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中国は、国威発揚を誤解している。軍備拡大が、超大国への道と間違えている。国内の福祉医療の強化があってこそ、国威は発揚されるものである。その点で、中国の医療体制はお寒い限りである。

 

「ゼロコロナ」という世界で唯一残存するこの閉鎖システムは、中国の医療体制が不備であることの証明である。経済的にどれだけ損失を招いても、医療体制が不備である以上、住民を閉じ込めて移動させないことが、最善のコロナ沈静化への方法になっている。

 

ゼロコロナでは、社会的免疫度の上昇は望めない。免疫については、常に「真空状態」であるので、コロナの新種が現れるたびに「住民閉じ込め」(ロックダウン)が不可欠になる。こういう矛楯の繰り返しに対する、厳しい指摘の記事が登場した。

 


『日本経済新聞』(6月23日付)は、「大機小機」欄で「中国『ゼロコロナ』の袋小路」と題する記事を掲載した。

 

新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策が、中国経済にとって大きな重圧となっている。誰よりもその重荷に苦しんでいるはずの中国当局は、経済の犠牲を覚悟でなぜゼロコロナ政策に固執するのか。

 

(1)「その疑問に答える論文が5月10日、「ネイチャー・メディスン」電子版に公開された。それによると、ゼロコロナ政策を緩めると、中国では6カ月間でコロナ発症者は1億1220万人に達する。集中治療室の入院者が270万人に。死者は160万人にのぼるというのである。感染拡大から2年あまりで米国のコロナによる死者は100万人強。それと比べても6カ月で160万人という中国の死者予測の規模は大きいが、同時に深刻な医療崩壊に陥るのはいうまでもない」

 

中国はゼロコロナ政策を緩めると、下線部のような犠牲者が出るという。半年間で160万人とは驚くべく試算である。年間では300万人を上回る死者が出れば、共産党政権には大打撃になる。共産党の正統性など吹き飛ぶ。こういう波及現象を考えれば、「ゼロコロナ政策」が、習近平氏の国家主席3選にとって絶対に欠かせないことが分ってくる。

 

(2)「『中国におけるオミクロン型の伝播モデル』と題したこの論文は、米インディアナ大学、米国立衛生研究所(NIH)と中国・復旦大学の専門家の共同研究の成果である。想定したのは最初に20人がコロナに感染する一方、コロナワクチンを1日当たり500万回追加接種するケースだ。それでも感染爆発を防げないのは、接種するのが中国製の不活化ワクチンとの前提での試算だからだ。不活化ワクチンの有効性の低さを、中国側も承知しているのである。感染爆発を防ぐには、高齢者のワクチン接種率を97%まで高め、発症者の50%を抗ウイルス剤で治療できる体制を用意する必要がある。そうした準備ができなければ、現在のゼロコロナ政策を継続するほかない。これが結論だ」

 

中国製不活化ワクチンは、製造過程で化学薬品が使われているという。この結果、70種以上の副作用が起きている。中でも警戒すべきは、白血病の発症である。1000人以上の死者が出ていると指摘されている。政府は、ワクチン保険を付けて不安解消に努めているが、命が戻ってくる訳でない。国民は、「危ないワクチン」を敬遠するほかないのだ。

 

(3)「上海市などで実施された都市封鎖は、今後も折に触れて繰り返されざるを得まい。中国からのインバウンド観光の本格再開は、有効性の高いワクチンの開発までは、期待すべくもない」

 

新型コロナウイルスは絶滅しないで、地球上で生き続けると指摘されている。となると、中国で強力なワクチンが製造できるまで、ゼロコロナ政策は続けるほかない。欧米の「mRNA」ワクチンを導入すれば解決するが、「国威」というメンツのためにそれもできない。共産党政権が生き残るためには、ゼロコロナ政策が不可欠になっている。