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6月15日は、習近平氏の69歳の誕生日である。プーチン氏が、誕生日祝いの電話をして首脳会談となったものだ。プーチン氏は、何とか習氏からウクライナ侵攻への支持を取り付けたかったが、習氏は明言せず空振りに終わった。

 

一昨年の習氏の誕生日では、ヒマラヤ山中で中印両国の軍隊が衝突した。インド兵20人と中国兵数名が死亡する大事故になった。これに怒ったインドは、中国のIT企業を国外追放する事態となり、中国は手痛い代償を払わされた形だ。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月16日付)は、「習氏、ウクライナ侵攻支持を明言せず 中ロ首脳会談」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平国家主席は15日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行った。中国国営中央テレビ(CCTV)によると、習氏からは今回も、ロシアのウクライナ侵攻を公に支持する発言は出なかった。

 


(1)「習氏は、両国間の「良好な発展」を歓迎する一方、中国は状況や歴史的観点に基づいてウクライナ問題を独自に判断する姿勢を強調した。同氏はロシアが2月にウクライナに侵攻した翌日にも、同様の考えをプーチン氏に伝えていた。習氏は会談で、すべての当事者が危機の「適切な解決」を模索すべきであり、中国は引き続き自らの役割を果たしていくと述べた」

 

習氏は、プーチン氏に対して「ウクライナ侵攻支持」発言を控えている。これは、西側諸国との関係悪化を危惧したものである。西側諸国は、習氏がロシアのウクライナ侵攻を非難しないことに強い疑念を深めている。中国が、台湾侵攻を意図している結果と見ているのだ。習氏は、「八方美人」をねらっているが、外交的に失敗である。

 


(2)「さらに、ロシアとの戦略的協力を一段と進める考えを表明。両国が核心的利益や主権、安全保障などの重要な問題で引き続き支援し合うとともに、国連をはじめとする国際機関での連携を強化することが望ましいと述べた。一方、プーチン氏は、今年に入ってから両国の実務レベルの連携が着実に深化していると述べた。会談は習氏の69歳の誕生日に行われた」

 

このパラグラフでは、習氏が「中ロ枢軸」を形成しようとしていることを明らかにしている。両国が核心的利益や主権、安全保障などの重要な問題で引き続き支援し合うというのだ。国連で中ロは一体化し今後も「横車を押す」と声明しているようなものだ。中国は、ウクライナ侵攻への軍事的・経済的な協力をしないものの、その他の面では協力するとしている。

 


西側から見れば、この中ロ枢軸は容認し難い存在であろう。北朝鮮問題では、露骨なまでに中ロが一体化して北朝鮮擁護に出ているからだ。中国国内では、こういう中ロ一体化の動きに対して反対はないのか。

 

反対を暗示するのが、中国の次期外相候補問題だ。王毅氏は定年で来年3月に引退するが、その後任を巡って、これまで最有力候補とされた外交部第一次官が、このほどメディア部門へ転出することになったという。その理由が、余りにも「親ロ派」過ぎることで反対論が出たというのだ。となると、中国国内は「親ロ派一本」で固まっているのではなさそう。

 


『大紀元』(6月15日付)は、「
中国外相候補、メディア規制当局に異動 対露発言が引き金か」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が14日発表した新しい人事によると、外務省の楽玉成次官(58)がメディア規制当局、国家広播電影電視総局(以下は広電総局)の副局長に任命された。楽氏の異動は中露関係を巡る指導部の対立に関係しているとみられる。楽氏は2018年から、筆頭次官として「日々の対外業務を担当していた」という。同氏は6人いる次官のうち、唯一中国指導部の重要会議に出席できる共産党第19期中央委員会の補欠委員である。香港の親中メディア「星島日報」は5月26日、楽氏が広電総局の副局長に任命される予定だと報じた。

 

(3)「産経新聞の矢板明夫・台北支局長は11日、フェイスブック上で、楽氏は次期外相候補の1人とされていると指摘した。10年前に外相に就任した王毅氏(68)は、すでに引退年齢に達した。矢板氏は、楽氏の人事異動は左遷に相当するとの見方を示し、同氏が外交業務で何らかの過ちを犯したのではと推測した。米国の中国語メディア「光伝媒」が12日に掲載した評論記事は、楽玉成氏は党内の習近平派かつ親露派であるとした」

 

中国外交部の第一次官楽玉成氏が、外交部長に昇格できないのは、「相当の理由」あってのことだろう。楽氏は、習近平派かつ親露派であると言う。普通なら、この二要件で昇格は決定的のはずだ。それが外されたのは、党内に反習近平派と反ロシア派が大きな力を持っていることを示している。

 


(4)「記事は情報筋の話を引用し、指導部内部で中露関係を巡って対立を深めていると示した。反習近平派は、習氏の親露反米路線を批判し、欧米側からの経済制裁を回避するためにロシアと距離を置いたほうがよいと主張。これを受けて、共産党中央政治局は楽氏を広電総局に異動すると決めた。習近平氏はこれに反対した」

 

下線部は、常識的な線である。中国が、西側諸国との縁を切られれば大きな損害を被る。これは誰にも分る理屈だ。それにも関わらず、習氏がプーチン氏へ傾斜するのは、自己保身であろう。同じ専制主義者がいれば、習氏の独裁隠しに利用できると見ているに違いない。習氏のプーチンへの友情は、完全に打算に基づく。

 

(5)「楽玉成氏は、今年2月4日に行われたプーチン露大統領と習近平氏の首脳会談後、会談の成果について「中露の協力関係に上限はない」と報道陣に述べた。この発言を海外メディアは大きく取り上げ、中国はウクライナ侵攻を計画したロシアを支持しているとの見方が広まった。楽氏は56日に開かれた世界20カ国主要シンクタンクとのオンライン会議で、米国が「ウクライナを犠牲にして欧州を支配し、同時にロシアの弱体化を図り、覇権と強権を続けようとしている」と強く批判した」

 

「中露の協力関係に上限はない」は、有名な言葉になった。国家間で「限りない友情」を誓い合うとは異例である。同盟関係になくてこの台詞が出るのは、双方に個人レベルでの「隠し事」盟約があるに違いない。お互いに「終身権力者」なろうと話をしているのであろう。