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韓国では、株価やウォン相場が急落しているが、今年の貿易収支は14年ぶりの赤字予想が発表された。韓国貿易協会・国際貿易通商研究院によると、輸出は7039億ドル、輸入は7185億ドル。年間貿易収支は、147億ドルの赤字を記録するとの見通しだ。

 

過去2回の通貨危機は、貿易赤字発生と政権交代の直後に起こっていることもあり、「3回目の通貨危機が起こるのでないか」という恐怖感が出始めている。

 


『中央日報』(6月22日付)は、「経済危機の台風の中の韓国経済」と題するコラムを掲載した。筆者は、キム・ジョンシク/延世(ヨンセ)大学経済学部名誉教授、元韓国経済学会長である。

 

(1)「韓国経済は、1997年の通貨危機を体験し、2008年の金融危機当時も資本流出で通貨が急落するミニ通貨危機を経験した。最近、米連邦準備制度理事会(FRB)は5月のインフレ率が8.6%と高く持続したことから金利を繰り返し大幅に引き上げている。米国の利上げによる資本流出を防ぐために韓国銀行が金利を大幅に高める場合、家計負債不良だけでなく不動産バブル崩壊で金融市場と外国為替市場が不安定にならないか懸念される。過去の事例を見ても、米国が短期間に金利を3%ポイント以上高めた場合、韓国は例外なく危機を体験した

 

下線部分は、不気味な予告である。米国が政策金利を短期間に3%ポイント引上げると、必ず韓国は通貨危機が起こっている、と指摘する。米国の金利誘導目標は現在、1.75%である。前年同期比で1.50ポイントの上昇になっている。FRBは、7月に0.75%の利上げを予告。その後に0.50%を引上げれば、合計2.75ポイントの引上げだ。

 

FRBは、インフレ率を見てさらに引上げる意向を見せている。こうなると、不吉なことを書くようだが、韓国の通貨危機への条件が揃ってしまうであろう。

 


(2)「貿易収支悪化も問題だ。韓国経済が危機にさらされた背景は、米国の利上げにもあるが、貿易収支が悪化し信頼度下落で資本流出が加速しかねないためだ。原油を全量輸入している韓国経済は国際原油価格が高まる場合、構造的に貿易収支が悪化する。2008年もそうだったが、今回はウクライナ情勢で原油と原材料価格が急騰すると貿易収支は赤字に転落している、中国のコロナ禍で成長率が鈍化する場合、中国に対する輸出が減少することが予想される。
財政赤字に貿易赤字まで双子の赤字が続く場合、成長率は鈍化し信頼度はさらに下落すると懸念される」

 

韓国は、すでに中国への輸出が減っている。5月は対中貿易で赤字なった。この傾向が定着すると、韓国経済への信頼度が揺らぐことになろう。



(3)「韓国国内の政治環境もまた不安定だ。危機は政権交代期に発生することが多い。政権交代期には政策運用体制が十分に構築されておらず米国の利上げに効率的に対応しにくいためだ。1997年の通貨危機や2008年のミニ通貨危機は、いずれも政権交代期に発生した。1997年には金泳三(キム・ヨンサム)政権から金大中(キム・デジュン)政権に交代する時期で、2008年は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権から李明博(イ・ミョンバク)政権に政権が委譲される年だった。今回も文在寅(ムン・ジェイン)政権から尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に変わる時期に米国の利上げと韓国の貿易収支悪化という衝撃を迎えている」

 

過去二度の通貨危機は、政権交代期に起こっている。経済政策の対応が、上手く行かないという虚を突かれた形である。

 


(4)「韓国経済が、米国の利上げの衝撃に対応するためにはどんな戦略が必要だろうか。韓国は1997年の通貨危機の前まで、低金利・ウォン高政策の組み合わせで対応した。このような政策で、韓国は初期には輸入物価を低くして景気低迷も防げたが、輸出が減少して貿易収支がさらに悪化しウォンが急落して通貨危機の危険を招くことになった。
物価安定と景気浮揚、資本流出防止の「3匹のウサギ」は、すべて逃すことになった」

 

韓国銀行(中央銀行)は、政策金利を引き上げる方針で臨んでいる。すでに、米国の上限金利は、韓国の政策金利と肩を並べた1.75%である。ウォン安を食止めるためには、金利引上げしかないが、副作用で不動産バブルを引き起すリスクも高まる。

 


(5)「ウォン安を誘導する場合、初期には輸入物価が高くなるかもしれないが、輸出増大で貿易収支が改善される場合には国の信頼度が高まり、資本流出を防げて景気も浮揚できる。また、為替相場安定で輸入物価も引き下げられる。
したがって政策当局は米国の利上げ時期には輸出増大と貿易収支黒字転換に焦点を置いて金利政策と為替相場政策を運用しなくてはならない。政策当局は、日本と中国の「自国通貨安」という近隣窮乏化政策に積極的に対応し輸出競争力確保に努力しなくてはならない」

ウォン安は、輸出を誘導するとしているが危険な策である。すでに、ウォン安で輸出を増やせるか不明な輸出環境であるからだ。中国経済は、過去に経験したこともない苦境に陥っている。ゼロコロナと住宅不況のダブルパンチ下にある。

(6)「外国為替市場を安定させるために韓米通貨スワップが必要だ。政策当局は国際金融の人的ネットワークを稼動して昨年末に満了した韓米通貨スワップが再開されるよう米国との協力を強化し外貨供給の安全弁を用意する必要がある」

結局、FRBからのドル借入れ策に頼って資金繰りを付けるほかないようだ。日韓通貨スワップ協定と言いたいところだろうが、それは御法度である。