中国による新疆ウイグル族弾圧を巡る秘密文章や写真などが5月中旬、大量に流出して世界の注目を集めている。それによると、100万人以上のウイグル族が強制収容され、逃亡すると射殺せよとの命令まで明らかになっている。この蛮行は、習近平氏の指示であることが明記されていた。
『ニューズウィーク 日本語版』(6月3日付)は、「強引に泊まり込んで性的虐待、中国『ゼロ・ウイグル政策』は習近平の指示だった」と題する記事を掲載した。
大量の顔写真や公文書、演説原稿、収容者名簿──。中国当局のデータベースから流出し、米英独のメディアや国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によって公表された一連の文書は、中国共産党がウイグル人のアイデンティティーと文化を徹底的に消し去ろうとしていることを改めて明らかにした。
(1)「なかでも注目されるのは、新疆ウイグル自治区を視察した趙克志(チャオ・コーチー)公安相が2018年6月に行ったとみられるスピーチの原稿だ。「機密文書、要返却」というスタンプが押された文書は、中国共産党の思考と姿勢、そしてウイグル人をはじめとするテュルク系民族に対する抑圧措置の理論的根拠を示している」
趙公安相が、2018年6月に行ったとみられるスピーチの原稿である。これによって、新疆ウイグル族100万人が強制収容所へ入れられている理由を明らかにしている。
(2)「それと同じくらい重要なのは、趙がこのスピーチの中で、残酷なウイグル人抑圧政策を先導しているのは、習近平(シー・チンピン)国家主席であることに、繰り返し言及していることだ。なにしろ全13ページにわたるスピーチ原稿で「習(共産党)総書記」や「習近平同志」など、習の名前は14回も出てくる」
この残酷な犯罪が、習近平氏の指示の下に行なわれていることだ。
(3)「趙はスピーチの冒頭から、100万人とも言われるウイグル人を裁判もなく拘束する措置は、習の指示に基づいていることを明確にする。「今回の新疆調査研究訪問は、習近平総書記と李克強(リー・コーチアン)首相の承認を得たものであり、習近平同志ら党中央の核心における新疆工作への高度な重視と関心と支持を十分反映している」というのだ。さらに、「本調査研究の目的は、1月6日に習近平総書記が出した新疆統治戦略と重要指示を実行し、テロとの戦いをさらに深め、新疆の対テロ治安工作の好ましい経験と実践を総括・学習することであり、収容所の管理と、新疆生産建設兵団の南方への発展についての調査研究に重点を置く」としている」
新疆ウイグル族弾圧のきっかけは、北京市内でウイグル族が弾圧抗議目的で、自動車による追突事件を引き起こした事件への報復である。中国共産党の弾圧があったから、抗議テロが起こったものだ。それに対して100万人規模の強制収容は、現代の「ナチス犯罪」と言える。
(4)『収容所の管理』という表現に注目してほしい。趙は、約100万人が拘束された措置や政策の最大の考案者が習近平であることを明言している。権力の頂点にいる習の明確な承認がなければ、一閣僚がこんなことを言うはずはない。中国共産党の幹部であるだけに、趙のスピーチのテーマは安定だ。新疆ウイグル自治区で取られている残酷な措置の最大の目的も、社会と政治の安定とされる。そして反体制派を徹底的につぶす作戦において、10の「よくできた点」があったと報告している」
この強制収容が、習近平氏の発案によると明記されている。
(5)「このうち2点目として、「脱過激化」が挙げられている。「地下での説教やコーランの学習を断固取り締まる」などで、過激化の「源泉をよく管理した」というのだ。「宗教的過激主義イデオロギーの継承システムを断絶した」とも述べられている」
中国政府への過激的抵抗を封じるために、宗教弾圧を行なったと明らかにしている。
(6)「第3のよくできた点として、趙は「大衆工作がうまくいった」と指摘する。「『各民族の家族のような団結』と、民族の団結・友情活動を常態化させ、幹部を草の根レベルで送り込み、あらゆる村に足を運ばせた。幹部が訪れたのは全世帯におよび、人心を最大限に結束させた」という。これは、漢人の「親戚」を何週間も、場合によっては何カ月も自宅に住まわせてやらなければならなかったという、複数のウイグル人の証言を裏付ける内容だ。もちろん招かれざる客は親戚などではないし、同居を断るという選択肢もなかった。そんなことをすれば逮捕され、収容所に送られる恐れがあるのだから」
大衆工作として、中国官憲がウイグル族の家庭へ居座り非人道的な行為をしている。
(7)「ウイグル人らの話によると、「客人」はある日突然やって来て、いつ出て行くとも分からず居座る(中国当局は、彼らはウイグル人に「招かれた」のだと主張する)。この客人は、子供を含め恐怖に怯える家族の外出を尾行したり、あれこれ尋問したりする。多くの場合、この招かれざる客は男性で、ウイグル人女性に性的虐待を働いたことが報告されている。なにしろウイグル人家族は、雨風をしのぐ場所を提供するだけでなく、ベッドまでも客人と共有することを命じられたのだ」。
中国共産党が、手段を選ばないで目的を遂行する恐怖を示している。
(8)「これまでに分かっている資料や情報を総合すると、中国政府が新疆ウイグル自治区で「ゼロ・ウイグル政策」を取ってきたことは明らかだ。それは、新型コロナウイルス感染症の流行に対して中国政府が執拗に取り続けるゼロコロナ政策と多くの共通点がある。新型コロナも、ウイグル人のアイデンティティーや文化も、共産党から見れば有害なウイルスが引き起こす病気にほかならない。だから何があっても、ウイグル人の精神や性向、気質、民族性、宗教観を根絶しようとする。中途半端でやめること、ましてや妥協策などあり得ない。彼らが言うところの危険なウイルスに、存続の余地を与えてはならないのだ」
中国政府が行なった新疆ウイグル族弾圧の一端が、こうして世界に明らかにされた以上、中国が無傷ですむはずがない。欧米では、激しい怒りを呼んでおり、中国との経済関係は断ち切られる方向にある。特に、ドイツ政府はドイツ企業による中国投資を禁止する方向へ進むであろう。


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