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日韓関係の漂流は、いったんこじれた外交関係の回復がいかに難しいかを示す典型例である。韓国で、日韓関係をぶち壊したのは進歩派の文政権である。すでに、保守派の尹政権に代わったと言っても、懸案事項が解決しない限り話合いのテーブルには着けないのだ。

 

NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が、今月29~30日にスペインで開催される。日本、韓国、豪州、NZ(ニュージーランド)首脳も招待されている。韓国は、この機会を利用して日韓首脳会談を実現させたい意向だ。韓国側の報道によれば、日韓首脳が顔合わせする機会は3回あるという。そのうちの1回でも利用して会談したいとしている。

 

日本側の報道では、「立ち話程度」という懇談形式を韓国側に伝えている。正式の両国の国旗を立てた「会談」ではない。

 

『中央日報』(6月23日付)は、「NATO会議で3回会う韓日首脳、関係改善の契機に」と題する社説を掲載した。

 

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が29~30日にスペイン・マドリードで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に韓国大統領として初めて出席する。尹大統領のNATO首脳会議出席は就任後初の海外訪問、初めての多国間首脳外交という点を越えて、国際秩序の激変期に韓国の外交地平を大きく拡大するという点で意味が大きい。

 

(1)「金聖翰(キム・ソンハン)国家安保室長は、昨日のブリーフィングで「NATO同盟30カ国は自由民主主義・法治・人権など普遍的価値と規範を共有する伝統友好国で、彼らと価値連帯を強化していきたい」とした。「北核問題に対する韓国の立場を説明して参加国の支持を確保する」とし、特に「予測不可能な国際情勢の中におけるNATO同盟との包括的安保基盤構築」という意味を強調した」

 

下線部が、韓国の本音であろう。予測不可能な国際情勢の変化に対応するには、安全保障の網(同盟)を広く張っておくことである。韓国が、このことに気付いたのだ。文政権であれば、参加しないだろう。

 


(2)「ロシアのウクライナ侵攻以降、国際社会が民主自由陣営と中国・ロシアなど権威主義国家間の対立構図に固定化している現実で韓半島(朝鮮半島)安保のための選択という意味に聞こえる。韓国政府はこの際、NATO本部があるベルギー・ブリュッセルに在NATO代表部も新設すると話した。外交地平拡張の物的基盤を用意する時期適切な措置だ」

 

韓国も、NATO代表部も新設することになった。日本は、安倍政権時代にNATO代表部を設置した。

 

(3)「尹大統領のNATO首脳会議出席は、韓国がこれまで米・中の間で取ってきた「戦略的曖昧性」から抜け出す歩みと見ることができる。それでも、反中国基調ではないことは明確にしなければならない。安保室関係者も「招待を受けただけで(NATOの)集団防衛実践とは関係がない」「(ウクライナ戦争は)平和と自由に対する脅威だが、協力して対処することが反中というのは論理の飛躍」と説明した。その通りだ。命を捧げて自由を守ったおかげで今日の大韓民国がある。グローバル中枢国家として、その役割を堂々と果たす時が来た。ただし慎重に、精巧に取り組んでいかなければなければならない」

 

韓国は、相変わらず中国の鼻息を覗っている。これで、独立国家と言えるだろうかという気配りである。精神的に、中国から独立していない証拠である。かつての宗主国を恐れているのだ。

 


(4)「NATO会議で韓日首脳会談は、今のところ日程が決まっていないという。その代わり韓日米首脳会談と韓国・日本・オーストラリア・ニュージーランド4カ国首脳会談などで尹錫悦大統領と岸田文雄首相が3回顔を合わせる機会がある。韓国と日本の官民で両国関係を復元しなければならないだけに、これを機に関係復元の出口を開くことができればと願うばかりだ。日韓議員連盟の武田良太幹事長は一昨日の中央日報とのインタビューで韓国大法院(最高裁)の徴用者賠償判決などに関連し、韓国が解決アイディアを出して日本がこれを受けてボールを投げ、韓国がボールを投げ返すといういわゆる「キャッチボール」論を提起した」

 

韓国はなぜ、これほど日韓関係復元に執心しているのか。経済情勢の悪化が最大の理由であろう。文氏は日本へ悪態をついたが、最後に頼りにしなければならないのは日本である。悪口雑言を吐いた側は忘れていても、言われた側は覚えているもの。外交的にも、感情にまかせた言動をしてならないのだ。韓国に、これをしっかりと記憶させなければならない。

 


(5)「韓国と日本の官民で両国関係を復元しなければならないという雰囲気は熟した。ちょうどコロナ事態で閉じられた金浦(キンポ)-羽田の「空の道」も2年3カ月ぶりに開かれるという便りも入ってきた。2002年ワールドカップ(W杯)共同開催をベースに開かれた韓日人的交流の象徴的な路線だ。韓日懸案を議論する機構も検討中だという。透明に、そして落ち着いて世論を集めていきながら関係改善の突破口を探すことを希望する」

 

民間の交流が、日韓関係改善の第一歩である。韓国は、二度と再び「感情外交」と「反日運動」をしないと心で決められるだろうか。それが、日本側へ伝わるまで時間もかかるだろう。