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中国は、「一帯一路」の名の下に、発展途上国を債務で身動きできない状態へ追い込んでいる。これら諸国の経済再建には無関心である。アフリカを搾取対象にしていることは明らかだ。

 

中国が関わるアフリカを中心とする低所得国の約60%は、債務返済負担が過去20年間で最も重くなっており、債務超過またはそのリスクが高い状態だ。中国税関のデータによれば、アフリカ諸国のうち4分の3以上では、中国との貿易収支が赤字である。この状態を改善するには、中国がアフリカ特産物である果物輸入を増やせば改善方向を掴めるはずだ。中国はその具体策を講じず、アフリカ諸国を「債務奴隷」に落とし込む計画かも知れない。

 

習近平氏は68日、アフリカ6カ国の若い政治家宛てに書簡を公開した。同氏は書簡の中で、「中国とアフリカの友好関係をさらに深め、中国・アフリカの運命共同体を築いていこう」と呼びかけた。アフリカを債務漬けにしながら「宗主国」としての地位を固める戦略であろう。

 


『ロイター』(7月2日付)は、「アフリカ産農産物、中国輸出に『事後の要求』の壁」と題する記事を掲載した。

 

ロイターは、アフリカ諸国の当局者や事業者約10人に取材をした。彼らは、中国側の煩雑な官僚主義と、包括的な貿易協定の締結に消極的な姿勢が、アフリカからの輸入促進という中国政府の計画の足を引っ張っていると語る。とはいえ、農産物輸出の拡大は、アフリカ諸国が中国との貿易収支を改善し、膨大な債務の返済に必要な外貨を得るうえで、数少ない選択肢の1つとなっている。債務のかなりの部分は中国政府に対するものだ。

 

(1)「ケニアの場合、中国との貿易収支は年間約65億ドルの赤字で、対中債務はおよそ80億ドルだ。今年は債務の利払いだけでも6億3100万ドル近くが必要だが、この金額は2021年の対中輸出額のほぼ3倍に相当する。アフリカ諸国の多くは、中国からの借入をこれ以上増やすのは論外であり、対中輸出を増やさなければならないと話している。中国側も貿易不均衡に対応する、少なくともさらに悪化させることを防ぐ必要を認識しており、昨年11月に戦略転換を発表した」

 

アフリカは、貿易赤字でこれ以上の中国製品を輸入できない事態である。輸出を増やさなければならないが、中国は口先だけで具体策を講じないのだ。悪質の一言である。

 


(2)「これまで中国とアフリカ諸国との首脳会議は、驚くほど巨額の借款を中国が発表する場として利用されてきた。中国が世界最大の食糧輸入国である一方、アフリカ諸国において農業部門は就労者数でもGDPへの貢献度でも首位だからだ。さらに、世界全体では未開発の耕作適地の60%がアフリカに存在し、非常に大きな成長可能性を秘めていることになる。中国商務省系のシンクタンクである中国国際貿易経済協力研究院の梅新育氏は、「中国、アフリカ双方にとって、ウィン・ウィンの選択だ」と語る」

 

本来ならば、中国とアフリカの貿易関係はウィン・ウィンになる筈だった。それが実現しないのは、中国に熱意がないからだ。アフリカ諸国を食い物にしている結果だろう。

 

(3)「中国は2021年、1480億ドル相当の製品をアフリカ諸国へ輸出した。これに対し、中国がアフリカ諸国から輸入したのは1060億ドルにとどまった。そのうち750億ドルは、5つの資源大国(アンゴラ、コンゴ共和国、コンゴ(旧ザイール)、南アフリカ、ザンビア)で占められている」

 

中国は、アフリカから鉱物資源を輸入しており、果物など農産物に魅力を感じていないことは明らか。それが、輸入障壁を作っている理由である。

 


(4)「ナイジェリアの人口はアフリカ最大で、中国製品の輸入額もトップだ。2021年には230億ドル相当を輸入した。ナイジェリアからの対中輸出額の8倍にも達した。不均衡がさらに顕著なのがウガンダだ。輸出品の約80%はコーヒー、茶、綿花といった農産物で、昨年の対中輸出額は4400万ドルだが、逆に輸入額は10億ドルを超えた。中国税関当局のデータによれば、アフリカ諸国のうち4分の3以上では中国との貿易収支が赤字となっている

 

ナイジェリア人口(2億648万人:2020年)は多いだけに、中国からの輸入は230億ドル。対中輸出はその8分の1。ウガンダは、輸入が輸出の10倍である。下線のようにアフリカは中国の貿易黒字の稼ぎ場所になっている。

 

(5)「アフリカを中心とする低所得国の約60%では、債務返済負担が過去20年間で最も重くなっており、債務超過またはそのリスクが高い状態にある。アフリカ系の開発コンサルタント企業ディベロップメント・リイマジンドの創業者ハンナ・ライダー氏は、「アフリカ諸国には、これ以上の借入ができないという重圧がかかっている」と話す。「(中国は)貿易分野で何かできないかと考えている」

 

アフリカには、これ以上の借入れ能力がないという。債権者は中国であるだけに、輸入を増やす方法を講じなければという限界点にきている。後述のように、その輸入対策が生温く、誠意を感じないのだ。

 


(6)「アデレード大学国際貿易研究所のローレン・ジョンストン客員上席講師は、理屈の上では、中国における食糧需要の増大はアフリカにとって、農産物輸出を活用して外貨を獲得する大きな機会になっていると指摘する。「債務問題を背景に、農産物輸出が注目を浴びるようになった」とジョンストン氏は言う。ケニアはアボカドの生産量がアフリカ首位で、昨年は欧州向けを中心に1億5400万ドル相当を輸出した。ケニア植物衛生検査局(ケフィス)のエリック・ウェーレ氏は、今年は10社のアボカド生産者が複雑な手続きを経て対中輸出に向けた検査に合格したと語る。欧州連合は出荷の際の検査しか要求しない」

 

中国は、アボカド輸入で複雑な手続きを要求している。ヨーロッパは簡単な手続きで済むのと対照的である。中国は、意図的に貿易黒字を増やして経常収支対策に使っているのだ。アフリカを踏台にしていることは確実である。