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ウクライナは、年1回開催されるG7首脳会議と、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議に合わせて、自国への支援を求めて積極的な動きをしている。G7では、ロシアとの貿易から得る関税収入をウクライナ支援に充当する方針を盛り込んだ。また、NATOが2030年を目標とする文書の「戦略概念」では、欧州安保の基盤がウクライナにあることを明記するように働きかけている。これによって、NATO非加盟のウクライナの安全保障への間接的寄与を求めているものだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(6月27日付)は、「米欧、ウクライナ支援強化 ロシア関税収入を充当」と題する記事を掲載した。

 

主要7カ国首脳会議(G7サミット)は26~27日にかけてウクライナ情勢を議論し、追加軍事支援や復興に向けた財政支援の強化で一致した。東部ルガンスク州の制圧が迫るなか、ウクライナ側に必要な支援を提供できるかどうかが戦況を左右する。

 


(1)「G7は27日、ウクライナ支援に関する声明を発表し、ロシアとの貿易から得る関税収入をウクライナ支援に充当する方針を盛り込んだ。日米などは貿易上の優遇措置を保証する「最恵国待遇」の対象からロシアを外しており、これで引き上げた関税を有効活用する。軍事支援では米政府がサミット直前の23日、高機動ロケット砲システム「ハイマース」4基を含む4億5000万ドル(約600億円)相当の武器の追加供与を承認した。侵攻開始以来、米国のウクライナ向け武器支援は総額61億ドルにのぼる。英国とドイツも多連装ロケット発射システム(MLRS)の供与を決め、支援兵器は大型化している」

 

G7各国は、対ロシア貿易の関税収入をウクライナ支援に充当することを決めた。これにより、一定の資金がウクライナ側で確保できる。米国は、支援兵器の大型化に乗出している。

 


(2)「ウクライナ政府は兵器支援拡大を求めるが、足元で到着したのは要請の1割程度だと訴える。G7は29~30日にある北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の議論も踏まえ追加軍事支援を急ぐ。ゼレンスキー大統領は侵攻による打撃で毎月50億ドルの財政支援が必要だと訴える。破壊されたインフラの被害額は1000億ドルに達するとの試算もある。G7は通常の財政支出だけでなく、様々な手段でウクライナへの資金支援を検討する。対ロシア貿易の関税収入の活用はその一つだ」

 

ウクライナが受けたインフラ被害は、すでに1000億ドルに達している。このほか、ウクライナは毎月50億ドルの財政支出が必要としている。この資金調達の一環として、ウクライナは人口流出と工場の操業ストップで電力供給が過剰になっているので、欧州へ販売する件も検討されている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月27日付)によれば、年間16億ドル程度の利益が得られるという。それでも、約10日分の財政支出を賄えるだけだ。

 

(3)「米国や欧州連合(EU)では、制裁で凍結したロシア政府やオリガルヒ(新興財閥)の資産を、ウクライナ復興に充当する案が浮上する。ただ国際法に合致した枠組み作りのハードルは高い。今回のG7サミットでも「打開策は簡単には見つからない」(EU関係者)との見方が強い。英王立防衛安全保障研究所のマリア・ニツェーロ氏は、「私たちは法の支配の原則に沿って凍結資産の没収や支援への充当を考える必要がある。特に(各国中銀にある)ロシアの外貨準備を没収するのは難しい」と指摘する」

 

ウクライナ復興でロシアの凍結資産を流用する問題は、法的にもかなり難しい面がある。とりわけ、ロシアの外貨準備を没収することは困難であるとしている。

 


英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月25日付)は、「NATO戦略概念で『ウクライナ評価を』同国高官」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に対し、同国が欧州の安全保障で中心的な役割を果たしていると29~30日にマドリードで開かれるNATO首脳会議で評価するよう求めている。取材に応じたウクライナ政府高官が明らかにした。NATOは首脳会議で、戦略概念の改定を議論する。

 

(4)「ウクライナのジョウクヴァ大統領府副長官兼大統領顧問(外交担当)は、ウクライナが侵攻してきたロシアと戦っている事実を考慮し、NATOの戦略目標の文書「戦略概念」にウクライナが欧州安保の「基盤」だと明記すべきだという考えを示した。ジョウクヴァ氏は、ウクライナは戦略概念を改定する議論に直接参加するわけではないが、NATOに加盟する各国に同国の提案を伝えている」

 

ウクライナは、自国の運命をNATOに託している以上、ウクライナの立場をNATOの「戦略概念」に明記してくれるように求めている。大国ロシアを前に、ウクライナが国家主権を守るべく必死である。

 


(5)「ジョウクヴァ氏は、「NATO各国が欧州やウクライナの現状を明記しなければ、この文書の内容は実態からかけ離れてしまう」と主張した。現行の戦略概念は2010年に改定された。欧州の安保体制の整備に向けた多くの目標の一つとして、ウクライナとの協力態勢を強化していくと明記した。背景にあるのは08年にルーマニアの首都ブカレストで開いたNATO首脳会議がウクライナの加盟を歓迎すると判断した事実だ。ウクライナは近い将来のNATO加盟が現実的でないと認識しているが、NATOにウクライナとの協力姿勢を再確認するよう要求している」

 

現行の「戦略概念」では、ウクライナとの協力態勢を強化すると明記していた。次の「戦略概念」でも、引き続きウクライナとの関係強化を訴えているもの。このウクライナの要請によって、国運の保護をNATOに要請せざるを得ない土壇場の苦衷が伝わる。

 

(6)「ジョウクヴァ氏は、NATOが改定する戦略概念で、ロシアを「パートナー」と言及している部分をすべて削除するようにも求めている。現行の戦略概念で、NATOはロシアとの「真の戦略的パートナーシップ」を目指し、NATOとロシアの協調は戦略上重要だと指摘している。ジョウクヴァ氏は「(新たな)戦略概念では侵略者ロシアへの警告をもっと強めてほしい。加盟国はひるむことなく、ロシアに対抗する規定をまとめてほしい」と注文をつけた」

 

このパラグラフから言えば、NATOはロシアを敵対視せずに話し相手として位置づけていたことが分る。NATOは、ロシアを刺激しない文言であったのだ。それにも関わらず、ロシアは敢えて曲解した形で、ウクライナ侵攻に走ったことが浮き彫りになっている。それだけに、裏切られた形のウクライナは、ロシアへ厳しい言葉で対抗するように求めているのだろう。