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中国の長かった「ゼロコロナ」に伴う強力規制が緩和された。これまで、外出禁止で止められていた住宅成約が、回復に転じた。だが、力強さに欠けており一巡後は緩やかになると見られる。住宅業界の本格的な回復は、まだ望めそうにないようだ。皮肉にも、住宅建設関連の鉄鋼製品と鉄鉱石や原料炭の価格が下落して、警戒信号を出している。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月21日付)は、「中国不動産株、割安でも本格回復はまだ先」と題する記事を掲載した。

 

中国の不動産業界はここ数年、悪材料の集中砲火にも耐えてきた。だが、珍しく好材料が出てきたことで不動産株に飛びついた投資家は、先走ってしまったのかもしれない。

 


(1)「中国の不動産開発株は20日の取引で大幅に上昇した。不動産販売が前週比で大きく伸びたことが明らかになったためだ。金融情報サービスのウインドの統計では、先週の中国30都市の不動産取引件数は前週比43%増加した。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が長引いた今春以降、上海やその他の都市で回復が急ピッチで進み、不動産取引件数は今では1年前とほぼ同水準になっている。香港市場のハンセン中国本土不動産株指数は20日、前週末比6.%上昇して引けた。それでも指数はまだピーク時の半分弱にすぎない」

 

6月第3週の住宅成約件数は、前週比で43%も増加した。これまでの繰り延べ需要が表面化したものと見られる。一巡後は、増加率は低下すると予測される。なにしろ2ヶ月も外出禁止令が出ていたのだから、繰り延べ需要がたまったとしても不思議はない。

 

(2)「不動産株の復活には、恐らく繰延需要が寄与した。コロナ関連規制が最も厳しかった時期にマンションを購入できなかった人々がようやく一斉に動き始めており、需要は当面続くのかもしれない。市場は、不動産業界の株価が割安になったことに魅力を感じているだろう。不動産株の予想PER(株価収益率)は現在2~3倍程度で推移している。ただノムラによると、不動産開発各社の利益見通しも引き下げられる公算が大きい」

 

不動産株の予想PER(株価収益率)は現在、2~3倍程度である。完全に市場から見捨てられている状態だ。肝心の不動産企業の業績は、下方修正含みである。

 


(3)「現在の株価回復が、持続可能かどうかを見極めるのはまだ早い。一つには経済がまだ立て直っておらず、若年層を中心に労働市場がいまだ低迷していることがある。規模の異なる都市間での格差も広がりつつある。ウインドの直近の統計によると、いわゆる3級都市は先週の不動産取引件数がいまだ前年の水準を下回っており、他都市の販売増加の波に乗ることができなかった。また、住宅価格は5月に1級都市で前年同月比3.5%上昇した一方、3級都市では2.2%低下したことが政府統計で明らかになっている。これは恐らく、上海や北京といった大都市での供給ひっ迫を反映したものだろう」

 

住宅需要が回復するには、景気回復が大前提である。失業率の高止まりが懸念されている状況で、住宅を買う人間はいない。まず、「食」=「職」の確保ができてから「住」へ関心は向くはずだ。

 


(4)「興味深いことに、本格回復への疑問は国際商品(コモディティー)市場でも見て取れる。鉄鉱石と原料炭の先物相場は20日、いずれもおよそ11%値下がりし、鉄鋼製品の価格も下落した。市場は不動産の回復やインフラ関連の景気刺激策による需要が思ったほど強くないと考えているようだ。鉄鉱石価格はこれで年初からの上昇分を全て失ったことになる。直近の住宅販売統計は、投資家にわずかな希望を与えるものだった。だが、中国の不動産開発業者の苦悩は、まだ終わったというにはほど遠い」

 

住宅関連産業で、主なものは鉄鋼である。鉄鉱石と原料炭の先物相場は20日、いずれも約11%も値下がりした。鉄鋼製品の価格も下落したのだ。住宅販売件数増加に対して、これら関連分野で下落しているのは象徴的である。住宅は、回復しないと見ているのだ。