ムシトリナデシコ
   

中国は、巧妙な形でウクライナの肥沃な農地を借入れた。中国共産党傘下の「新疆生産建設兵団(XPCC)」が2013年、ウクライナで肥沃な全農地の9%を50年リース契約で入手していたのだ。この裏では、中国の「核の傘」をウクライナへ提供するとの合意書を両国の間で締結していた。

 

中国は、習近平氏が国家主席に就任後にウクライナへ接近した。13年には、ウクライナとの間で次のような合意文書を交わしている。「中国は無条件で、ウクライナに対して核を使わない、使用する構えをみせて脅さない、かつウクライナが核兵器を用いた侵攻、またはそのような侵攻の脅威にさらされて苦しんでいるという条件下では、相応の安全保障を提供することを約束する」と記されている。ウクライナ側の署名者は、ロシアが後ろ盾となっていたビクトル・ヤヌコビッチ元大統領だ。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月12日付)が報じた。

 


中国外務省のウェブサイトでは、
中国が「他国の領土に核兵器を配備することも、他国に核の傘を提供することもしていない」と明記されている。この数十年も変わらない中国外交の姿勢から見ると、前記のようにウクライナと交わした合意文書は成り立たないはずだ。ウクライナの農地を手に入れるために、中国は「ウソも方便」でウクライナを丸め込んだとしか考えられない。手段を選ばない中国外交の一端が明らかになっている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月1日付)は、「ウクライナの広大な農地、中国の手に」と題する寄稿を掲載した。筆者は、米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の研究員、エリザベス・ブラウ氏である。

 

数年前、中国はウクライナで耕作可能な農地の10分の1近くを購入した。各国は自国の農地を購入しようとする相手をふるいにかけ始めるべきである。機密技術を手に入れようとする相手に対して既に行っているのと同様に、だ。

 


(1)「
中国勢はここ数年、米国、フランス、ベトナムなどで農地を購入している。2013年には、香港の食品大手WHグループが、米豚肉生産最大手スミスフィールドを買収したほか、ミズーリ州で14万6000エーカー(5万9000ヘクタール)を超える農地を購入した。同年、中国共産党傘下の「新疆生産建設兵団(XPCC)」は、ウクライナで非常に肥沃(ひよく)な農地の9%を50年のリース契約で入手した。この農地は国土面積の5%に相当する(米政府は2020年、人権侵害をめぐりXPCCに制裁を科した)。中国は2011年から2020年までの期間、世界で700万ヘクタール近い農地を購入した。これに対し、英企業による購入は200万ヘクタール足らずで、日米企業では100万ヘクタールにも満たない」

 

ウクライナは、下線部のような重要な契約を中国企業と結んでいる。ウクライナは、国土面積の5%にもなる広大な農地を50年リース契約で貸出したもの。「核の傘」をちらつかせて、中国にとって好条件のリース契約を結んだであろう。

 

(2)「長年アフリカを研究しているアナリストで、トランプ前政権でアフリカ大湖沼地域担当特使を務めていたJ・ピーター・ファム氏は、「最も重要なことは、中国がその土地で何をするかだ」と話す。コンゴ民主共和国では、中国が「パーム油の生産のため、10万ヘクタールの土地を取得する許可を前政権から得た」という。この土地の開墾は有害な森林破をもたらす。「さらにジンバブエでは、自国(中国)に輸出するための牛肉を生産している。それは基本的な食料が足りずに飢えに苦しんでいる国においては、農地の利用法として持続可能でも、賢明でもない」と指摘」

 

中国は、ウクライナの肥沃な農地を傷めることなく耕作しているのか。あるいは、土壌を荒らす収奪農業か、詳細は不明である。他国の例では、間違った農地の利用例が出ている。ウクライナでも検証する必要がある。

 


(3)「ウクライナが直面している苦境は、自国領土のかなりの部分について他国の支配を許すことの危険性を際立たせている。ウクライナ政府は、ロシアを支持する国がウクライナの土地を支配することに懸念を抱いているかもしれない。ウクライナはまた、中国がウクライナ国内の土地の(利用)権利を突然売却し、ウクライナ経済への打撃を深刻化させることも懸念すべきだ」

 

ウクライナ政府は、自国を侵略しているロシアを支持する中国へ、全国土面積の5%もリース契約で貸出している。これは、感情的にも複雑なものがあろう。

 


(4)「ダン・ニューハウス下院議員(共和、ワシントン州)が提出し、下院歳出委員会で審議中の法案は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮企業による米国の農地取得を禁止する内容だ。これに先立ち、2020年には共和党のジム・インホフ、トム・ティリス両上院議員が、外国勢による農地取得について精査を義務付ける法案を提出していた。こうした規制措置は、中国や他の戦略的ライバル国が既に取得している土地を米国が買い戻す取り組みと一体化させる必要がある。敵対勢力に農地取得を許すことのリスクは、大きくなり過ぎている」

 

米国では、敵対国家による土地取得を禁じる法案が議会へ提出される気配である。ウクライナも信頼に足る行動をしない中国の契約を見直して圧力をかけるべきだろう。