テイカカズラ
   


欧米企業は、ロシアからの撤退方向で流れは一本化されているが、日本企業は残留する意思が圧倒的である。撤退は、全体の4%に過ぎない。撤退すれば、ロシア政府に接収されることは確実である。その後釜として、中ロの企業が乗り込んでくることも明らか。日本政府は残留方向で旗を振っている。投資規模が大きいだけに、むざむざと中ロ企業の手に渡したくないという「意地」も見え隠れしている。

 

『毎日新聞』(6月17日付)は、「『撤退か残留か』ロシア進出の日系企業の悩みとは」と題する記事を掲載した。

 

ロシアに進出している日系企業のうち、現地からの撤退を表明したのは全体のわずか4%にとどまることが、日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査で明らかになった。ロシアのウクライナ侵攻を受け、米マクドナルドや仏ルノーなどがロシア撤退を表明している。これに対して、撤退を表明する日本企業は少ない。取材を進めると、ロシアという特異な市場でビジネスを行う日本企業の複雑な立場が浮かび上がった。

 


(1)「ジェトロによると、ロシアに進出している日系企業で、「モスクワ・ジャパンクラブ商工部会」と「サンクトペテルブルク日本商工会」に所属する企業は211社ある。多くは自動車メーカーや商社など大企業だ。ジェトロはこの211社を対象に5月、四半期に1度の景況感調査を行い、90社から回答を得た。その中で「今後12年の事業展開見通し」を尋ねたところ、「ロシア撤退」を表明したのはわずか4%。残る96%の企業は規模を縮小するなどしても撤退せず、残留する意向を示した」

 

規模を縮小しても、ロシア残留希望が強い企業が96%と圧倒的である。撤退すれば、中ロ企業が後釜の座ることが目に見えているだけに、意地でも頑張ろうというのであろう。

 

(2)「民間調査会社の帝国データバンクがロシアに進出する日本の上場企業168社を対象に5月に行った調査では、「完全撤退」を表明したのは3社にとどまった。撤退は全体の約  2%で、ジェトロの調査と傾向は同じだった。ロシアからの撤退を表明した日系企業が4%と少ない現状について、ジェトロは「外国企業がロシアから撤退した場合、ロシア政府が接収するという法案がロシアの上下院で審議中のため、日系企業は考えあぐねているのではないか」(海外調査部欧州ロシアCISか)とみている」

 

帝国データバンクの調査でも、同じような結果が出ている。日本企業は、ロシア市場と相性が良いのだろう。成長性を見込んでいるに違いない。

 


(3)「法案が成立すれば、日本企業が撤退した場合、工場の生産設備をロシアや中国など第三国が取得する可能性が高い。仮にウクライナとの問題が終結した後にロシア市場に再参入しようとしてもハードルは高くなると日系企業は考えているようだ。ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン12」では、大手石油会社の米エクソンモービルと英シェルは撤退を表明した。しかし、日本政府は67日に閣議決定した「エネルギー白書」で「日本が撤退し、権益をロシアや第三国が取得する場合、有効な制裁とならない可能性がある」として、権益を維持する考えを表明している日系企業の多くも同様に「ロシア撤退で自社の工場が接収されるくらいなら、今は『忍』の一文字で、今後の推移を見守った方がよい」(関係者)と考えているという

 

日本政府は、日本企業がロシアから撤退しても、他国が権益を維持すれば事業が継続されるので、何ら制裁にはならないという理由である。日本企業以外の企業は存在しない場合、撤退すれば制裁になる。ライバル企業の存在する状態では、撤退による圧力にはならないのだ。

 


(4)「エクソンモービルやシェルなど世界市場でビジネスを展開する欧米企業は、ロシア市場を失う損失は相対的に少なく、むしろロシア市場に残ることによる「レピュテーションリスク」(企業の信用やブランド価値の低下)を気にしているようだ。ロシアにはトヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車など自動車メーカーやブリヂストン、横浜ゴムなど自動車関連の製造業が多く進出している。武田薬品工業、ユニ・チャームなど業界を代表する企業も多い。これらの企業の多くは現地生産や販売を一時停止し、駐在員も大半が帰国しているが、正式に撤退を表明した著名企業は見当たらない」

 

ロシア市場に残ることで生じる「レピュテーションリスク」も、無視できない要素である。このリスクを重視すれば、撤退方向も選択されるが、現状は「様子見」である。

 


(5)「ロシアは人口が1億4000万人で、市場としては有望とする見方があった。自動車など工業製品のほか、近年は健康食ブームに乗った日本食や若者にはアニメーションなどの人気が高く、「日本の商品に愛着をもってくれる消費者がある程度いる」(ジェトロ海外調査部)という。ロシア市場には中国や韓国、トルコなども積極的に進出し、日本とライバル関係にあった。現地の日本人駐在員の中には「ここで撤退するのはビジネスチャンスの損失」と感じる人も多いという」

 

現地で市場開拓してきた関係者の立場からすれば、撤退という選択は「最後の最後」の手段であろう。現状では、事業をストップしているが、今後のロシア経済が深刻な事態に陥るかどうか。その見極めを付けてから最終判断しても遅くはない。