a0960_008417_m
   

中国政府は、大学でマルクス主義を専攻した学生の就職を後押している。企業側も、政府の要望に応えれば後々、便宜を受けられると期待し、採用しているという。一般学生には、超狭き門の就職地獄だが、マルクス・ボーイには「マルクス様々」という御利益を受けられるご時世だ。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月29日付)は、「中国でマルクス主義専攻の大卒者に求人殺到」と題する記事を掲載した。

 

中国の労働市場が近年で最悪の状況にあるなか、同国の大卒者は就職先を見つけるのに苦労している。しかし、マルクス主義の学位を持っていれば話は別だ。

 


(1)「マルクス主義は、中国の支配的な思想であるにもかかわらず、過去何十年もの間、学生にはなじみが薄い専攻科目だった。しかし、習近平国家主席の下で復活を遂げつつある。今年、異例の3期目を目指す習氏は、中国共産党の幹部に「初心を忘れずに」と説いている。大卒者向け就職情報サイト「応届生」によると、今年は採用のピークである46月にマルクス主義の学位を条件にする求人が前年同期に比べて20%増加した。マルクス主義の専門家は、政府省庁から民間複合企業まで、様々な雇用主から引く手あまただ」

 

中国は、マルクスの世界だ。150年も昔の学説にしがみつく。何とも不思議な感覚で政権運営している。凡そ、イノベーションと無縁のこの経済理論で、14億人の国民を食わせるというのだ。マルクスの伝道師は、マルクス専攻学生である。去年に比べて、求人は20%も増えている。引く手あまたという。

 


(2)「アナリストらは、マルクス主義を学んだ大学卒業生に対する人気は習氏が進める思想教育の強化が影響していると説明する。中国は米国への対抗意識を強めており、ロシアのウクライナ侵攻から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応まで、米中両国は全く異なるアプローチをとっている。米ニューヨーク市立大学の夏明教授(政治学)は「マルクス主義専攻の目的は、国民全体を洗脳する思想警察を養成することだ」と指摘する」

 

マルクス主義専攻生への求人増加は、習氏が進める思想教育の強化が影響しているという。身近に、「マルクスの先生」がいれば、マルクス主義の浸透に役立つという狙いからだ。

 


(3)「河南省にある大学でマルクス主義を学ぶ3年間の修士課程のカリキュラムには「思想教育の原理と方法」 という単位が含まれるほか、学生たちは習氏の教育に関する演説について18時間学習する。習氏が2012年後半に政権を取るまでの30年間は1978年に鄧小平氏が打ち出した改革開放の時代で、思想として正しいかどうかよりも経済的な繁栄が重視され、マルクス主義の学科は苦戦を強いられた。しかし、習氏は「共同富裕(ともに豊かになる)」を重視する方針を打ち出して民間複合企業への規制を強化し、世界で最も不平等な社会の一つである中国において貧富の差を縮小し、思想をより厳しく取り締まる「新しい時代」を統治したい考えを表明している」

 

「共同富裕」は、税制改革で実現できる。習氏は、それを避けてマルクス主義で押し通す計画である。これは、マルクスにとってはなはだ迷惑な話だ。マルクスは平等を説いている。それならば、富める者が税金を多く負担するのが筋である。習氏は、共産党員の負担を避けて、大衆に負担させようというマルクスの教えと逆のことを始めている。

 


(4)「習政権は、国家資本主義体制下での労働者虐待についてマルクス主義による分析を使って厳しく批判する若者らを弾圧している。一方で、中国の共産主義体制がなぜ欧米より優れているかを一般国民に教育する上で重要な役割を担っている教師らを積極的に求めている。共産党が国家主席の任期を2期までとした制約を撤廃した18年、中国の教育省は各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求める通達を出した。それを受けてまもなく、マルクス主義教員の獲得競争が起こった。大学の「思想と政治」担当教員の数はその後の4年間で3分の2増えた」

 

習氏の狙うマルクス主義は、空理空論の世界を目指す手段である。習氏の「終身皇帝」への布石でもある。誰も、習氏の国家主席3選に反対できないように細工を施す。それが、マルクス主義の布教であるのだ。各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求めている。中国は、これでますます西側世界と断絶しようとしている。

 


(5)「マルクス主義の学位は不況に強いようだ。若者の失業率は現在18.4%と歴史的な高水準にあり、他の学科を専攻した大卒者の就職は厳しくなっている。しかし、「応届生」のサイトでマルクス主義の教師の募集要項をみると、給与や手当が従来人気のあった経営学などの専攻に追いついてきている。陝西省では都市労働者の平均年収は5万2000元(約106万円)だ。同省にある西安科技大学では、マルクス主義の博士号習得者には20万元の年俸に加えて2万元の契約金と無料の住居を提供している。「マルクス主義を専攻した学生にとって、今がゴールデンタイムだ 」と同大学のある関係者は語った」

 

マルクス主義専攻生は、給与も桁違いに良くなる。まさにマルクス主義の伝道師の役割を担うのだ。

 

(6)「中国の電子商取引(EC)最大手アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏や不動産大手中国恒大集団の創業者である許家印氏などテクノロジーや不動産の起業家に対する締め付けを受け、民間企業もマルクス主義を専攻した大卒者を採用し、共産党への忠誠をアピールしようとしている。上海に近い浙江省寧波で工作機械工場を経営するデビッド・トン氏は「党の考えを代弁する人が我が社で働いてくれるのはありがたい。政府からの信頼が高まるからだ」と語った」

 

時代遅れのマルクス主義を広めて、一党独裁を確固たる制度へ育てる積もりだ。いずれ、中国経済破綻の際に、マルクス主義がヤリ玉に上げられる。それまでは、我が世の春を謳歌するのだろう。