強化している。輸入代替政策は、外国製品を自国製品で置き換えようとするものだ」
耐久消費財の半分近くが、輸入依存である。これが杜絶する影響は甚大だ。価格高騰は必至である。輸入代替政策が、軌道に乗らなかったのである。
(3)「一部の当局者は、ロシア経済が直面する問題や長期的課題を認識し始めている。ロシア中央銀行のアナリストは工業化退行の時代、つまり、高度でない技術に基づいた経済成長の時代が来ると予想している。ロシアのアンドレー・クリシャス上院議員は、輸入代替政策は失敗していると述べる。クリシャス氏は先月、対話アプリのテレグラムに、「分野別の誇張された報告以外に見るべきものは何もない。国民は消費財やその他の多数の分野で、こうしたことを目にしている」と書き込んだ」
ロシア中銀のアナリストは、工業化退行時代が来ると指摘する。「ロウテク時代」である。輸入品でハイテク時代を味わったが、再びロウテク時代へ逆戻りする。
(4)「航空会社は部品不足のため、使用する機体を減らさざるを得なくなっている。ロシアを代表する航空会社アエロフロート・ロシア航空傘下の格安航空会社ポベーダ航空は、使用しているボーイング737―800型機の数を41機から25機に減らした。新たな供給経路が見つかるまで予備の部品在庫がもつようにするためだ。ロシア最大の航空機メーカーである国営の統一航空機製造会社(UAC)は4月、1990年代に運航を開始した長距離ジェット機「Tu-214」の増産を発表した。Tu-214はロシアでサービスを中止したボーイングやエアバスの航空機に代わるものとして必要とされているほか、UAC自身の新型高性能機の部品が不足しているという理由からも、必要とされている」
航空会社は、部品不足で使用する機体を41機から4割も減らしている。ロシアは、1990年代に国産したTu-214が、再登場するという。まさに、1990年代への逆戻りである。
(5)「ロシアの空港でつくる協会は先月、運輸省に対し、空港の保安検査機器が法定上の使用期限に達しつつあると警告した。協会は、政府が使用期限を延長しない場合、保安検査スタッフは乗客とその荷物を手作業で検査しなければならなくなるとしている。こうした機器を国産品に代えるには少なくとも5年かかるという」
空港の保安検査機器が、法定上の使用期限が到来する。そうなるとスタッフは、乗客とその荷物を手作業で検査しなければならなくなる。
(6)「映画業界では、古いハリウッド映画やソ連時代の映画が再上映されている。ウォルト・ディズニー、ソニー・グループ、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーがロシアでの新作映画の配給を停止したためだ。映画の再上映では赤字を食い止められていない。ウラル地方と西シベリアで映画館チェーンを展開するオーナーによれば、2月24日のウクライナ侵攻以降、観客数は70~80%程度減少している」
映画館は、米国から新作映画が輸入できないので、9年前の作品を再上映している。観客は7~8割減だ。
(7)「政府統計によると、ロシアの自動車生産台数は4月に前年同月比で61%減少した。部品不足の影響だとみられる。政府は5月上旬、自動車に関する規制を緩和した。これにより国内で生産される乗用車は、エアバッグやABSセンサー、操縦性向上のための電子安定制御技術を搭載しなくても販売できるようになった。こうした車はまだディーラーには届いていない。ロシアの自動車情報誌「speedme」の編集者ニキータ・ノビコフ氏は、ロシアの自動車業界が最高級車を生産できるようになる夢の実現は、少なくとも10年は先送りされたと話した」
エアバッグやABSセンサーが、装備されない新車が発売される。輸入杜絶の結果である。ロシアで最高級車が生産できる時期は、少なくとも10年先送りされた。
(8)「ウクライナ国境に近いロシア南部の都市ブリャンスクにある自動車修理店のオーナー、イゴール氏(36)によると、乗用車を修理に出さなくなった人もいるという。同氏の顧客は、スペア部品の価格上昇と、今では欧州製よりも一般的になっている中国製・トルコ製部品の品質の低さによって、購入意欲をそがれている。かつては2000ルーブル(約4000円)だった部品の価格が、今は1万5000ルーブルになっているという。イゴール氏は、ソ連崩壊直前の時期ほどの物不足にはならないとみるが、国民は物不足経済を実感するだろうと話した。「商品棚が空っぽになることはない。しかし、棚に商品があってもわれわれには買えなくなるだろう」と」
自動車部品価格は、7倍を超えている。修理を断念する顧客も出てきた。棚に商品があっても顧客には買えなくなるだろうと、悲観的である。


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