あじさいのたまご
   

笛や太鼓で騒いでいる、中国の半導体産業の実力やいかに。質で計れば微々たるもの。量で計れば「自給率」が尺度になる。中国では、国産メーカーと外資系メーカーが半導体を生産している。純然たる国産半導体の自給率は「数パーセント」が、掛け値のないところというのだが。さて、

 

『日本経済新聞 電子版』(6月22日付)は、「中国半導体産業の実力、『自給率』で測る難しさ」と題する記事を掲載した。

 

中国の半導体産業の実力を測る指標として、自給率に関心が集まっている。中国政府が産業振興策に数値目標を盛り込み、その達成度合いは経済安全保障を巡る議論などで目安となっている。ただ、自給の定義など見方次第で数値が大きく変わるため、中国半導体への評価がブレる一因にもなっている。

 


(1)「米調査会社ICインサイツは5月中旬、中国でのIC(集積回路)生産は2026年時点で中国のIC市場の21.%に相当するとの予測を公表した。26年における中国のIC生産額を582億ドル(約7兆8000億円)、IC市場規模を2740億ドルと予測し、割り算で自給率を導き出している。21年実績は16.%だった。同社は一方で、この数値が外資メーカーの中国工場による生産を含むと説明する。中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国に本社を置くメーカーによる中国生産に限定すれば、21年の自給率は6.%にとどまると指摘した」

 

中国の半導体生産シェアはどのくらいか。自動車などは、はっきりと台数が確認されているが、半導体では正確な生産シェアが不明である。中国政府の発表している数字は、「デタラメ」で政治的目標を上げているに過ぎない。米調査会社ICインサイツの統計に頼るほかないのが現実だ。

 


(2)「ICインサイツは4月上旬にも、メーカーの本社所在地別でみた21年のICの世界シェアを発表済みだ。中国勢はわずか4%にとどまり、米国(54%)、韓国(22%)、台湾(9%)、欧州(6%)、日本(6%)の後塵を拝している。

 

中国勢の生産シェアは、ICインサイツによれば21年で4%としている。日欧の各6%を下回っているのだ。

 

(3)「中国では、半導体の自給率が一般市民の興味の対象にもなってきた。この種の議論は、中国政府が15年に発表したハイテク産業振興策「中国製造2025」が出発点となっている。同年5月の「中国製造2025に関する通知」は「核心的な基礎部品・カギを握る基礎材料」について、20年に40%、25年に70%の「自主保障を実現する」との目標を盛り込んだ。自主保障の定義は不明だが、ICインサイツはこれを中国のIC自給率の目標と解釈しているもようで、自社の推計値との乖離(かいり)を毎年、英語で指摘してきた。この数字をもとに中国の半導体を分析・議論する産業専門家やメディアは多い」

 

中国政府は、誇大宣伝して自国国力を国民にアピールし、共産党政権の正統性を訴えている。半導体生産シェアもこれに利用されている。

 

(4)「一方で、中国政府が15年10月に公表した「中国製造2025重点領域技術ロードマップ」はICの自給率が15年時点ですでに41%あると指摘。20年に49%、30年に75%まで高める目標を掲げている。17年の改訂版では16年時点の自給率を33%としたものの、目標を20年に58%、30年に80%と上方修正している。中国語が読める中国専門家はこちらを公式な数値と見なしている。とはいえ、この数値は中国のIC輸入が依然として高水準なこととつじつまが合わず、政府による印象操作の疑念が残る。そして、いずれの数値もICインサイツの推計とかけ離れている。実態はいったいどうなのだろうか」

 

中国の半導体輸入額は、これまで原油を上回るとされてきた。それだけ、外国製の半導体に依存している事実を物語っている。

 


(5)「中国の独立系調査会社、芯謀研究の見立てが参考になる。同社は4月中旬、中国ICメーカーの21年の世界シェアが9.%だったとの推計を明らかにした。海外の調査会社は中国での情報収集体制が貧弱とし「4%は明らかに低すぎる」とICインサイツを批判した。では、芯謀は中国の半導体自給率をどう分析しているのか。同社の創業者でもある顧文軍・首席アナリストはブログで「半導体チップの国産化の正確な定義を寡聞にして知らない」と宣言している。つまり、自給率を算出していない。中国の技術力の判定はどの分野でも難しいが、半導体自給率も「上昇傾向にはあるが、明確な数値はない」が最大公約数なのだろう。各種の統計数字や現地メーカーの経営動向を定点観測し、判断を積み重ねるしか手はなさそうだ」

 

中国の独立系IC調査会社によれば、中国の半導体生産シェアは9.%としている。ICインサイツの4%は少なすぎると批判的である。半導体産業は、産業構造高度化のカギを握っているだけに、中国はシェアについて神経資になっている。