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中国は、米国から半導体技術・設備・製品の輸入禁止措置を受けている。そこで、高級品への取り組みを諦め、中低価格ゾーンでニッチな市場に焦点を合わせている。韓国の5月貿易収支は、対中半導体貿易収支が主因で赤字の事態になった。中国が、中低価格の半導体輸出で攻勢をかけてきた結果と見られる。

 

韓国は、これまで対中貿易で黒字を出してきた。それが、突然の変化である。中国がゼロコロナによって需要が急減して、輸出攻勢をかけてきたと読める。

 


『中央日報』(6月20日付)は、「韓国、対中貿易で初めての赤字 中国半導体企業7万社「人海戦術」広げた」と題する記事を掲載した。

 

韓国が、中国との貿易で27年9カ月ぶりの赤字を記録した。1994年8月以来初めてのことだ。関税庁によると5月の対中輸出額134億ドルに対し輸入額は145億8000万ドルを記録し、赤字幅が11億ドルを超えた。今月の対中貿易の流れも良くない。10日までですでに6億ドル以上の赤字を記録中だ。韓中修交30年、中国との貿易不均衡が現実化している。

 

(1)「現在までの調査によると、対中輸入品目1位は半導体(16.5%)だった。バッテリー素材である精密化学原料(10.3%)、コンピュータ(5.5%)などが後に続いた。特に先月の中国の半導体輸入額は24億ドルで、前年同期比40.9%増加したことがわかった。反対に韓国の対中輸出もやはり1位が半導体だったが、この期間の輸出増加率は11%で中国が韓国より4倍近く速い増加傾向を見せた。半導体輸出入変動幅が対中貿易不均衡に最も大きな原因として指摘されたのだ。いったい中国の半導体産業にどのような変化が現れているのか」

 

中国の半導体輸出が突然、5月に増えたのは中国国内の需要が落ちている結果とも見られる。そうでなければ、辻褄が合わないのだ。徐々に増えてくれば納得できるが、突然の増加である。先ず、この点を疑ってかかるべきだろう。

 

(2)「米国の集中牽制の中で中国は半導体技術の国産化に死活をかけた。2015年に「製造2025」計画を発表した中国は、10大戦略産業の最初に次世代IT技術と半導体を挙げ、国家半導体ファンドを作った。中国半導体協会によると2019年まで1387億元を製造・設計など上位50社の半導体企業に支援したのに続き、2020年に発表された第14次5カ年計画により2041億元規模の半導体ファンドを作り、また支援している。中国国務院は2025年までに1兆元を投じると明らかにした状態だ」

 

中国は、これまで半導体需要のうち、純国産(外資企業生産を除く)で供給できるのは約10%とされている。内需が冷え込んで、輸出に活路を求めている可能性が大きい。

 


(3)「中国の半導体業界の状況は時々刻々と変わっている。大きく3つに要約される。
1)半導体設計技術の向上=中国独自の半導体設計(ファブレス)技術が急速に発展している。台湾の市場調査会社トレンドフォースが9日に発表した1~3月期の世界10大半導体設計企業ランキングで中国のウィル・セミコンダクターが初めて9位に入った。米クアルコム、エヌビディア、ブロードコム、AMDなど名だたる世界的技術企業の隊列に合流した。ウィル・セミコンダクターはカメラに使われるCMOSイメージセンサー半導体の設計を主力にする会社だ」

 

中国で、半導体設計技術が高まっている可能性はある。ただ、それを製造できる技術が中国にないことが悩みである。米国の制裁の影響が大きい。

 

(4)「半導体設計企業が成長するのは、中国内の多様な半導体需要のためだ。半導体設計企業はすでに1600社を超えた。コンピュータ用CPUや携帯電話用アプリケーションプロセッサ(AP)のような14ナノ級以下の最新半導体以外に、日常生活で特定用途に使われる半導体の種類は相当にある。中国企業が小規模で多角化した半導体需要に対応し中低価格半導体設計に集中する様相だ」

 

中国は、コンピュータ用CPU・携帯電話用アプリケーションプロセッサ(AP)に使われる、14ナノ級以下の最新半導体生産が不可能である。これは大きな痛手だ。中国半導体産業は、まさに揺籃期にある。

 

(5)「2)現在、サムスンと台湾TSMCは3ナノメートル級半導体開発競争が激しい。中国1位の半導体製造企業(ファウンドリー)のSMICは、14ナノ級工場が上海に1カ所あるだけで、28ナノ級以上だけ製造が可能だ。米国はナノプロセスに必須のオランダASMLの7ナノ級露光装備の中国への輸出も禁止した。技術確保に支障が出るとSMICは高度な装備が必要でない旧型半導体チップ生産に注力し、これは業績上昇につながった」

 

中国は、28ナノ級以上だけの初歩的な半導体だけが製造可能である。中国のSMICは、この分野に特化して生産している。

 

(6)「昨年の中国の半導体生産量は3594億個で、前年比33.3%増加したのも同じ背景だ。国際半導体装備材料協会(SEMI)によると、中国は2年連続世界で最も多くの半導体生産装備を買った国だった。1年だけで296億ドルに達した。最新設備ではなかった。ブルームバーグは、「中国の半導体生産能力の成長は世界が中国の供給にさらに依存することになるということ」と指摘した」

中国は、28ナノ級以上の中古製造設備を輸入した。この分野で、競争力を高める戦術に転換した。これによって製造技術の腕を磨くという狙いもあろう。歩留まり率の向上である。



(7)「3)人工知能関連半導体強勢=顔認識や指紋認識、音声認識機能に使われるディープラーニング基盤の中国AI半導体は競争力が高いと評価される。中国の技術開発の流れとかみ合っているためだ。
中国はコロナ禍を経て防犯カメラの顔認識機能や熱感知カメラの性能を強化した。自動運転車開発をリードするために前方の障害物に対する認識誤差を減らす技術に集中した。インテルやクアルコムなどの最新CPU設計やサムスンのメモリー製造能力に追いつくのは困難という判断の下で次のニッチ市場攻略に注力したのだ」

中国は、高級半導体への道を諦め、ニッチ市場の半導体生産に活路を求めている。これまでの、中国半導体需給では、国産化率(国内企業+外資系企業)が17%程度である。残りは輸入半導体だ。この中国が、輸出攻勢をかけるのは内需不振がテコになっていると見られる。